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「失敗学講演の旅」
第10回:御巣鷹山慰霊登山(Part4:最終章)

Part 3 はこちら

   一息ついている間に、昇魂の碑の前にあった列もようやく途切れた。我ら一行も一人ずつ、 両側を花で飾られた階段を上り、線香を置いた。この大きな碑が、墓地の入り口になっているとはさらに奥に進んで初めて知った。
   そこから先は、まるで迷路のようになっていた。みな、思い思いの方向に進んではそこここにたたずみ、 墓標を見つめては、亡くなった方の苦しみを考えた。こればかりは目をつぶって考えても本当にわかるものでもない。 Wikipediaの記述を読むと、 かなり詳しく書かれている。そして、そこからの外部リンクには信じられないような凄惨な事故現場を伝える写真集へのリンクがあった。 凄惨な遺体写真もあるため、グラフィックな映像に弱い方はこれを探してみぬようお勧めする。
   ただし、この事故について人に語り、繰り返さないための何らかの努力をするのであれば、 航空業界関係者であれ、教育者であれ、僕ら失敗学会のように『過去の失敗に学び、伝え、繰り返さない方策を提供する』 ことを目標に掲げる一般市民であれ、その映像を直視し、手を合わせ、涙し、何があったのか真の理解を深めることが大事だろう。 その意味でも日航の安全啓発センターが社会に果たす役割は大きい。 改めて、これを一般公開に踏み切ったことにエールを送りたい。

   御巣鷹山の尾根にも、数多くの墓標に混じって22年前の事故を今に伝える焼け焦げた木の株が何箇所か残っていた。 山への激突と共にその衝撃で即死した犠牲者は苦しまずに済んだのかもしれない。上述の写真集を見ると、 投げ出されて木に引っかかった、あるいは炎に焼かれて亡くなった犠牲者もいたことがわかる。 奇跡的に生き残った者の証言によると、事故直後には声を出せるほど生命力のあった犠牲者も何人かはいたようだ。 救助隊の到着がもう少し早ければと悔やまれてならない。これについては、インターネットで様々な意見や説が掲載されている。 しかし、実際救助に駆けつけた人々の努力も並大抵のものではなかったことを今年の失敗学会大阪夏の大会 ()で、 救助する側からの体験談を語ってくださった大野さんの話で知った。当事者の生の声を直に聞くことがいかに大切か。 故人の名を記した墓標を見つめていると、“もっと生きたかったんだ”と訴えかけているように見えてきた。

   バラバラに尾根を歩いていた私達もどこからともなく集まり、輪をなして話し始めた。
“あちらに真新しいファッション雑誌が供えてありましたよ。きっと亡くなったのは若い女性だったんでしょうね”
“うん、僕も見ましたよ”
“ああ、あのあたりですよね”
“でもすごい山深いところだったんですね。これじゃあ、救助する方も並大抵じゃなかったんだって身をもって知りましたよ”
“標高はどれくらいですかね。御巣高の頂上はあちらの方ですよね”
   決して弾むことのない会話。みな人と話すことで、心に重くのしかかってくるものに潰されないようにしているかのようだった。 心を大きく動かされると人は無口になる。こうなると口をついて出るのは客観的な観察ばかり。 こういうときに心の中を吐露してもどうにもならないことがわかっている。 皆、それぞれが自分の中にあったもやもやしていたものをようやく治めることができ、 新たな体験によってさらに一つ何かに近づいた。その何かは、 人によって違うだろうし、形があるとも思えない。しかし、どこか自分が今いるところより高い所にあるものだと思う。

“さあ、そろそろ降りましょうか”
その日は静岡に戻ってレンタカーを返し、東京と大阪に向かう新幹線に間に合わなければならなかった。これが実際、 ぎりぎりになってレンタカー屋さんから駅に向かって走る羽目になった。帰りの運転は斉藤さんにハンドルを任せ、 山道を抜けて中央高速を飛ばしていると、どうにも行き所のない心を落ち着かせるかのように、富士山がその美しいシルエットを見せていた。


− 完 −

あとがき ()

(いいの・けんじ)


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