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アメリカ機械工学会とエンターテーメント工学

 2011年のアメリカ機械工学会(ASME)、設計工学国際会議(IDETC)に参加した私は、 自分の発表が大事なのはもちろんだが、あちこちのセッションに顔を出して世の動向を探ることにしている。 このとき、Entertainment Engineering (エンターテーメント工学)と題したパネルがあったので出てみたが、 その時座長をしていたカーネギーメロン大の John Wesner と知己を得ることになった。
 その時にパネリストだった、ディズニーアトラクションやシルク・ド・ソレイユ舞台装置の設計者から学んだことは、 失敗年鑑2007: エキスポランド、ジェットコースター事故のイントロに記した。 学んでばかりいては申し訳ない。自分も何かを提供しようと、 今年の同会議参加は John の Entertainment Engineering セッションに論文を投稿した。

 今年のASME IDETCは、オレゴン州ポートランドで開催された。グーグルマップで緯度を比べてみると、ちょうど北海道本島北端の宗谷岬の辺りである。 ASME の設計工学委員会は、その国際会議を人気スポットと人口の少ない町でうまく交互に開催している。 ポートランドは田舎系、来年は8月17日から20日、ナイヤガラの滝近くのニューヨーク州バッファローが決定している。
 私は自分の論文の発表だけと思っていたら、突然 DFMLC (Design for Manufacturing and Life Cycle Engineering, 生産性設計とライフサイクル工学)委員会から、 "Design for Mass Customization and Design for Service" の座長に任命された。 2010年、2011年と Design for Service (保守性設計)に関する論文を続けざまに発表したから無理もないか。
 座長の仕事はこういった会議の場合、発表者の時間管理と時間が余ったときに気の効いた質問を投げることだ。 スケジュール表をにらみながら、20分おきにあちらの会場、こちらの会場と渡り歩く参加者もいるから至極当然だろう。
 失敗学会では第一回年次大会で持ち時間を大きくオーバーする講演者がおられた。 しかもどうやらエライ人らしく、途中で割って入ることもできなく閉口した。こうなってくると、どんなに立派な内容であろうと、 聴衆は話を覚えていないものだ。人の講演を聞いて頭に残るのは、全体的な印象かせいぜい1つか2つの論点。 人前で話すときはこれを是非覚えておきたい。

 さて、エンターテーメント工学である。おりしも、2011年の同会議では、シルク・ド・ソレイユの人気ショー "KÀ" の舞台装置についてのプレゼンを見たのだが、 今年、6月29日、そのショー KÀ 最後の戦闘シーンで突然何かが外れたのか、31歳の女性演者が30メートル落下、死亡した。 事故原因については、今も OSHA (Occupational Safety and Health Administration、労働安全衛生管理局)が調査中である。 このニュースの映像からセッションを始めた。アメリカでも、工学者は忙しくてあまりテレビを見ていないのは日本と同じだ。
 この日用意してあった発表は、はエキスポランド事故の分析から得られた知見、さらにその後の考察を紹介したものだった。 これは日本で発生した事故である。しかし聴衆は ASME だったため、世界的な“乗り物”の歴史から紹介した。 世に初めてブランコの域を超えた娯楽用の機械ができたのは17世紀のことである。 その後、どんどん大型化したが、ここのところ、アメリカでは毎年数人が乗り物事故でなくなっている。 このこと自体少なからず聴衆を驚かせたようだった。
 そして、エンターテーメント工学と通常の機械工学の決定的な違いについて言及した。曰く、
“機械工学では、使用者が安全に感じるよう、そして確実に安全であるよう機械を設計する。 エンターテーメント工学では、確実に安全であるよう機械を設計するのは同じであるが、 使用者に危険やスリルを味わわせることも重要である”

 人はわがままな生き物である。楽しいこともしたいが安全も保障してもらいたい。 エンターテーメント産業は、そのわがままな人を相手に商売をしている。 だから、まるで相反するような二つのものを提供して満足を得てもらえなければ産業の意味はない。

【飯野謙次】

 本記事のASME 発表論文の草稿は、ここにあります。その他、これまでの東京大学・失敗学会共同研究の足跡も置いてあります。
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