失敗年鑑2006: 浜岡原発タービン事故
2006年8月15日、単体では世界最大の原子力発電炉ABWRを擁する
中部電力、
浜岡5号機のタービンが異常振動を起こし、
原子炉が停止した。原因は、出力20%の試運転時に設計で想定しなかった現象が起こり、タービン羽根の特定箇所が損傷を受けたことと突き止められた。
点検、原因究明、対策の費用は全てタービン設計・製造元の
日立製作所が負担する。
この事故は典型的な良い失敗と見るべきだろう。それまでの110万kW級に対し、ABWRでは 135万kW級、
とりわけ浜岡5号は定格出力138万kWである。失敗学会本郷事務所では多いときで2kW程度の電力を消費している。
浜岡5号1機で、失敗学会 69万事務所分もの電力をまかなっていることになる。
タービン羽根には新たな工夫が施され、それまでの直線的な外形に対し、美しいカーブを描いている。
事故のときに放射性物質漏れなど起きず、大事に至る前にきちんと原子炉が緊急停止したことを特筆しなければならない。
そしてこの事故は、新たな技術開発を行った結果、それまで誰も考えなかった現象が明らかになったのである。
技術開発を行えば、思いもよらなかった問題を新たに発見することは当然である。
堅実なる技術は、想定外のことが起こっても大事にいたらない仕組みを作りこんでおくことである。
事故、事故とマスコミに煽られて騒ぐのではなく、起こった事象を理解し、
如何に安全のための仕組みがうまく作動したかを認識しよう。そして1位を目指す努力に敬意を表したい。
2007年の中越沖地震以来停止していた
東京電力柏崎刈羽7号機は、
昨年暮れに
営業運転を再開した。
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