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春合宿 2018(Forum 154) 報告
古川勝三と行く台湾の歴史探訪の旅


2018年5月24日(木)-5月27日(日)
参加者:(会員)浅井 香葉,石井 健児,岩崎 雅昭,大澤 勲,大島 正
                  岡田 敏明,柄澤 由子,木次谷 光晴,佐々 正光,三田 薫
                  平 和昭,平 真寿美,中尾 政之,平松 雅伸
           (一般)11名(計25名)

「台湾を愛した日本人 土木技師八田與一の生涯」の著者古川勝三と行く
台湾歴史探訪の旅(失敗学会2018 年度春期研修)に参加して
文:大島 正(技術士 機械部門)、平松雅伸
写真:大島 正、岡田敏明
  1. 概要
    失敗学会の2018 年春期研修で、古川勝三氏に案内されて、土木技師 八田 與一氏を主とする台湾の 近代化に戦前貢献した日本人の思想と功績の数々を台湾現地で、直に見聞した要点を記した。

  2. 印象(要点)
    我が国のすぐれた先人達が、台湾の近代化のために、どのような思想でどのように貢献をしたかを 現地で直に触れることができた。社会に貢献する精神を考え直す機会となり、大変有意義であった。

  3. 日程&訪問場所
    5/24(木):(離日)台北市内
                  国立台湾博物館(旧児玉&後藤記念博物館)。
                  龍山寺(台湾最古の寺院)。
                  士林夜市(台湾最大の夜市)。
    5/25(金):嘉義(北回帰線が通っている都市)
                  嘉義農林野球部(KANO 野球部)。
                  珊瑚譚(貯水量1.5 億トン)
                  烏山頭ダム・八田記念館・八田公園・八田路。
                  台南 赤嵌楼(旧プロビデンジャ城跡)
    5/26(土):台北-基隆(台北の北側、海の玄関口)。
                  九份(旧金鉱のレトロな街)
    5/27(日):台北-二二八紀念館(2.28 事件)。
                  国立台湾大学(旧台北帝国大学)。
                  (帰国)

  4. 歴史から学ぶこと
    1. 八田與一の功績(要点)
      1. 新しい工法で、大規模な水利事業を10 年かけて完成し、嘉南平野を台湾最大の穀倉地帯にした。独創性、広い視野と洞察力、そして実行力には、先ず驚嘆し、敬意を抱くと共に、大いに学ぶべき点があると思った。 (詳細は、資料1の3.八田與一の台湾水利事業の要点)

        八田與一の銅像と同夫婦の墓
        (烏山頭ダムを見下ろす八田與一記念公園)

      2. 大型土木機械の導入と活用
        労働力の余っている時代・環境では、常識を越えた発想で、4 種の大型機械を生産性向上と成 果を考えて、思い切って導入した(堰堤工事と烏山頭隧道工事費の25%にあたる)。
        • (ポイント)工事の生産性を上げ、他のインフラ整備工事(基隆港と台湾の開発)へ活用できた。

      古川氏と八田夫婦墓


      八田夫人 像

      1. 烏山頭職員宿舎の建設:「良い仕事は安心して働ける環境から生まれる」信念で、200 戸の住宅 に、病院、学校、大浴場と共に、娯楽設備、弓道場、テニスコートを作り、毎月“祭り”のイベントを催し自ら率先して、一緒に楽しんだ。
        • 人を活かす働かせ方をした。
      2. 三年輪作給水法
        水が行き渡る全ての土地を50 町歩毎に区画割して、水稲、甘蔗、雑穀と三年輪作で、水稲は給水、甘蔗は種植期だけ給水、雑穀は給水無しで、一年毎に順次栽培する方法を考え実践させた。
        • (土木工事に加えて)具体的に、農民に水利の恩恵を公平に与え、かつ恒久的に、農地を活用 する方法を考え、実践させた。(水利事業が具体的に社会に役立つまで考えて実践した)

