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検察審査会、東電旧経営陣3名に
起訴相当、1名に不起訴不当の判断

 2014年7月31日、検察審査会は東京電力元会長と元副社長2名の3名を“起訴相当”、元常務1名を“不起訴不当”、別の元副社長2名を“不起訴は妥当”とする議決を発表した。この対象は福島県民ら1,324名による福島原発告訴団(団長、武藤類子)により、2012年6月11日に(後にこの告訴団の活動は全国に広がり、2012年11月15日の第二次告訴団は14,716人に膨れ上がっていた)業務上過失致傷容疑などで福島地方検察庁に告訴されていた33名のうちの東京電力の主要幹部6名であった。最初に告訴された33名には、この6名のほか、他の東京電力関係者、さらに規制側の原子力安全委員会、原子力安全・保安院、原子力委員会幹部や、文部科学省、福島県の学者らアドバイザー的立場の人も含まれていた。また他の市民団体らは元首相をも含め、告訴対象は全部で42名だった。
 福島地方検察庁検察はこれら告訴を東京電力本社のある東京に2013年9月9日移送、東京地方検察庁が即日、3.11の地震、津波は想定外だったと不起訴処分にしていた。これを不服とした福島原発告訴団が、2013年10月16日に東京検察審査会に審査を求めていたのに対して、今回の議決が発表された。

平成25年東京第五検察審査会審査事件(申立)第11号、同第12号に関する議決

 失敗学会では、先の2回の東京フォーラム(2月22日フォーラム115[案内報告]、6月21日フォーラム118[案内報告])において、『東電等の刑事責任』を討論、検討してきた。

 次回は9月27日、フォーラム120でこの検察審査会の議決書をどう読むかと、技術的に事故回避は可能だったことについて解説します。
 詳しい予定はここをクリック

 これら検討会は、NPOおかやま人権研修センターの人権21に掲載された失敗学会監事古川元晴さんの論文を受け、失敗学会理事吉岡律夫さんらの尽力により実現したものだ。

古川論文: 3・11原発過酷事故と東電等の刑事責任
            ―「未知の危険」と「危惧感説」の再評価―


 今後は東京地方検索庁がどういう結論を出すか、大いに注目される。

 以下は、『概ね、(議決書は)フォーラムの結論と合致している』という吉岡さんによる、失敗学フォーラム結論の要旨(6月フォーラム報告より再掲)と、今回の検察審査会議決書要旨の比較である。

1)予見可能性(地震発生確率の問題)
地震調査研究推進本部は「福島沖の更に沖合を含む日本海溝沿いのどこかで、M8.2の大地震が起きる確率が20%である」と示した。この見解を基に、東電は、平成20年「福島原発においては15.7mの津波が予測される」という結果を得た。 これは、議決書と同一である。また、議決書はこの見解が無視された経緯についても調べ、過失があったとしている。
なお、実際に2011.3.11に起きた地震の震源は宮城沖を震源としているが、非常に広い範囲が同時に滑ったとされており、地震学的には、上記予測とは地震が起きた仕組みが異なる。 議決書はこれには触れていない。

2)結果回避可能性
電源対策や浸水対策をすれば、福島事故は防げた。 議決書も同様のことを述べている。
なお議決書は予見可能性が成り立つとした上で、回避可能性を述べているが、次節に予見可能性が成立しない場合も書いている。

3)回避措置重心説
回避措置重心説とは、不確実であっても科学的な根拠のある「未知の危険」につき、予見可能性からではなく、「社会的に許された危険か、許されていない危険か」によって回避措置をとるべきか否かを判断する学説である。事故の確率予測値の如何という次元の判断とは全く異なる判断方法である。 議決書はこの考え方も示していて、検察が不起訴とした際の「予見可能性が無かった」という言い訳の穴を塞ごうとしたものと思われる。

4)専門家の注意義務
一部の判例によれば「万全の安全を保障すべき事業者は、万が一にも結果を発生させることがないよう、万全の措置をとる義務がある」とされており、原発の設計・運転・規制に関わる関係者は高度な注意義務が課せられている。 議決書は冒頭に「電力会社には高度な注意義務がある」としており、この項目を最重視している。

5)条理による判断
科学的な事故発生確率というのはあくまでも専門家による科学的な判断方法であり、それが社会的に許容され得るかどうかは、その科学的な判断を尊重しつつも、最終的には「条理つまり一般人の常識や社会の要請の方が上位にある」ので、その判断によって決めるというのが法律的な考えである。 議決書の最後に「安全性に疑問があれば原発を止めるべき」だし、「安全だろうという雰囲気で原発を運転する規制当局・電力会社の態度は、一般常識からずれている」と批判している。

 私たちの次の課題は『技術的対策は可能であった』ということを証明することです。
 失敗学会では引き続き、この問題に関する討論と情報発信を継続します。

2014-08-02(飯野謙次)
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