失敗事例

事例名称 不適切な部品による貨物車タンクの破損
代表図
事例発生日付 1996年02月07日
事例発生地 米国テネシー州スィートウォーター市
事例発生場所 Nortfolk Southern 列車の線路上
事例概要 緊急用のブレーキが不意に作動してタンクが裂け、二硫化炭素が漏れ出した。
事象 列車待合のため、貨物列車が線路の中央で一時停車し、発車したところ、緊急用のブレーキが不意に作動して、タンクの 1 つが真中で 2 つに裂け、発火性のある有毒物質である二硫化炭素が 8000 ガロン漏れ出した。
経過 別の貨物列車が側線に入るのを待つため貨物列車が線路の中央で一時停車し、発車したところ、緊急用のブレーキが不意に作動し、列車は約 100m 走行して停車した。車掌が降りて貨物車を調べたことろ、タンクの 1 つである GATX 92414 が真中で 2 つに裂け、発火性のある有毒物質である二硫化炭素が 8000 ガロン漏れ出していた。
原因 GATX 92414 の改造設計案に反して、タンク底面外部にタンクの長さに沿って溶接されたはずの 2 本の連続した補強筋は、タンクの両端まで届いていなかった。3 つの補強筋は全て連続しておらず、タンク中央にある水溜め板付近で切れていた。また、3 つの補強筋は全て両端が溶接されているのみであった。溶接部に負担がかかり、タンクの中央に亀裂が入った。タンクの素材である鉄が脆弱であったため、亀裂が急激に拡大し、タンクが真二つに割れた。
対処 付近に住む住民 500 人が一時避難した。
対策 National Transportation Safety Board によって事故の原因が調査された。1996 年 9 月に運用中の 97 台の GATX 92414 の運用を停止し、検査を行った。14 台に事故車と同様な改造が行われ、9 台から溶接部に亀裂が見つかった。1997 年 12 月にこれら 23 台が廃棄処分された。1997 年 6 月に GATX 92414 の製造元である A社が 1969 年から 1982 年までに製造した全貨物車 18427 台の検査が義務付けられ、発見された全ての亀裂が修理された。
背景 GATX 92414 は 1969 年に製造された。1974 年の規格変更を受けて、1990 年に GATX 92414 の改造が計画された。タンク底面外部にタンクの長さに沿って 2 本の連続した補強筋と、タンクの両端から中央までに 2 本の連続していない補強筋が溶接された。2 本の連続した補強筋は負荷の大半を支える設計だった。また、タンクの底部にタンクの長さに沿って鉄板が溶接され、鉄板は2 本の連続した補強筋にも溶接される設計だった。
シナリオ
主シナリオ 無知、伝承無視、誤判断、狭い視野、発見遅れ、組織運営不良、運営の硬直化、審査手順不備、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、計画・設計、計画不良、不良現象、機械現象、材料的要因、破損、劣化、脆性、破損、破壊・損傷、衝撃、破損、破壊・損傷、材料強度不足、破断、不良現象、機械現象、過負荷、応力集中、破損、破壊・損傷、割れ発生・成長
情報源 http://www.ntsb.gov/Publictn/1998/HZB9802.htm
死者数 0
負傷者数 1
物的被害 貨物車が破損した。
分野 機械
データ作成者 ケイコオオクシ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)