        八田與一像と古川氏を囲んで


        珊瑚譚

      平松感想 農業振興
      ハードとソフトがうまく合致し、収量と富をもたらしたのかと。
      1. ハード面 大灌漑設備(烏山頭ダム~水路)の八田與一さん
      2. ソフト面 稲等の栽培技術(蓬莱米、3部作)の末永仁さん、磯永吉さん (サトウキビがマンゴウに変遷している経緯と日本統治との関係が、6月8日の黄文雄さんのコラムにありました。)
        http://www.mag2.com/p/news/361393
      3. 現在に至るまで、八田與一さんの顕彰が続けられていること、『飲水思源』感銘です。
      (特別に見せていただいた銅像の母型、FRP製で、FRP用の樹脂が現役時の主業務の一つだったこともあり、懐かしく眺めました。)

    2. 今回の旅で、歴史から学ぶこと
      日本人が従来持っていた良き思想・文化に触れ、台湾の近代化に尽くした功績と歴史を通じて、敬意 を抱くと共に、日本に誇りを持ち、社会に貢献する精神を見直す機会になった。また、日本に対す る恩義を忘れない台湾の国民性を知り、台湾が“親日”である理由をよく理解出来た。


      満々と水を蓄える烏山頭ダム湖面


2018 年5 月台湾研修旅行 資料1
  1. 台湾の近代(約400 年)の歴史
    原住民・漢族・大和民族共存時代
    オランダ統治時代(37年間)
    鄭成功統治時代(33年間)
    清朝統治時代(212年間)
    日本統治時代(50 年間:1895~1945)
    蒋一族統治時代
    李登輝総統による民主政権 蔡焜燦総裁

  2. 台湾の近代化に貢献して尊敬されている日本人
    後藤新平(台湾近代化の父)

    児玉 源太郎 像
    台湾総督時代(1898-1906年)に後藤新平を台湾総督府民政局長に任命、統治を委任。


    後藤 新平像
    新渡戸稲造(台湾製糖の父)
    浜野弥四郎(台南水道の父)

    浜野弥四郎像と古川氏
    八田與一(嘉南大圳(かなんたいしゅう)の水利の父)
    磯 永吉(蓬莱米の父)
    末永 仁(蓬莱米の母)

    磯 永吉像


    末永 仁像
    近藤兵太郎(台湾野球の礎を築いた名将)

    近藤兵太郎&KANO打者 像

    羽鳥又男(台南市の恩人)

    羽鳥又男 像

    以上が今回の旅で見聞した人々。他に、
    鳥井信平(台湾地下ダムの父)
    新井耕吉郎(台湾紅茶の父)
    松木幹一郎(台湾電力の父)
    長谷川謹介(台湾鉄道の父)
    西郷菊次郎(西郷堤防の構築)

  3. 八田與一の台湾水利事業の注目すべき要点
    嘉南大圳(かなんたいしゅう)の灌漑面積:15 万ヘクタール(香川県とほぼ同じ面積)
    烏山頭ダム(1936 年まで世界一の規模)-貯水量(1 億5 千万トン:東京ドーム121 杯分)、堰堤長1,273m・同高さ56m/底部幅303m/頂部幅9m
    給排水路:16,000km
    工事費:4,200 万円(現在の約5,000 億円)
    • 徹底的な机上調査&米国視察・検討の後、新しい工法(セミハイドロリックフィル工法)を採用した。
    • 将来(発展性・メンテナンス等)を見据えていた。

