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シリコンバレーで火事
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2004年5月29日California州Alviso市― 失敗学会員である筆者が
土曜の午後,仕事の合間に早い夕食を取ろうと車を走らせていると,
青いカルフォルニアの空にモクモクと黄色い煙が立ち昇っていた.
おりしもNASA航空センターではこの週末,エアショーの真っ只中.
事故があったのかと思ったが,そのような爆発音も聞いていない.
現場に到着してみると,オフィス街 (といっても,大手町
とは趣が異なり,ビルが点在している) とサンフランシスコ湾南端の塩田・
ごみ集積所との間の草原が燃えていた.近くの道は通行止め.到着したばかりの
消防車から降りた消防士と警察が相談しているのが遠目に見えた.この火事の
原因は現時点で不明.
失敗学会米国事務局があるカルフォルニア州では,
その長い乾季の間,火事の確率が非常に高くなる.写真からもわかるように
一面の草原は枯草に覆われ,古い家屋では木製屋根瓦 (瓦というには
余りにお粗末な長さ50cm,幅15cm 程度の板切れで,厚さが取り付け部5mm
から下端15mm程度.) が延焼の元となる.
アメリカでは後約1ヶ月で独立記念日を迎えるが,
多くの中国移民による旧正月の爆竹同様,この日は花火による火災が心配される.
乾燥地帯となるカルフォルニアでは,花火はディズニーランドなど,
きっちり管理されたもののみが許可され,一般には禁止されている.それでも
花火を上げる輩は,許可された地域からこっそり買ってきているのが現状だ.
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図1 North 1st St. から見える煙
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図2 草原から上がる炎
図3 消火に向かう化学消防車
この他にもカルフォルニアには,日本人にはなじみのないルールが
ある.たとえば,駐車は『頭から』.特に草花の植え込みを設けたアパートやモーテル
ではこのルールを徹底しており,守らないと罰金を科せられることがある.このルールも
乾燥した枯れ草が,熱い排気ガスを受けて発火するのを防ぐという意味がある.罰金を
払う羽目になるのは教習所で『お尻から』を叩き込まれた日本人か中国人である.
火事には直接関係ないが,ところ変われば気をつけなければならない
駐車のルールがある.スーパーに買い物に来て,ゲームボーイに興じている子供が
「車で待っている」と言ったとしよう.このとき,13歳以下の子供だけを車に残して
スーパーに入ると,『虐待』で親は逮捕される.昨年は,日本からの旅行者
がこのルールを知らずに逮捕されてニュースになった.
このとき,「知らなかった」では済まされないのは当然だ.日本の
居酒屋で「お通し」を頼んでないとアメリカ人がいきり立っても結局払わされるのと同じだ.
筆者が子供のころには 「火の用心!」と近所を練り歩く人がいた.
今でもところによってはこの慣習が継続されている.確かに効果はあるようだがうっかり
火災の根絶はできていない.失敗学では,管理の強化よりも失敗しない仕組みの
確立を謳っている.日本でも,一軒家に火災報知器の設置が義務づけられるようになった.
カルフォルニアでは,さらに自動散水器の設置が義務づけられて久しい.ところ変れば、
ルールも変わる. (いいの・けんじ)
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