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第18回失敗学講演の旅

岐阜文化を見直す


 2009年にかがみがはら航空宇宙科学博物館を尋ねた春合宿以来の岐阜である。 その記事を書いたときには地図も作ったのに、 東海道新幹線岐阜羽島の駅は、県庁所在地の岐阜からかなり離れていることをすっかり忘れていた。 これは困ったと思いきや、名古屋駅で東海道本線に乗り換え、20分足らずで岐阜駅に着いた。
 今回のお迎えは初対面のK氏だ。この仕事をしていると次々に新しい方と知り合いになる。 私は大阪で生まれたこと、小学3年から高校を卒業するまで三重県で育ったこと、 その日は東京も寒いことなど話しながら講師控え室に向かった。この日は雪で遅れてはならないと、 通常なら10時の新幹線で十分間に合うところを東京駅8時出発ののぞみに乗った。 幸いにして遅延はなく、ずいぶん早く到着した。
 会場のハートフルスクエアーGは、 高架下に建設された岐阜市の生涯学習センターである。 昔なら焼き鳥やラーメン屋が並ぶところ、借り手がつかなければ駐車場・駐輪場になってしまう土地を、 うまく地域活性化に使っている。なるほど、中心となる駅なのだからイベントの宣伝も効果抜群だ。

この写真は会員のみ  パソコンの設定を確認しようと会場まで行ってみると、自分の飛び出す3次元ポスターに出会ってビックリ。 なるほど、これはうまい。主婦の間で人気のシャドーボックスのように、ダンボールの切れ端を使って、 顔写真を飛び出させている。今度は自分達も使ってみよう。さらに、手話通訳つきと初めての経験だった。

 実は今回、新しく買った iPad2 を持参していた。それも、パワーポイントのスライドは上映できないので、 スライドを PDF に変換し、使用する動画も苦労してネット上で錯綜する情報を頼りに iPad2 で表示できるようにしていた。 もちろん、有料変換ソフトをクリック間違いで買わせようとする 『だまし表示』 のわなをかいくぐって、無料ソフトを駆使してやった。 ただし面倒な二段階変換でようやくできたのだった。
 話は少しそれるが、この消費者をだましてソフトを買わせようとする業者は一体どういう了見なのだろう。 IT業界は、いたるところにわなを仕掛けているようだ。私も2年前に、 ある大手にもう少しで高い無線通信料をボラレそうになったことがある。 つい先日、安く済ませた契約を更新したらさすがにその『だまし』オプションはなくなっていた。 その代わり、2年後には契約が切れることは通達されず、そのままにしておくと自動的にさらに2年更新されるのだと、 まるで悪徳キャバクラのようなことを言うのには驚いた。 コマーシャルもうまく、市場イメージは今のところ良いようだが、果たしていつまで続くだろうか。
 映写準備の話に戻ろう。
 iPad2 に繋いだものの、スライドがプロジェクタから映し出されない。前日の授業でも最初は同じ現象が起き、 外部上映機器を繋いだ後に電源を投入してうまく画像が出たので、これで OK と自信があったのに、 今度はどうにもならなかった。万が一に備えてPCも持参していたので事なきを得たが、 あやうくスライド無しで漫談をやらねばならないところだった。
 東日本大震災があってから、『想定外』という言葉が流行っている。 想定外と言えば許してもらえると、最初に使った人は思ったに違いない。 しかし技術者たる者、自分が提供する製品やサービスが『想定外』の事象で使用や提供ができなくなったら、 それは恥と思わねばならない。それは起こり得ることを想定しなかったのだから。

この写真は会員のみ  講演は盛況だった。正直、組織化された集まりではこうは行かない。今回は岐阜市の地域フェスティバル。 それでも、200人近く集まってくださった。K氏曰く、いつにないことだそうで会場は満員だった。 高齢者が多かったものの、まもなく登場で会場の外で待っていたら、 明らかに十代半ばの男の子がハガキを手に慌てた様子でやってきて、
「これ、まだ間に合いますか」と聞いてきた。
 見ると、まさに始まらんとする私の講演への参加証だった。
「うん、まだ大丈夫。あのお姉さんに見せてね」と思わず K氏と顔を見合わせて苦笑い。
 まさに老若男女、いろんな方に失敗学を紹介することになった。手話翻訳にお二方が活躍されたのも、 私のしゃべりにプラスに作用したと思う。ついつい早口になってしまう発声が自然、ゆっくりになっていた。
 系統立った組織を持つ集まりの講演では、自分の上司がいるからなのか、正しい反応をしなければならないと緊張するのか、 なかなか笑いが取れない。我が人生、人を笑わせるため也、と思っている大阪人のわたしは以前、 「なんで、笑ってくれへんのやろ」と悩んでいた。ちょうどそのころ、気仙沼のシルバーセンターで講演をすることになった。
 その時のことは忘れない。案に相違して大いに笑っていただいた。それもゲラゲラと声を出してとそれまでにない反響だった。 それから、私も多少肩の力が抜けたのか、整然と並んだ組織軍団からも少しの笑いは取れるようになった。
 講演が終わってからも、熱心な方々に質問やら激励の言葉をいただき、帰路はいつになく上機嫌だった。

 このようなピラミッド型系統を持たない人のグループを、私は非晶質組織と呼んでいる。 集まったときに、誰が正しいとか、誰が言ったからという階層は全くない。
 失敗学会も、フォーラム93の報告に書いた木田さんの言葉のように、 このような非晶質組織を心がけている。個々の会員はそれぞれの思惑を持っているが、 大きい秩序はなにもない。それでいてつながりを保ちつつ、全員が同じ思い、 すなわち失敗学を学び、自分の周りや社会から失敗を減らそうという意識を持っている。 これがうまく行くのも、社会からはみ出さぬよう最低限の業務を執行部が行なっているからだ。 ややこしいことは全て事務局がネット技術を活かして抱え込んでいる。

 ずいぶん余裕を持って早く到着したため、岐阜市生涯学習・ボランティアフェスティバルの出展を見て回ることができた。 三文どころではない、ずいぶんラッキーだったと思う。Part 2 では、この文化的イベントについて報告しよう。

Part 2 はこちら
感想編 はこちら
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