特定非営利活動法人失敗学会 |
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第19回失敗学会大阪夏の大会 報告会場とzoomとのハイブリッド開催
【記録】 13:00 開場、Zoom 機材設置 13:25 開会挨拶(平松雅伸大阪分科会会長) 13:30 講演1:二村知子(隆祥館書店 書店主) 14:30 講演2:河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 15:30 休憩 16:00 講演3:岡本満喜子(関西大学社会安全学部 准教授) 17:00 講演4:小林正秀(京都府農林水産技術センター 主任研究員) 18:00 情報交換~閉会あいさつ(飯野謙次本部副会長・事務局長) 18:30 雑談 19:30 終了 大会参加費:【失敗学会会員】会場参加4,000円、zoom参加2,000円 【一般】zoom参加4,000円 2020年、2021年と大阪夏の大会は、Zoom を介したネット開催を余儀なくされた。大阪分科会の人達と、2022年は対面でやろうと決めたのは3月。全国の新規コロナ感染者数も第6波のピークを過ぎて、落ち着きを見せているときだった。一つ、今次のコロナ禍で良いことがあったのは、Zoom を使った会合の開催を覚えたこと。今回も遠くから、あるいはコロナ感染が心配の方もネット参加できるように、最初から対面とネットを併用したハイブリッド形式での開催を決めていた。7月23日が、まさか第7波の入り口に重なろうとは誰も思わなかった。 今回の会場は、隆祥館書店の8階多目的ホ-ルをお借りした。対面参加は最大20名と通常キャパの半分以下に絞ってのハイブリッドである。隆祥館書店は1949年、故二村善明氏が大阪府立 今回のファーストスピーカーは、その驚異的な売り上げ初速を達成した二代目店主、二村知子さんだ。人との心の触れ合いがますます希薄になる今の電子化、機械化の世の中、お客さんとのつながりを大切にされている書店がここ、大阪谷六に残っていた。万引き未遂をした少年を諭したところ、不登校が治ったという逸話には胸を打たれた。 数年前から、街の小さな本屋さんが次々に姿を消していき、ますますアマゾンで買うという淋しい思いをすることが多くなったが、本の流通には「ランク配本、見計らい配本」という仕組みがあって、大手はいいが、中小はそれに苦しめられるという事実を初めて知って驚いた。便利にはなったものの、その代わりに人間らしさが喪失されていく社会の傾向が、どこかで変わってほしいと思う。 2本目の講演は、食品安全教育研究所代表の河岸宏和さんによる「食品工場を取り巻くリスクと危機管理」であった。Zoom を介してのご出講が残念ではあったものの、危険を予知し、それに備えることについて、実例を取り上げての講話は説得力が強い。最近の食品工場での火災を例に、火災に備えるとは法令に従っただけでは不十分で、責任者が従業員の安全を真剣に考えて備えなければならない。また事業を守るには、お客様の安全も常に考えないといけない。「組織の倫理観はその組織の責任者の倫理観を越えることは無い」とは重い言葉だ。 危機管理担当者は、現場を自分の目で見、アンテナを立てて危険を構造、電気、衛生面を常に見る努力が必要だ。そして、他山の石に学ぶ姿勢も必要。さらに経営者は、従業員の意識に頼るのではなく、仕組みができていること。すなわち fool proof で目標を実現することを目指さねばならない。 3人目は、大阪分科会がたびたびお世話になって来た関西大学社会安全学部より岡本満喜子准教授をお招きし、 「自動運転時代の責任追及と事故調査とは」の講演をいただいた。自分が高齢になって、運転免許認知症テスト、自主返納制度の報道を見るたびに、自動車を運転する便利さをなくしたくないなと気持ちもあって、非常に関心の高い話題だ。 事故が発生した場合、自動運転(まだ実現していないレベル4、レベル5の場合)では、歩行者、ドライバー(保険会社)、自動運転車メーカーの3者が土俵に上がる。弁護士資格を持たれた岡本さんによる、金銭の貸し借りを例に上げて、自動運転自動車による人身事故の裁判の解説はわかりやすい。そして今度はメーカーの責任を問おうとしても、自動運転の仕組みに欠陥があったことを証明することは難しい。しかしこれでは、メーカーにより安全な自動運転を目指すというインセンティブが弱い。これをどうするかというのが、国土交通省も巻き込んだ話し合いがなされている。 トリの講演者、京都府森林技術センター主任研究員小林正秀さんは、パワーにあふれていた。自分の課題を考え抜き、アイデアを捻り出し、実行に移す。そして失敗しても、そこから学び、次の改良を考え出し、また実行に移す。まさに「失敗学」の教えを実現し、いくつもの課題を次々に克服していく姿勢には敬服した。 小林さんの生き方は、日本では破天荒。ことなかれに流れがちな日本の社会では、ずいぶん苦労をされたようだ。しかしその発明を通して安全で美味しい丹波栗を増やし、御神木を救い[3]、獣害を防いできた[4]。最後のスライドに表示された言葉は重かった。「日本人は命を大切にしなくなったから、なにをやっても失敗するのです」 日本の社会が国際的に競争力をどんどんなくしている今、何かが変わらなければならない。それには技術力を高め、人をリードする才能を発揮できる人を増やし、違いがある者に対して許容性を高めることで、創造力を高めることだと機会があると私は言ってきた。その許容性は動物や、植物も含めた地球に対する気持ちが大事なのかもしれないと思った。 久しぶりの、一部だけでも対面のイベントが実行できて、とにかく嬉しかった。企画をした大阪分科会、会場を貸してくださった隆祥館書店、そして何よりも4名の出講者の講演で素晴らしい夏の大会だった。やはり直に話している人の目を見ながら、聞いた話は心に響く。畑村会長が繰り返し説く三現、現地、現物、現人が実現できたように思う。 参考文献 1.「13坪の本屋の奇跡」木村 2.「佐治敬三と開高健 最強のふたり」北康利、2015年、講談社 3.「ナラ枯れから京の神木を守る」2011年、9月24日、朝日新聞 4.「ドローン鹿追い払い」2019年、9月14日、日本農業新聞 【編集後記】 今回、隆祥館書店の多目的ホールをお借りし、スピーカーに二村知子さんはじめ、河岸宏和さん、岡本満喜子さん、小林正秀さんを迎えて夏の大会を実行できたのは、失敗学会に取って記念すべきイベントでした。改めてスピーカーの方たちを推薦してくださった大阪分科会の面々、また岡田さんと三田さんには、隆祥館書店まで出かけて出講交渉をしていただいたことに感謝をいたします。 |
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