特定非営利活動法人失敗学会 |
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第6回大阪夏の大会報告とアンケート結果日 時:7月18日(土)、10:00 - 17:00 (懇親会 17:30 - 19:30) 場 所:大阪府社会福祉会館5階ホール(地図) 参加費:会員 3,500円、一般 7,000円 10:00 開会の挨拶【大澤勲】 10:05 『失敗しない最強のチーム作り』【飯野謙次】 11:10 『患者・家族と医療者のより良い関係を目指して』【北田淳子】 12:15 (休憩) 13:15 「ことばと人間関係」~人を動かす会話のコツ【近藤三城】 14:20 『風で織るタオル』【池内計司】 15:25 (休憩) 15:35 『和釘に千年の命を打ち込む』【白鷹幸伯】 15:40 閉会の辞【大澤勲・飯野謙次】 17:00 終了 冬の会員発表を中心とした年次大会に対し、 外部講師を招いて講演を聴くことを中心に発展した大阪夏の大会は、 違った意味で楽しみな年中行事となった。 大阪分科会の努力のかいあり、今回も豊富な講師陣が実現した。 今年の参加者は会員45名、ゲスト・一般8名、ITC関係62名、外部講演者4名の計119名。 最初の講演は、大阪分科会員の飯野副会長が行った。 『失敗しない最強のチーム作り』と題した講演は、 ユングの認知論から8つの認知モードを導き出し、 効果的なチーム作りには、構成員の認知モード特性を合わせると、 その8つが全てカバーできるよう人の組み合わせを作るのが効果的だということだ。 「本当かなあ?」と思わず疑問を持ってしまうが、 その効果は、スタンフォード大学大学院の設計講座でその手法を取り入れてから、 米国のリンカーン設計賞において、 1990年代に受賞数を急激に伸ばしたことで立証されている。 参加者達でチームを作るところまでは行かなかったものの、 簡単なアンケート調査により、自分の認知モードの性向を各参加者が認識することとなった。 2人目は、北田淳子さん。ALS(筋萎縮性側索硬化症)で入院中だった御主人を、 医療過誤により亡くされ、その後病院側と患者(とその家族)側の間の架け橋となる患者情報室-とまり木- を開設されるに至った。事故後の病院側の真摯な態度に打たれ、 またその事故を風化させたくないという病院側の誘いもあって決心されたとのことだったが、 コミュニケーションの大切さ、ミスは起こるものだから、 それが起こらないようなシステム作りが重要と訴えられた。その姿は自らの苦しい体験からその実践まで行っておられるので、 これほど力強い説明にもなかなか出会えない。 最後に、『うそをつかない』、『隠さない』、『患者にわかるまで説明する』、の三点を医療者に強く求めると締めくくられた。 医療過誤から訴訟にまで発展することも珍しくなくなった昨今、 大変難しいことであるがそこから始めるか、それとも医療従事者をもっと法的に守るか、 どこからか始めなければならないと思う。 最近の医療行為に対するプレッシャーは大変大きなものになってきている。 自分が何らかの不具合を起こし、お医者さんにかかったとしよう。 そのお医者さんには、危機管理だの、情報の適確な開示だのに心を砕いていただくのではなく、 治療に専念して欲しいと願う人が実は多いのではないだろうか。 とまり木のような組織、あるいは失敗学会会員でもおられるが、 医療に関する患者やその家族とのコミュニケーションを専門に扱う人が別にいて、 お医者様は医療に専念していただいた方が治癒の確率は高いだろう。 医療行為そのものがいい加減でうそつきでは困るが、 そのようなお医者様には適確な情報開示を求めてもできない相談だ。 『患者の身にもなってみろ』とは、自分に対する医療行為でもないのに、 ああしなければいけない、こうしなければいけないと医療行為者に無用な圧力をかけている外野席の観客に対して放ちたい言葉だ。 昼休みを挟んで近藤三城(さんしろう)さんが登壇、「ことばと人間関係」~人を動かす会話のコツ、と題して講演をされた。 同氏がカタリスト研究所を設立されてから17年になる。 この研究所では、経営者の話し方講座を提供し続けているが、近藤さんは話し方のプロ。天職として社会に提供され続けている。 かつては極度の緊張症であったと語られる近藤さんは、今では500回以上、人前に立って話をされてきているということだ。 「コミュニケーション」が重要であることは言うまでもないことであるが、 ユーモアを交えたうまい語り口で説明されると、聴く方も字面の意味を理解して短時間だけ納得して後は忘却するだけではなく、 うまく自分の深層にその思いを埋めることができたように思う。 近藤さんの話を聴いて、2007年第6回年次大会で対話法について語られた浅野さんを思い出した。 やはりライブステージの聴講で、実践に役立つ薬を注入することの効用だろう。 読書は百遍やらなければ身にならないが、聴講という便利な手段を手に入れた我々は、それを数回で済ませることができる。 さらに実体験が伴えば1回ポッキリでいいかもしれない。 数時間の大会会場で参加者全員の体験学習はできないのが残念だ。 池内タオルについては、今回会員の岡田さんに紹介していただくまでは知らなかった。 徹底的に安全なタオル製造のため、使用する水は今治の水、 材料の綿花には枯葉剤を使用しないと徹底されている。そして製造に必要な電力を風力でまかなっている 柔らかさを追求した結果として、オーガニックタオルが出来上がったということだ。 2002年に New York Home Texitiles Show で最優秀新商品賞を獲得され、 その後遅ればせながら、2007年に新エネルギー財団の新エネ大賞審査委員長特別賞を受賞された。 赤ちゃんが口に入れても大丈夫なタオルというのは究極の安全だろう。 世界の黒澤も、まず海外での受賞が先立った。 最近では『おくりびと』がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされて再上映され、 見事その栄冠を勝ち取ったことは記憶に新しい。小津安二郎作品は今でも、 人口13万人の小都市、カリフォルニア州サニーベール市の市営図書館に並んでいる。 工学の世界では品質工学の田口メソッドが良く知られている。 その元となった実験計画法を全く知らずに、 未だに絨毯爆撃的実験計画を立てる人がいることは驚きだ。 まだまだ勉強することは山のようにある。 その山を少しずつでも崩していく機会は、やはり外部講師に頼るところが大きい。 トリの講演は千年の釘を打つという和釘鍛治師の白鷹幸伯さんである。 筆者が初めて氏にお会いしたのは、1年前の春合宿後にコバンザメ旅行で松山に行った()ときのことである。 道後温泉に入りそびれたのは残念だったものの、 その日の午後いっぱい、尿酸値を気にしながらも、ジャコ天とビールで中尾先生、菊野さんと白鷹翁の話を聞けたのは二度とない経験だった。 この日の講演でも、和釘の実物を手に法隆寺、室生寺、薬師寺などにまつわる経験を話された。日本では今のような丸い西洋釘はついぞできず、 四角だったということだ。その四角い和釘にも大小さまざまなものや、頭の形の違うものもあった。 白鷹氏は、2001年に吉川英治文化賞を受賞されている。しかし、そのきさくなお人柄に参加者一同感銘を受けた。 そしてこの日ラッキーだった人は、後の懇親会で白鷹さんがこそっと持ってこられた小さな和釘をお土産にいただいた。 こうして楽しく学んだ夏の大会も終わった。もちろん冒頭と締めくくりに大澤大阪分科会会長に御挨拶をいただいた。 最後に講演に対する参加者の満足度を紹介する。5段階評価で、平均81点であった。 上位は、白鷹幸伯さんの86点、2位は北田淳子さんの84点。
(いいの・けんじ)
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