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秋の国際大会報告



   暑かった夏の残暑も過ぎ、心地よい秋となって待ちに待ったその日がやってきた。 日曜日ということもあって、目印となる巨大蜘蛛オブジェの足には子供達がまとわりつき、 その姿をデジカメに収めんと親たちが交替で目の前に小型カメラを持ち上げては下し、 小さな液晶画面を覗き込んでは満足そうにまたポケットにしまいこんでいた。
   11月2日、3日の連日、失敗学会初めての試みとして秋の国際大会を開催した。 2日が東京六本木ヒルズにて、3日は同じ内容を大阪国際会議場(グランキューブ)で繰り返した。 以前にも経済産業省がスポンサーとなったMOTプログラムの中で、 スタンフォード大学から石井浩介教授に御講演をいただいたり、 たまたまアジアに来られていた Doulas Wilde 教授に懇談会で話していただいたりしたが、 今回は全く何もないところからアメリカ人大学教授を招いてのイベント開催となった。
   海外から失敗学でよく知られた大物を招いて御講演をいただこうとアイデアが出たとき、 まず思い浮かんだのが Henry Petroski 氏である。以前からその著書を翻訳させてほしいと私信を交わしていたので、 この話を持ちかけてみると快く引き受けてくださった。Petroski氏は日本を訪れるのは初めてとのことで、 御婦人を同伴して明石大橋、MIHOミュージアム入口のつり橋をぜひ見たいと、 6日間滞在の予定があっという間に埋まっていった。“To Engineer is Human”など、 過去の失敗に学ぶ事例研究を数多く著しておられる Petroski教授は、土木工学、機械工学、 近代建造物の歴史では世界的に有名な人である。もし英文読解力が多少なりともあれば、 訳本ではなく、原著をぜひ読んでいただきたい。もの書きとしての勉強もちゃんとこなされた Petroski氏の英文は流れるように美しい。
   今回の秋の国際大会は『大型人工物の事故と安全』というテーマで、 失敗学会会長の畑村洋太郎氏にも御出講をいただいた。奇しくも失敗に学ぶということに関して、 東西の大物が顔を合わせたのである。

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(いいの・けんじ)



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