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Joe Palca 氏来訪

 3・11の大震災、その報道映像は世界を駆け巡った。2008年に開催した 秋の国際大会で御出講を願ったデューク大学ペトロスキ教授を御記憶の方は多いだろう。 そのペトロスキ先生から一通の電子メールが舞い込んだ。
 こんど、National Public Radio(NPR、日本のNHKラジオに相当するアメリカのラジオ放送局) の解説者が日本に取材に行くので会って欲しい。
 温厚なお人柄もあって、日本のファン層を大きく拡大されたペトロスキ先生の頼み、喜んでお引き受けするととなった。

 到着早々、畑村会長のインタビューが実現した。その様子の一部がオンラインで視聴できる。 まずは、 ここをクリックして番組ページを開き、 上部左にある "Listen to the Story" をクリックすると音声ネット放送が始まる。

 放送のタイトルは、"How Safe Is Safe Enough? To Engineers, It Depends (十分な安全とは?技術者にとっては条件によること)"。 ペトロスキ先生曰く、“安全というのは厳密な工学用語ではなく、社会的な言葉ですよ”と、そしてウィスコンシン大学のコラディーニ教授は “設計は要求機能を安全に満足するよう行なわなければならない。そして想定外事象で壊れる時はやんわりと壊れるように工夫をするんだ”。
 番組は畑村会長の言葉で締めくくられている
「見たくないものは見えない。怖いことは考えたくない」
 失敗学を学んできた私たちは、何度も聞いてきた言葉である。しかし、そのしっぺ返しを目の当たりにして今、その言葉の意味をようやく理解し始めたようだ。

 2日後、今度は吉岡メモを連載している吉岡律夫さんとのインタビューが実現した。 到着するなり、録音機材をリュックに詰めた Joe は挨拶するのももどかしそうに、
“お二人に見せたいものがあるんだ”と書類を取り出した。
 なんと、その存在は知っていたが、どこにも現われていなかった 米国原子力規制委員会(NRC) の福島第一原発評価報告書であった。 この報告書についてのニューヨークタイムズ発表については先の失敗学ニュースに書いた。 その内容はいちいち、吉岡メモをサポートするものであった。

 今回の取材の目的を Joe はこう語った。
“福島の事故報道を見て、アメリカ国内では原子力発電所は大丈夫かと不安の声が上がっている。 原子力発電はやめなければいけないのか。それとも今回の事故に学んでより安全に設計して人と共存できるのか答えを出したい”
ということだった。
 吉岡さんは津波に備えて高い位置に建設され、トラブルはあったものの壊滅的被害はなかった東北電力の女川原発について話をされた。 茨城県の東海でも津波対策を途中まで終えていたため、間一髪救われた。Joe がどのような結論を導き出すか、次の放送が楽しみである。
【飯野謙次】



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