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パロマ湯沸器事故

 1996年3月、ギタリストを目指して上京していた一家の長男が死亡した。 現場検証を行った警察は死因を病死と考え、家族にそう伝える。 10年間、その思いに苦しんだ末、母親が写真はないかと同警察に問い合わせたことに始まり、 10年前に出していなかった死体検案書交付申請書を提出、死因が一酸化炭素中毒だったことを知り愕然とする。
 そこから両親の再捜査依頼、さらに刑事課との交渉の末、ついに捜査一課が乗り出し、湯沸器の不正改造を突き止める。 ここで初めてことの重大さが認識され、経済産業省が加わって20年間に亘る不正改造による死傷事故の実態を公表、 パロマに対応を迫る。
 パロマは当初、製品に問題はなく、業者の改造が原因と言い張るが、 その不誠実な態度、回収・消費者への通知を行ってこなかったことが世間の非難を浴びた。 経済産業省は、該当機種の全数点検と必要な改修をパロマに指示し、その状況を逐次報告させ、公表した。 そして、事故の実態を知らなかったと言っていたのが、本当はパロマも知っていたことが露呈し、 回収を開始。これら一連の事故は複数の民事訴訟、 さらに唯一時効が成立していなかった2005年の事故は刑事訴訟に発展した。

 本事件では、事件発覚当時のパロマの責任回避と、不正改造が世間から大いに避難を浴びた。 しかし問題はそれだけではなく、監察医務院に死因が一酸化炭素中毒と知らされながら、 なおざりな捜査で打ち切りとなった1996年の警察対応、 不具合報告を受けていながらデータを集めるだけでこの問題を認識できなかった経済産業省、 など多くの問題が反省された。そして経済産業省による“製品安全対策に係る総点検結果のとりまとめについて” に記された31項目により、このような事故の再発防止に関する方向が示され、さらに“消費生活用製品安全法”が改正された。

 本記事では、この事件について記述するが、 事故を起こした機器の根本的な設計の問題についても解説を行う。 それは、主バーナーのガス遮断弁の制御方式を、 排気ファンがある機種であったのに、排気ファンがないタイプと同じ物を流用したのではないかと思われるのである。
 本記事は、責任の所在を解明し、追及することは目的としていない。 しかし世の中の設計者たる者、この事故に学び、自分の設計で考えられる不具合にどのようなものがあり、 その時、製品はどのような挙動を示すか考えなければならないと意識していただければ幸いである。

失敗年鑑2006記事>>パロマ湯沸器問題

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