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提言: 羽田空港衝突事故の対策

 2月22日のフォーラム202後譚の記事「羽田衝突事故の対策」を受け、その内容を失敗学会による提言として世に提示することにしました。


提言: 羽田空港衝突事故の対策

 2024年1月2日(火)午後6時前、羽田空港C滑走路に着陸しようと進入した日本航空旅客機が、同滑走路で離陸待機をしていた海上保安庁の航空機に激突しました。大破した海上保安庁機乗員6名の内、助かったのは機長の1名で残り5名は死亡しました。日本航空機は衝突時に火災が発生、炎上したまま約1km進んで停止したものの、乗客乗員379名全員は、シューターで脱出して助かりました。
 この事故の翌日、国土交通省は管制官と、衝突した2機を含む周りの航空機の交信記録を発表しました。この記録では、海上保安庁機は誘導路内の停止位置を指示されたのに、誤って滑走路に進入していたとのことです。
 この交信記録の管制官と海上保安庁機とのやり取りを抜き出すと、以下の通りです。

時刻 発声者 発声内容
17:45:11JA722A タワー、JA722A C 誘導路上です。
Tokyo TOWER JA722A 東京タワー こんばんは。1番目。C5 上の滑走路停止位置まで地上走行してください。
17:45:19JA722A 滑走路停止位置 C5に向かいます。1番目。ありがとう。

 しかし、実際の交信は英語で行われ、この日本語でのやり取りはその翻訳です。交信記録は、オリジナルの英語版も公表され、その内容は以下の通りです。

時刻 発声者 発声内容
17:45:11JA722A TOWER JA722A C.
Tokyo TOWER JA722A Tokyo TOWER good evening. No.1, taxi to holding point C5.
17:45:19JA722A Taxi to holding point C5 JA722A No.1, Thank you.

 日本語に翻訳された記録には、「誘導路」と「滑走路」という言葉が出てきますが、オリジナルの英語記録には、「誘導路」に対応する言葉 "taxiway" と「滑走路」に対応する言葉 "runway" は、1度も出てきません。つまり、管制官と海上保安庁機は、"C5" という停止位置の名前だけで交信をしたのです。
 毎日、航空機の管制を行う管制官にとっては、"C5" という停止位置が誘導路上にあることは言うまでもないことでしょうが、日々、離着陸をするわけでもない海上保安庁機はどうでしょうか。今回の事故では、海上保安庁機は "C5" が滑走路上にあるものと勘違いしたと推察されます。

 失敗学会では、事故の原因を徹底究明し、同じ失敗が起こりえないような仕組み作りを目指します。いずれ、空港で待機している航空機の位置は、GPS技術を使って管理され、危険な領域に進行しそうになったら警告を発するシステムもできるでしょうが、開発には時間がかかりそうです。
 まずできる簡単な解決法は、交信の際に停止位置を記号だけで伝えず、どこにあるどの停止位置かを伝えるようにすることだと考えます。この手法で上記記録をやり直してみると以下のようになります。

時刻 発声者 発声内容
17:45:11JA722A TOWER JA722A heading to runway C.
Tokyo TOWER JA722A Tokyo TOWER good evening. No.1, taxi to holding point C5 on taxiway.
17:45:19JA722A Taxi to holding point C5 on taxiway JA722A No.1, Thank you.

 実に簡単な解決法です。この提言が関係者に伝わって実践されることを願ってやみません。
(2024年5月17日 18:00)
【失敗学会】


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