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春合宿 2014 報告、第一報

5月23日(金)、24日(土)、25日(日)
九州地方訪問


5/23(金)
   [オプショナル] 平和公園、長崎原爆資料館(200円)
   13:30 長崎駅前集合
   14:00 三菱重工業株式会社 長崎造船所史料館訪問
   15:30 グラバー園(600円)、大浦天主堂(300円)見学
   17:45 メルカつきまち 飯野副会長講演『パロマ湯沸器事故はなぜ起こったか』
   19:40 懇談会:花好月園(3,000円)

5/24(土)
   [オプショナル] 掃海母艦うらが乗船
   10:10 常盤桟橋集合軍艦島ツアー
   13:15 昼食、レッケルでトルコライス
   15:30 吉野ヶ里
   18:40 武雄市図書館訪問
   19:30 懇談会:すし秀(2,000円+飲物)

5/25(日)
   08:00 武雄温泉駅発
   09:20 呼子、自由行動(神秘の洞窟・七ツ釜探検など)昼食
   14:10 大宰府天満宮 参詣
   16:15 博多着、16:30 福岡空港着

参加費用
全行程参加 ・・・・・・・・・・23,000円
2日参加(バス乗車)・・・・19,000円
2日参加(バス乗車なし)・12,000円
24、25日バス代金、国内旅行保険、軍艦島ツアー、吉野ヶ里入園料込。
参加費に含まれないもの
往路:長崎までの交通費、長崎自由行動時の施設入園料、宿泊代、食費、
懇談会費、復路:福岡からの交通費

参加者
飯野謙次、福本喜枝、木田一郎、岩崎雅昭、三田 薫、岡田敏明、高橋おさむ、
石井健児、薄 知香志、佐々木 英三、佐々正光、小田烈弘、木村経世、北村兼一
[ 一部参加 ] 佐藤公一、中尾政之、渕上高義、志賀 眞


 失敗学会イベントでは春合宿が一番楽しい。旅行半分、勉強半分、食事に温泉に、未見の風物を見むと大いに欲張りな行事である。何よりもしかし大切なのは、過去の失敗、あるいは失敗といえないまでも歴史が刻んだ先人の足跡、それらをこの目で見、自分の脳みそで考えをめぐらし、同じ目的を持った人たちと話し合ってその知見と知恵を自分の奥深くに保管することである。
 人生は判断と試行の繰り返しである。この時、少しでも後で後悔しないような判断をしたい。自分の論理や感情で考え抜くのも一つのやり方だが、多くの知見と他人の失敗情報を保有していると、正しい判断に近い結論を導けることが多い。この時、具体的知見に道筋を導いてもらえるのは簡単な判断だ。しかし大いに迷った時は具体的知見がないときである。この場合、自分の思考を導くのがもっと深いところにある知恵や情動だ。情動を磨くことはまずできないが、知恵を磨くことは自分の努力次第。私たちは日本を旅し、知見を広め、いざというとき正しい判断ができるよう、知恵を鍛えている。



 今年はかねてから要望の高かった九州行きがようやく実現した。みんな三々五々集まることがわかっていたので集合は 13:30に長崎駅とした。私は安い飛行機の往復チケットを工面し、集合前に平和公園、長崎原爆資料館を訪ねることができた。
 1945年8月6日、広島に落とされたウラン原爆(通称 Little Boy)は、TNT換算(爆弾の放出エネルギーをトリニトロトルエンの質量に換算)で約1万5千トンだったのに対し、3日後の8月9日に長崎に落とされたプルトニウム原爆(通称 Fat Man)はTNT換算約2万2千トンだった。当時の長崎市は人口約24万人。死者は 73,884人、負傷者74,909人(1950年、長崎市原爆資料保存委員会調査)とあった。人類の歴史の汚点である。どうすればこの悲惨な殺戮を回避できたのか、私たちは未だに解答を見つけられずに右往左往しているようだ。

