事例名称 |
材質の差によるプーリー・シャフト溶接部近くの熱硬化割れ |
代表図 |
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事例発生場所 |
工場生産ライン |
事例概要 |
ベルト駆動用の大型プーリーを作るために、溶接構造のローラーを採用した。大型プーリーは図2に示すように、シャフト部とディスク部、およびロール内面とディスク部をそれぞれ溶接し、ロール外周面を後から切削して作る。ところが、ディスクをシャフトに溶接したところ、シャフトのディスク溶接部近くに割れが生じてしまった。S25CのディスクにS45C(カーボン濃度が0.45%)のシャフトを溶接したので、シャフトに熱硬化が発生したためである。対策として、ディスクと溶接する前に予熱を行い、熱硬化を低減した。 |
事象 |
溶接構造のローラーで、シャフト部とディスク部を溶接したところ、シャフトのディスク溶接部近くに割れが生じた。 |
経過 |
大径のプーリーは、シャフトの回転をディスクを介してローラーに伝える溶接構造となる。当初シャフトはS25C(カーボン濃度が0.25%)程度のSS(構造鋼)材であった。軸の強度を大きくするために、材質をS45Cに変更した。ディスクをシャフトに溶接したところ、シャフトのディスク溶接近くに割れが生じた。 |
原因 |
カーボン濃度の高いS45Cのシャフトに溶接時の熱による熱硬化が発生し、割れに至った。 |
対策 |
ディスク溶接前にシャフトの予熱を行い、熱硬化を低減した。 |
知識化 |
高級な材料が必ずしも強いとは限らない。どうしてもシャフトの表面を硬くしたい場合は、低炭素鋼を溶接した後、浸炭して表面だけ炭素量を多くしてから高周波焼入れすると良い。 |
背景 |
溶接では、冷却速度が大きいと軸の母材部分に焼入れするのと同じ現象が生じ、その部分(熱影響部と呼ぶ)が脆くなるだけでなく、焼入れしない部分との境界に残留応力が発生する。 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、調査・検討の不足、事前検討不足、自作・購入の誤判断、環境変化への対応不良、使用環境変化、人為的条件変化、設計変更、不良現象、機械現象、継手、溶接継手、熱、材料的要因、脆性、割れ発生・成長
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情報源 |
創造設計エンジンDB
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マルチメディアファイル |
図2.シャフトに熱硬化割れが発生した
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分野 |
機械
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データ作成者 |
張田吉昭 (有限会社フローネット)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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