特定非営利活動法人失敗学会 |
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池内さんの講話を拝聴した後、1日目の宿泊所大潮荘に向かった。 これを“だいちょうそう”と読む。この宿は今治市糸山公園の北端にあり、 今治市四国島側と馬島を結ぶ来島海峡第三大橋を間近に望む絶好のロケーションである。 大浴場がないのが残念だったが、レストランから眺める来島海峡は、 その速い潮流を見せ付けるかのように波模様を見せていた。 明けて2日目。朝早く出発の予定だったので、前日の宴は程々で済ませていた。 土曜日合流組もこの朝の予定に合わせて、夜行バスでやってきたり、 前日夜中に西条まで何とかたどり着いて宿泊したり。 この合宿が始まるおよそ1ヶ月前: 「中尾先生、今治造船様を見学する予定ができました」 それまでにナカシマプロペラ様、松山から柳井までフェリーで渡る計画ができており、 筆者は今回の合宿で、どうしても造船所を訪問したいと考えていた。 それも2年前のように勝手に見学ではなく、 ちゃんと正面から入って関係者に御案内をいただかなくては気がすまない。 今回の合宿は、2008年の神戸、高砂、広島、 呉訪問の続編とも言うべき内容にいつの間にか発展していた。2008年は、神戸製鋼様で8,000トンプレスに感動し、 大和ミュージアムで戦艦大和の 10分の1模型を見ていた。 「進水式も予定されているそうです」 「お、やったね、それは楽しみだね。ガラガラボッチャンだったらいいね」 しかし、この時は思ったような進水式ではないとまでは頭が回らなかった。 2日目早朝、我等が目指したのは、西条市にある今治造船様。ここには世界最大のドック、 50万トン級のものがある。戦艦大和が基準排水量は6万4千トン、ダイヤモンドプリンセスが11万6千トンなので、 如何に巨大なお船を作る準備ができているか、気が遠くなりそうだ。 マイクロバスが、西条市に入ってややもすると、その姿が見えてきた。 今治造船(通称:今造)西条工場が誇る800トンのゴライアスクレーン (Goliath crane)3基である。 近くで取った写真もあるが、それは見上げるばかりの巨大なクレーン。 右は、昼食休みを取ったショッピングセンターの駐車場からの遠景。 写真左側に3基のゴライアスクレーンが見える。後で調べると1.5km離れた地点からの写真である。 このゴライアスという名前は、旧約聖書に登場する巨人戦士に由来する。 ただしその中では、エデンの園でイブをたぶらかした蛇を思わせる鱗のような鎧に身を固め、 イスラエル人民を苦しめる悪役。イスラエル王国第2代王デイビッドとの決闘で、 デイビッドがパチンコから放った石に当たって絶命する。 到着した私達は会議室にまず通され、今造の概要と現状をざっと聞き、 進水式に遅れてはいけないと見学に向かった。工場がとてつもなくでかいので、 バスに乗っての移動となった。 地元の運転手さんも、普段見れないものが見れたと感激してくださった。 筆者は、進水式と聞くと『どくとるマンボウ航海記』だったかの記述を思い出す。 船体にシャンパンのボトルをぶつけたり、鼓笛隊の賑やかな音楽、 そして紙テープを体中に巻きつけたテープマンなど、 しかし派手なパフォーマンスの準備はなく、『ガラガラボッチャン』でもなかった。 ドックの水門は既に下ろされ、ややもするとタグボートが2隻近づいてきた。 タグボートにロープを結わえ、ドック側を外し、ホーンを鳴らして『今』というのがわかった。 今造の方々は船体に向かって敬礼。 派手さはないものの、感無量で自分達の製品を世の中に送り出していることが訪れた我々にも伝わってくる。 10分ほど経過した時にレールにひじを着いて自分の頭を固定し、片目をつぶって背景のステレオ画像を消去すると、 静かに、静かに20万トン級の船が進んで行くのがわかる。 関係者は汗対策のタオルを首に巻き、ヘルメットに身を固めた私達の記念撮影に快く応じてくださった。
今造を後にした我々は、2年連続キッズデザイン賞に輝いたアイフルホームの
キッズデザインパークを訪れた。
モデルホームの展示だけではなく、子供の創造力を育むワークショップを開催するなど、
訪れる人が家族の価値を見直す展示が意欲的だった。
単に利潤追求だけでなく、私達が忘れかけている社会に必要な価値観を、
単に昔を懐かしむといった後ろ向きの方法に頼るのではなく、
新しいこれからの環境に求めていくことはすばらしいと思った。
集合時間を決めて、各自昼食に散らばった。 前日は昼食にうどんを食べていたので、今日は洋食にしようとちょっとおしゃれなカフェに入った。 何処かに出かけるときは、必ずお尻のポケットにねじ込んでいる文庫本を引っ張り出し、 読んでいるといつの間にかずいぶん進んだ。あれ?と気がついて見ると、 それほど混んでも居ないのに注文がなかなか出てこない。 見渡すと、僕より先に入って待っている人セットものがようやく運ばれてきている。集合時間に間に合わないぞ。 客席係の注意を引こうと見渡していると、みんなバイトなのか、こういうときにはなるべく顔を合わせないようにしているとしか思えない。 「あのお、すみません。サラダができていれば先に持ってきてください」 ようやく、ウェイターさんを一人捕まえて伝えた。 「はい、もう少々お待ちください」 特に急ぐ様子でもなく、相変わらずのんびりと客席に水を注いで回っている。 すると、続けざまに携帯にメールが来た。 他店に行ったグループから、「まだ注文したものが出てこないので遅れそう」と同じような内容の連絡。 「みんな、間に合いそうにないから良いよ」と返事して、これでゆっくり食べれるわい、と安心した。 日本全国、均質化が進み、どの街に行っても同じファーストフード。 居酒屋までチェーン展開で駅前は画一化している。 しかし、住む人の気質は変わらないのか、 坊ちゃんが松山に赴任して味わったのと同じいらいら感だなと心の中で笑ってしまった。 何とか昼食を終えて集合し、一路松山に向かった。2年前に尋ねた 白鷹翁の和釘工房である。 以下に、会員の斉藤貞幸さんの寄稿を紹介しよう。
白鷹さん、前日お会いした池内さんにはその日の懇親会にご出席いただいた。 その日の宿泊は道後温泉のにぎたつ会館。初めて来られた方には、道後温泉本館をお勧めしたが、 後で聞くと満員で温泉には入れなかったらしい。 恒例となった“宿の迷惑を顧みない”食膳を前にした中尾先生の講演会では、 タイタニックの沈没について最近わかった事実を紹介していただいた。 リベットを何本か回収して組織を調べたところ、 錬鉄製の強度不足のものが特に船首の細くなっている部分に多かったのがわかったらしい。 ここにリベットをかしめる機械が入らず、人手に頼ったということだ。 事故からほぼ100年経った今、新たな事実が科学技術の進歩により明らかになる。
[ 飯野謙次 ]
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