 最初の訪問は三菱重工長崎造船所史料館。失敗学会を立ち上げて間もない2003年2月にこの史料館を初めて訪ねて以来であった。ここの展示には日本最古の工作機械や国産第1号陸用蒸気タービンなど、日本の工業化の歴史上重要な遺産が展示されている。もちろん、私たちのお目当ては1970年10月24日に発生したタービンローター事故の残骸を見ることであった。
 失敗学で最初に学ぶことが多いこの事故では、ローターが回転試験で速度上昇中、3,450rpmで4つの破片に破断、4方に飛散して死者4名、負傷者61名を出した。破片と言ってもローターは50トンあったので、それぞれがおよそ10トン前後の鉄の塊であった。その一つが山に飛んで1.5キロ先の標高200メートルの地点に落下、一つは約900メートル先の海中に、一つは床に突き刺さり、残る一個が工場の床を走って人や機械をなぎ倒した。
 この残骸を展示していることが、すなわち失敗学の精神である。事故の反省を後世に伝えるのにこれほど効果的なものはない。しかし死者も出た事故だったので、その残骸を展示する決断は並大抵のことではない。議論の末に次々と取り壊しが決まった東日本大震災の遺構を考えても苦渋の決断であったことがわかる。ただし震災遺構の場合は人々の目に付くところにあり、長崎造船所史料館のローター破片も、日航安全啓発センターのジャンボ機残骸も簡単に目に付くところにはなく、わざわざ訪ねて初めて目にすることができるところが大きな違いだ。一概に比較してどうのこうのとは言えない。
 美しい煉瓦の入り口で、最初の案内をしてくださったお嬢さんに記念撮影をお願いし、私たちは史料館を後にした。



 一日目の残りは、大浦天主堂とグラバー園訪問。どちらも江戸幕末の建築で、当時の外国資本の豊かさを見せ付けられる感じだ。

 この日の締めくくりは私の講演『パロマ湯沸器事故はなぜ起こったか』。消費者庁の消費者安全委員会に専門委員としてこの事故の調査に加わった体験を語った。それまでは、なぜ同じ不正改造を全国のサービスマンが思いついたか謎だった。また、サービスマンによっては、顧客のためと信じてその改造を行っていたこともわかった。禁じ手は、人の意識に頼って禁じていたのでは限界がある。それができない仕組みを作らなければ解決にならない。これも失敗学の教えである。
(つづく)

以下は、早速に送ってくださった佐々さんの感想です。
  1. 今回の見学などにより、先人たちが残してくれた遺跡、資料などの見直しをしていかねばならないと痛切に感じました。
    1. 三菱重工業 長崎造船所の原爆被害については、赤煉瓦の壁などは、ほとんど損傷を受けていないように感じられました。これは、現在の鉄骨や、コンクリートなどの建材の強度から見ても、遜色がないと思います。
    2. また、軍艦島『端島』は、1870年(明治3年)に、石炭採掘のため開坑され、その後、1974年(昭和49年)に閉山されました。この間、産業に貢献してきたのです。
       当時の労働条件は、相当過酷であったと想定されますが、坑員の給与は、他産業比高く、解雇されることを忌避するような秩序にあったと言われています。
       偶々、NHK総合テレビで6月4日に、【探検バクモン「伝説の廃虚 その名は軍艦島」】が放送され、見学時に見ることができなかった非公開部分も見ることができました。
       最近の世界情勢では、中東の産油国を巻き込んだ戦争が、一触即発の危機状態にあると思われます。原発の停止に伴い、日本の電力事情は発電用資源として石油・LNGなどの化石燃料に頼る結果となっています。こんな中、発電用石炭(一般炭)の価格が長期にわたり低迷しているとの新聞記事が掲載されています(2019.6.19 日経(朝刊))。現在の世界状況が続けば、石油の高騰とともに、石炭価格も影響されます。ただ、採算悪化により石炭会社が鉱山開発を中止することも想定されるのです。
       シェールガス・シェールオイルなどの輸入や、日本国内での採掘も遅れており、国内の閉山した炭鉱の再開発が必要となるかもしれません。再開発には、先人たちの鉱山に対する知識やノウハウが生かされるものと思います。この場合には、最新の機械を装備して開発されるものと信じております。原発は、世界のすべての科学者が絶対安全を保障し、日本の国民がこれに納得するまでは、再稼動すべきではないと思います(あくまで、個人的見解です)。
    3. また、他のテレビ番組では、災害時の液状化対策として、過去には、橋脚を木の杭で補強していたことがあり、杭の状況を見ると、腐食せずに十分に補強の役目を果たしていたことが報道されていました。
    4. 吉野ヶ里歴史公園は、我が国弥生時代最大規模の環壕集落であることが確認されているとのこと。
  2. ガス湯沸器事故については、住環境の変化を、メーカーが見過ごしてしまったことも、要因の一つではないかと想定されます。すなわち、アパートやマンション、戸建て住宅などは、冷暖房を完備してきており、結果として機密性が高くなり、外気の取入れのためには、住人が対処しなければならなくなった。古い住居では、隙間風が勝手に入ってくる住居が多かった。これら、社会環境の変化にメーカーは万全の注意を払う必要があります。

     これらのことからも、過去に取り入れられていた、自然環境を生かした知恵をさらに活用していくことが必要となってきているものと思います。

以上 2014年 6月19日 佐々 正光
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