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印刷博物館訪問記

日時:2009年3月21日(土),15:00〜17:00
場所:印刷博物館
参加者(11名)
飯野謙次, 福本喜枝, 石山秀雄, 松尾時雄, 中田邦臣, 渡辺久剛, 酒井雄二,
斉藤貞幸, 児玉仁, 竹内正彦, 齋藤稔
10:00 印刷博物館エントランス付近集合
10:15 学芸員、中西さんによる案内
10:45 故宮VRシアター《紫禁城・天子の宮殿》
11:15 印刷体験工房でオリジナル印刷物製作体験
12:00 終了



 3月21日、快晴。春の到来を告げるかのような陽気に、 本郷事務所から印刷博物館まで30分の道のりを歩いた。文京区には坂が多い。 幸い行きの行程はほとんどが下り坂。慣れた人は、登りより下りのほうが足への負担が大きいと言うが、 年齢とともにせり出して自己主張をするおなかを抱えているとそうはどうしても思えない。
 この日、訪れた印刷博物館は日経PLUS1「おすすめの企業博物館」ランキングの第2位である。 大いに楽しみにしていたのと陽気のせいもあって、すこぶる上機嫌で博物館ロビーに到着した。 エスカレータで地下に降りたところに博物館入り口があった。 その日、ボランティアとして私たちを案内してくださった中西さんと挨拶を交わした。 平均年齢がやや高めの失敗学会員からすると随分若い方だったが、全く物怖じせず、 その軽快な話に私たちを惹きこんでいった。まずは“プロローグ - 印刷を感じる空間” で、壁一面のビジュアルコミュニケーション展示を見た。 ラスコーの洞窟壁画に始まり、最近のICカードまで実に様々な展示物は、 その多くがレプリカとの説明だったが、本物の写真と精巧なレプリカを比べると、 やはり実体のあるものがいい。

 ひとつ、解説を紹介しよう。書体のサンセリフとは、フランス語で Sans-serif。 Sans が“・・・のない”の意味で Serif とは、 ローマ字で知られるローマン体の“ひげ”などと呼ばれる部分である。 大理石に文字を彫るようになり、文字の線からさらに割れないようにひげをつけたとのことだった。 ただし、これはあくまでも一説であって、文字線から割れが伸びなくても、 ひげから割れが発生しては反って割れる確率が高くなる。むしろ、 文字の高さをそろえるために先にセリフを彫ったと考えるべきだろう。
 ちなみに日本語の明朝体の横線が細く、縦が太いのは、木目に倣う前者が細く、 木目を切る後者が太くなったことに起因すると言われている。

 次に西洋で最初に活版印刷技術を利用して作成された42行聖書のレプリカを見た。 実物は、慶應義塾大学がアジアでは唯一所蔵しており、研究等に使用している。 42行で終わるなら随分短いなと思ったら、ほとんどのページが42行からなっているからそう呼ばれたとのこと。 ちなみに右の写真は、印刷博物館の展示物ではなく、ウィキメディア・コモンズからの引用で、このページは40行からなっている。
 ルネッサンスの三大発明の1つとして挙げられている15世紀半ばのこの活版印刷だが、 それより以前、11世紀には中国(当時の北宋)、14世紀には朝鮮半島(当時の高麗)で実用化されている記録がある。 一文字一コマに文章を分解して実現できる活版印刷は、古い書体には合わず、日本では明治以降に広まった。 ただし、現存する最古の印刷(活版ではなく)の記録は、8世紀の日本の百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)である。

 プロローグをざっと見終わると、今度は展示室に案内された。ここには、印刷の仕組みを教える展示が5つのブロックに分けて置かれていた。 ひときわ大きいブロック4には、様々な印刷機械の実物が据えられていて圧巻。

 次に案内されたのがミニシアター。「故宮VR《紫禁城・天子の宮殿》」の上映を見た。 VRの文字から想像できたろうに、そこは計画は人任せ、アヒルの学校よろしく言われるままにあちこちに動いていた私には、 最初実物の映像を見ているのかと錯覚した。三次元のきらびやかなコンピュータモデルの中を、 案内嬢のナレーションに合わせて視点を移動。大変な労力をかけて作られたモデルであった。 そして今度はゲームのハンドヘルドデバイスを持たされ、自分でモデルの中を行き来した。
 しかし何かが違う。実世界を肉眼で見ていると、そこここに汚れ、ゆがみや切り欠き、あるいは光線の揺らぎなど不完全さがあるものだ。 コンピュータが映し出す実物の虚像は、赤はあくまでも真っ赤(もちろん影や周りの反射なども忠実に再現した上でのことだが)。 そしてまっ平らな壁面はあくまでも平らなのである。映画マトリックスの世界が実現するのはまだまだ遠い未来のことなのだろう。


 最後はいよいよ本日のクライマックス、活版印刷の体験ワークショップだ。 何でも実際に自分の手を使ってものづくりをやるのは、失敗してもいいから貴重な体験だ。 参加者一人一人に用意された、活字セットと簡易手動印刷機を前にまずは先生の説明を一通り聞いた。 そしてデモンストレーションを1ステップ見ては、今度は真似をして自分でやってみる。

 こうして、私たちは昔ながらの活版印刷の実際を体験し、その大変さを学びながら、 自らの手による栞を作成し、記念にいただいて帰った。右写真拡大部分の文字端部のギザギザは、 印刷によるものではなく、デジカメと映像編集ソフト、それにあなたのスクリーン解像度による。 今でも一部だが、活版を使った印刷業も残っているとのことだった。
 いまやプリンターに取って代わられた活版印刷を体験することは、 昨今の不況による失職に備えてのことでは決してない。人により何を思い、感じ、あるいは何も思わなかったなど様々だろう。 私は、それまで一部上流階級に限定されていた情報の流通を、一般に開放した革命的技術を体験することにより、 当時、印刷機から次々に吐き出されるオリジナル印刷を見て、感動に打ち震える人たちに思いをはせた。 情報を伝え、そして受け取る事。 いまや私たちの社会生活に欠かせないこの技術のはしりを人々に体験させ、考える機会を与えている印刷博物館に深謝したい。
[飯野謙次]




 
 
 
 
 


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