特定非営利活動法人

失敗学会

広告掲載について 広告掲載について 広告掲載について 広告掲載について
 入会案内
 連絡先
 International
   日本語ホーム
 組織
   設立主旨
   法人会員
   個人会員 
   分科会
   貸借対照表
   個人情報保護方針
 ニュース
   過去のニュース
   関連・推薦書籍
 会員ページ
   パスワードを忘れたら
   会員個人情報変更
   失敗学フォーラム
 〒113-0033 東京都
 文京区本郷 5-29-12
  admin@shippai.org  


消防博物館訪問記


2005年7月16日, Tokyo Japan -- 7月16日、失敗学会員有志が集まり、 四谷三丁目にある消防博物館を訪れた。訪問を呼びかけたのは 失敗体験館(仮称)分科会。3連休の初日、家族連れに混じっておじさんたちが 5人、童心に帰って展示を楽しんだ。
   まず、1階受け付けに入ってすぐ、明治時代に活躍した 馬牽まびき蒸気ポンプが展示されている。 まるで生きているかのように見える2頭の馬と旧式な車両に見入っていると、 “平成”という時代から一気に時代を逆行するかのような感覚にとらわれた。

   見学はまず6階の地震と津波の特別展示を訪れた。 左写真は津波を体験できる装置。展示物の下にもぐりこみ、透明半球状部分に頭をいれて(写真中央中田さん) 目線を水面の高さに合わせ、他の人(写真中左手前茂木さん)に紐を引いてもらうと津波が近づいてくる。 しかし、これはあまり現実感がなかった。実物とかけ離れて小さいモデルに、流体の相似則的 観点から、現象があまりに違いすぎるからだろう。僕は結局、紐をブイブイと引っ張って、 「あ、波が起こった」と喜んでいたにすぎなかった。しばらくして見ると、小学校に 入ったばかりくらいの男の子が同じことをやっていた。

   この階では、アニメ“稲村の火”を繰り返し放映していた。 その題名から、サザンの歌がやたら多かった“稲村ジェーン”という映画しか 思い出さなかった僕は、しばらくその画像に見とれていた。話の大筋は、
祭りの準備で忙しい村で小さな地震が感じられた。1人だけ、その揺れから 不吉なものを感じた庄屋さんが高台から海を見ていると見る見る潮が 引いていった。村人を救おうと、庄屋さんは自分の家に火を放って村人の 注意を引く。準備に追われていた村人は、火に気づき高台に登ってみると、
『火は消さなくていいから、みんなをこの高台に呼ぶんだ!』と庄屋さんが 言い、村人全員が高台に避難。やがて海の向こうから大津波がやってきて、 皆が見守る前で村を破壊していった。
「へえ、いい話ですね」と思わず声が出ると、
「うん、教科書に載っていて習った覚えがあるよ」と石橋さん。
「え、僕は初めて聞きましたよ。なんで教科書からなくなっちゃったんでしょうねえ」
「うん、なんでだろうかねえ」と。
   地震大国の日本なのだから、こういう津波や地震の怖さ、それらへの 対処を教える話は教科書からなくしてはいけないのではないだろうか。また、この話が もっと世界にも伝わっていたら、昨年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波での 死者ももっと少なかったのではなかろうかと思うと残念だ。

   上記展示もそうだったが、ここでは、子供が退屈しないよう工夫が してあり、地震の対策を伝える映像の横では、ジグソーパズルに興じる子供の姿があった。 なるべく多くの人に見てもらい、知識を伝えたいということでは、この博物館も 失敗体験館(仮称)分科会が目指すものも同じである。如何に人の興味を惹くかというのは 大きな課題となろう。エレベータに乗る前に通った地下1階展示場には、実物の消防車の運転席 に乗ってその消防士になったかのような体験ができた。われらおじさん軍団ももちろん体験乗車 してみた。みんな乗ると嬉しそうな顔になるのが妙に印象に残った。

 


   5階の常設展示場に降りてみると、運良く職員による案内ツアーが 始まるところだった。聞き終わってみると、人の声による案内があるのとないのとでは、 展示物を見たときの理解度と面白みが全く違うことがわかった。他人に情報を伝える 時に“人”を介することが如何に効果的かがわかる。
   江戸時代に始まった火消しの制度が“民”によるものと“公”のもの 2種類があったのは初めて知った。この展示会では、中央に置かれた模型による江戸の 町並みと火事の様子を見せているのが圧巻だった。逃げ惑う人の様子や、屋根から 壊しながら消火に努める当時の命がけの消火作業の様子がよくわかった。
 


   江戸時代は地震の原因は良く解明されておらず、人々は 地下で大なまずが暴れるから地震が起きると考えた。今から思うとばかげたことだが、 理解できない現象に遭遇したとき、人は途方もない説明をしようとする。つまり、 原因不明のままでは、どうもきものすわりが悪い。 そのため、人智を超越したものに原因をなすりつけて自分を納得させようとする。 今でも“占い”の書物がベストセラーになったりする現象も人間のこの性癖に 起因するのではないだろうか。
 


   合ってる、間違っているは別として、江戸時代の 人々が、天災について記録し、それらの怖さを後世に伝えようとした 努力はこの4階に様々な形で展示されている。僕たちも今、様々な形で起こった産業事故 の怖さとその予防について後世に伝えようとしている。失敗体験館(仮称)分科会の面々は 思いを新たに消防博物館を後にし、第3回となる分科会会合に向かった。

   消防博物館は、 丸の内線四谷三丁目駅2番出口すぐです。但し、10月11日(火)~10月17日(月)は休館予定。

   失敗体験館(仮称)分科会では、 分科会参加者を募集しています。 さし当っての活動内容は、「事故や失敗、またそれらの原因の保存」をしている施設を 見学し、それら施設に関する情報の収集をすることです。このため、分科会会議への 参加ができない地方の失敗学会員も歓迎します。興味のある方は 失敗体験館(仮称)分科会事務局(SIGMUSE@shippai.org) まで御連絡ください。
次回は、8月27日(土)11時から、消防体験館訪問、午後3時から第4回会合です。
(いいの・けんじ)
5 6  7月 8 9 10
2029年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

失敗知識DB

失敗年鑑

個人会員紹介

法人会員紹介

失敗体験施設名鑑
 
Copyright©2002-2024 Association for the Study of Failure