特定非営利活動法人

失敗学会

広告掲載について 広告掲載について 広告掲載について 広告掲載について
 入会案内
 連絡先
 International
   日本語ホーム
 組織
   設立主旨
   法人会員
   個人会員 
   分科会
   貸借対照表
   個人情報保護方針
 ニュース
   過去のニュース
   関連・推薦書籍
 会員ページ
   パスワードを忘れたら
   会員個人情報変更
   失敗学フォーラム
 〒113-0033 東京都
 文京区本郷 5-29-12
  admin@shippai.org  


線量[Sv]、吸収線量[Gy]、放射能[Bq]

 前ニュースで、空気中線量のモニターをいくつか紹介したが、 それら数字、テレビ放送で聴く単位についてまとめておこう。

 まず、“放射能漏洩” と良く言われるが、放射能とは、 放射性物質が放射線を放出する能力のことである。 だから、正確に言うと漏れ出すのは放射性物質で、 放射能はそれに含まれて一緒に外に出る。


Fig. 1 放射性物質、放射能、と放射線
(生成されるものは、元の放射性物質、崩壊の仕方により様々)

 しかし、世の中には“頭脳流出” という言葉もあるくらいだから、放射能漏洩も良いだろう。 言葉は常に進化する。

 まず私たちが今回の原発事故で頻繁に聞いたのは、シーベルト、次にグレイ、ベクレルの順だが、 逆に説明した方がやりやすく、頭にも入りやすい。

 ベクレル [Bq] は放射能の単位、すなわち放射性物質がどれだけ放射線を放出し得るかを表す単位である。 1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1ベクレル(wiki “ベクレル” より)。 放射線の強度には関係しない。

 グレイ [Gy] は物質に吸収された放射線エネルギーの単位。 放射線によって1キログラムの物質に1ジュールの放射エネルギーが吸収されたときの吸収線量が1グレイである(wiki “グレイ(単位)” より)。

 ところが、同じエネルギーでも、放射線の種類によって人体に及ぼす影響が違う。 シーベルト [Sy] は、この影響を考慮した数値である。β、γ線では、1Gyが1Sy になるが、 α線やエネルギー量の高い中性子では 1Gy が 20Sy になる(wiki “シーベルト” より)。ただし、係数が20となるような放射線はこのような事故の場合でも、放射性物質の発生源から離れていれば、 1Gy = 1Sv と考えて良いらしい(確証無し)。

 さて定義についてはわかったが、それを知って表中の数字を見てもピンと来ない。 私たちの健康にとってはどうやら何シーベルトというのが重要らしいことは、はっきりした。
 では、どれくらいの線量でどう影響があるのか、文部科学省の『放射線と安全確保』に詳しい。
 これによると、平均的日本人は、日常生活において、自然に年間 1.48mSv の放射線を浴び、 医療、飛行機の移動などの人工的理由では年間2.27mSv、合わせて3.75mSvの放射線を1年間に浴びている。

 下表に『放射線と安全確保』からの数字を多少アレンジして示してある。 同資料にはない“平均すると1時間あたりの線量はどれくらいになるか” をµSv/h で表の右端に足してある。
 文部科学省のページには、 東北地方太平洋沖地震関連情報の一部として、都道府県別環境放射能水準調査結果(例えば、3月15日20:30版)があるが、東京都(新宿)の過去平常値の範囲は0.028~0.079µGy/h とされている。

表1  日本人の平均線量率

 前ニュースの線量モニターは、当然誰がいつ胸部レントゲン写真を撮ったかとか、 何を食べたとかモニターしてくれないわけだから、上表中、赤地に白文字の自然からの平時の平均線量と比べることになる。 本日2011年3月21日夜8時から9時、新宿での平均線量率は0.137µGy/h だったが、それは平時の2倍弱だったわけだ。

 さて、これが私たちの健康にどう影響するかであるが、例えばこの前後合わせて2時間、新宿あたりで傘も差さずに外でティッシュを配っていたとしよう。 平時との線量率の差は 0.058(=0.137-0.079)µGy/h。で、2時間それにさらされたわけだから、何もなかった場合に比べて0.14(=0.058 x 2)µGy 増えている。この通常の2倍の線量率が365日続き、休みも取らずに毎日ティッシュを配ったとしても、 年間合計51.1(=0.14*365)µGy の増加にしかならない。

 『放射線と安全確保』には、生活における線量についてもわかりやすく図説している。そこからいくつかピックアップしたのが下表である。

表2  非平時活動1回による線量

 これを見ると、先の休日無しのティッシュ配りを、高い線量率の中で1年間続けても、 胸部レントゲンを1回受けたのと変わらない線量分しか増えていないことがわかる。

 さて、長々と書いたが、結論は。
 発電所から250キロ離れた東京では、放射性物質による健康被害は今のところ、出ていない。 ただし、屋外に長時間出る予定の人や、洗濯物を屋外に干す予定であれば、 自分が住んでいる地域の線量率を見てみよう。 そして、急激な上昇スパイクを見ても慌てず、数値を見て判断しよう。
 下表は、表2を拡張し、現象が起こるための線量と、屋外滞在時間に対応した必要線量率である。 例えば、線量率が300µSv (ミリシーベルトでは 0.3mSv、 ナノシーベルトでは、300,000nSv。 m と n では大違い。単位に注意 )の時は、 2時間も外にいれば、 あのバリウムを飲んでゲップを我慢しながら、 回転テーブルに革ベルトで結わえ付けられ、グルグルいろんな体勢を取らされながら、 X線写真をバシャバシャ撮られる検査を受けたのと同じ線量を浴びたことになる。
表3  現象に必要な屋外滞在時間に対する線量率

 現在、各モニター数値はµGy/h 単位で示されているが(茨城県は nGy/h)、これが15日に原発付近で計測された 400,000 µSv/h 、すなわち 400mSv/h になったら当然外出してはいけない。 表3から、2時間で吐き気を訴える人が出、5時間もいれば5%もの死者が出る。
 そのようなことにはならないと思うが(吉岡メモ参照)、 世の中、なにがあるかわからない。
飯野謙次
2 3  4月 5 6 7
2011年4月
     12
345
6
789
10111213141516
17181920212223
242526272829

失敗知識DB

失敗年鑑

個人会員紹介

法人会員紹介

失敗体験施設名鑑
 
Copyright©2002-2024 Association for the Study of Failure