特定非営利活動法人失敗学会 |
広告掲載について | 広告掲載について | 広告掲載について | 広告掲載について |
|
(会員用フルバージョンはこちら ) ⇒Part 1 はこちら 岐阜文化を見直す Part 2Part1に書いたパソコンの設定を終え、 ご用意いただいた控え室に入り、ゲットしたばかりの Dataman Pro に電源を投入、 講演では役に立たないとわかった iPad 2 でメールの整理でもすべえ、と思ったら WiFi がつながらない。 普段の講演控え室だったら、こめかみに青筋が立つところだったが、これ幸いと先ほどのベル薔薇の正体を確かめに出た。 立て看には、「岐阜県立岐阜城北高等学校、ファッション科 ファッションショー」とあった。 私が高校生だった時代には“商業科”と呼ばれていたものと思う。 ステージ衣装はてんでバラバラではなかったので、おそらくはグループごとにテーマがあり、 個々がそのテーマに沿ってデザイン、製作、それにショーまでこなしていた。 みんな、実に晴れやかな顔でステージを舞っていた。 自分は高校生の時、何かずっと思い出として残ることをやっただろうかとふと思った。 田舎の進学校だったので、ずいぶん勉強したと思う。 「思う」としか書けないのは、机に向かっている映像や授業風景など何も覚えていないから。 楽しかったことは、目をつぶるとその情景がまぶたに浮かぶ。 高三の夏にはロックバンドに参加してディープパープルやらに狂っていた。担任先生のお名前を拝借した“彦一バンド”は、 文化祭でロック喫茶をやる練習のため、田んぼの中の一軒家で大いに音を出していた。 でも腕は“高虎バンド”に全くかなわなかった。 ある日、一人だけ家が遠かった私は1時間に1本の急行に遅れそうになり、 エレキを抱えて友達のバイクの後ろにまたがり、畦道を疾走してバスを追いかけた。スリル満点だった。 彦一先生には昨年の同窓会でお会いし、30数年経た後に合法的に杯を交わすことができた。 人間、やはり支配関係がない状態で付き合えるのが楽しい。非晶質関係である。 高2から卒業するまでは、毎日昼休みにバスケットボールをやって遊んでいたのも忘れられない。 午前中に4限あったから、昼休みを最大限に活用するため、 我等昼休みバスケット同好会は、3限が終った10分間の休み時間に弁当を食べていた。 いまだに早食いの癖が抜けない。 全校の実力テストの日まで昼休みバスケで遊んでいたら、 「おまえら、何をしとるか」と、叱られた。 なにしろ勉強第一の進学校だったのである。 華麗なる女子高生によるファッションショーも終わり、他の展示も見て回った。 男の子には鉄道模型を作って走らせるコーナー、女の子には押し花のコーナーと、 老若男女、誰でも楽しめるイベントだった。 これは常設のようだったが、ロダンと花子についての展示があった。 花子(本名太田ひさ)が、生家の没落から数奇な運命を辿るのは、マダム貞奴と同じだが、 芸妓として早くから名を成した貞奴に対して、花子はずいぶん苦労したようだ。旅芸人から舞妓、芸者、 結婚離婚を繰り返した後、30代半ばでヨーロッパに渡ってようやく開花した。 そして、ロダンのモデルとしてもてはやされるも、 晩年は岐阜にいた妹の元でひっそりと過ごしたのである。 ロダンと言うと、“考える人”があまりにも有名だが、私には“カレー市民”が馴染み深い。 カレーを食する市民ではない。イングランドとの百年戦争を戦っていたフランスの町カレーで、 1346年、その南のクレシーがイングランド軍に敗れた後に包囲され、 人身御供として町の有力者6人を差し出す要求に対して、 屈辱的な姿で他の市民を救った6人の勇者の姿である。 もちろん、ロダンの創造力による死に直面した6人の苦悩と絶望の造形だ。 原題は、Les Bourgeois de Calais。 勇者像そのものは、実際の人間より大きく作られているが、よく見ると、 手足が不自然により大きく作られている。 下の写真はスタンフォード大学の野外展示。
私は、スタンフォード大学正面に何気なく置かれているこれらの像が、
上野国立西洋美術館にあるものと同じだと思っていた。
今回調べてみると、鋳型から12の完成品が作られ、上野にあるのはそれらの9番目。
スタンフォードにあるのは、試作品だと知った。 ロダンの花子像も、ハラキリなどの上演でその鬼気迫る死の直前の表情に魅せられたものである。 そのアンバランスな造形は、新世紀エヴァンゲリオンなどにも影響を及ぼしていると思う。 前日の雪、届かなかった WiFi シグナル。様々な要因が重なって思わぬ勉強をした。 世の中、知らないことでいっぱいだ。 ⇒感想編 はこちら
【飯野謙次】
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Copyright©2002-2024 Association for the Study of Failure |