  4. 台湾と日本精神(リップンチェンシン)
    • 新渡戸稲造の説いた「武士道」:義・勇・仁・礼・忠を説き、「日本の魂」を英文で訴求(李登輝氏)(米国ルーズベルト大統領が感激し、数百冊を世界の要人に配布した)
    • 李登輝「最高指導者の条件」
      李氏は日本で学び、日本陸軍に志願。古き良き日本の思想的な影響を受けている。但し、中国から見れば李氏は三重の意味で危険人物、
      民主的に選挙で選ばれた。
      台湾の独立志向(中国内の独立志向民族への影響)
      日本の台湾統治を高く評価。靖国神社問題に理解。(最近は「尖閣は日本のモノ」と公言)
    • 台湾と日本精神(リップンチェンシン)(蔡焜燦(さいこんさん)氏の言葉)
      台湾には、日本が今学ぶべき正しい日本がある。台湾で正しい歴史を学び、自信と誇りを取り戻していただきたい。
    ...日本人よ胸を張りなさい...かつての日本人は立派だった。公職に就く者の心構えは民衆の絶大な信用を集め、人の生命を預かる者の使命感に人々は崇敬の念を抱いたものである。今一度、古きを温ね日本人が世界に誇った「魂」を学ぶべきであろう。

  5. 参考文献
    1. 「台湾を愛した日本人-土木技師八田與一の生涯」古川勝三著
    2. 「台湾を愛した日本人Ⅱ-“KANO”野球部名監督 近藤兵太郎の生涯」古川勝三著
    3. 李登輝著「最高指導者の条件」
    4. 蔡焜燦著「台湾と日本精神(リップンチェンシン)」
    『本報告、および資料は、岡田敏明さん作成の台湾研修旅行の事前資料集から多くを抜粋・引用している』

  6. 参考の参考:日本への恩義を忘れない台湾の人々
    1. 東日本大震災の援助金:台湾250 億円以上/人口2,300 万人、中国 3.4 億円/13 億人、韓国13 億円/5400 万人
    2. 八田技師銅像と同夫妻の墓前法要-八田技師の命日(5/8)に60 年以上にわたって夫妻を偲び、墓前法要が続いている。
    3. 渡航者数の比較(2017年):台湾→日本 約340 万人、日本→台湾 約140 万人

2018年5月台湾研修旅行 他の写真
5月24日(木)

龍山寺
平松感想 龍山寺
  • 同じ仏教でも、日本との差異(信者さんが読経の主体)、読んでいたお経に日本 でも代表的な『般若心経』があったこと、東アジアのつながりを感じました。
  • 旅行者の王さんに、『無償配布の経典』と聞いたので入手したかったのですが、 お寺の主要祭事でのみ配布で、残念でした。

5月25日(金)

嘉義農林野球部
5月26日(土)

九份


500m超の台北101(ランドマーク)
85F'頂鮮101'で会食


頂鮮101からの日没


同夜景


同VIP用ルームで古川氏を囲んで

平松感想 霧社事件
     
  • 26日夜のホテルでの懇親会でうかがった『霧社事件』、記録写真を拝見させていただきましたが、日台両方にとって悲惨な事件かと思います。
  • きっかけとなった若い警官の対応のまずさ、植民地運営の人的管理の不足(民族学的特性の理解不足、宗主国役人としての上位特権意識)を含め、マネジメントの視点での全体像が気になりました。


5月27日(日)

二二八紀念館/モニュメントと犠牲者名の一部


平松感想 全般
  • 今回の研修旅行は、『台湾で日本人が貢献できた事例群』を中心に、現地で拝見させていただいたのだと思います。
    (植民地収奪ではなく、共存~成長の視点を総督以下幹部にあったこと)
  • 可能なら、50年間の植民地運営の全体像と遺産(各ステークホルダー~多方面の視点~プラスマイナス、経済成長~投資額と日本に持ち帰った富とのバランス)、台湾の方々の意向が知りたいと思いました。
  • 台湾から引き揚げた伯母一家、従姉は70歳台後半で鹿児島県枕埼市で元気にしており、機会を作り、今回の台湾旅行を報告しようと思っています。
  • お忙しい中、4日間、ご案内いただき、ありがとうございました。
  • 2020年の話題含め、台湾を取り巻く環境は厳しいようです。
  • 王さんの解説(バイクの数、二人乗りの関係他)と合わせ、台湾の理解が進んだかと思います。
  • 又、第2回目の台湾研修旅行を期待したくなりました。


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