特定非営利活動法人失敗学会 |
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『Risk Manager』2018年5月号掲載コラム一方の失敗学が体系付けられ、世にデビューしたのは2000年の『失敗学のすすめ』からですが、やはりその考え方は古く、紀元前の中国最古の詩篇『詩経』にも他山の石が登場します。 人間は、古代から営々と活動を続け、科学技術を発展させ続けてきました。そして社会性もどんどん進化させ、基本、自由と平等の中で私たちは生きています。 私たちは技術を発展させる努力を止めません。既に、とてつもなく大きな構造物、巨大なエネルギー、目にも留まらない速さを実現していますが、さらに技術を高め、次のステップに進もうとしています。 新しいことを始めると、そこには必ず失敗が付いて回ります。これは至極当たり前のことであって、失敗もせずに最初からうまくいき、事業を始めてしまったら、どこかで考えもしなかった痛い目に会うでしょう。 リスクマネジメントを実践するには、新しいことを始めるときにも、リスクを評価し、そのリスクが現実の事故となったときの損失と、その確率を見積もることができます。この予想は難しく、当たることなんてほとんどありません。しかし、だからと言って、リスクを考えないのでは、行き当たりばったりの子供の遊びと変わりません。その時々に、ベストの評価をし、その記録を残した上で、実際に起こった失敗と、その対応に要したコストも記録します。こうすることで、予想を実際に近づけることができ、次の新規事業ではより現実的な計画を立てることができます。 アメリカのある大手メーカーでは、新しい機種の開発に取り掛かるとき、これまで経験したことのない「未知の不具合」の処理にかかる費用を予算に組み込んで計画を立てます。それも勘に頼るのではなく、過去の開発計画の遂行で、不具合処理にかかったコストを人件費まで含めてつぶさに記録がしてあり、それに基づいた数字を出してのことです。もちろん未知の不具合に遭遇すれば、慌てふためきますが、それも計画のうちということです。 そこまでクールに対処ができるようになりたいものですが、単に頭の中で考えるだけではなく、システムの中にそういう仕組みを作りこむ努力は組織の力があって初めて実現するものです。 私たちは、新しいことに挑戦し続けます。そうすることで発展が期待できるのです。次の世をもっといいものにする。それには失敗がつきもので、そのリスクを定量化するには、リスク評価の精度を高めることです。閉鎖された自分たちの世界だけではなく、視野を広く開け、アンテナを立てて他所の情報も活用するのが有利です。
【飯野謙次】
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