事例名称 |
爆発によるロシア原子力潜水艦クルスク沈没事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年08月12日 |
事例発生地 |
ロシア、セベロモルスク軍港の沖合い140kmの地点 |
事例発生場所 |
水深108mの海底 |
事例概要 |
2000年8月12日、バレンツ海での演習に参加していたロシアの原子力潜水艦クルスクは通信を途絶え、翌日水深108mの海底で発見された。悪天候と脱出用ハッチの破損により救命作業が難航。潜水艦内全域に浸水が及び、乗組員全員死亡。二度の爆発音がノルウェーで記録されており、内部爆発が生じたといわれているが、はっきりとした原因は不明。 |
事象 |
2000年8月12日に、ロシアの原子力潜水艦クルスクはバレンツ海での演習に参加したが、通信が途絶えた。翌日水深108mの海底で発見されたが、救出作業が難航し、9日後にやっと後部脱出用ハッチを開けることができたが、浸水が全域に及んでおり、生存者はいなかった。二度の爆発音が探知されていたが、はっきりとした事故の原因は不明のままである。事故当初は事故発生日は13日である等、あやふやな情報を発表していた。 |
経過 |
2000年8月12日に、ロシアの原子力潜水艦クルスクはバレンツ海での演習に参加。その後通信が途絶えた。ロシア時間の午前11:29にノルウェーの地震研究所やその海域にいた他国の潜水艦などが爆発を探知しており、その後11:31に2度目の爆発が探知されている。11:44に3度目の爆発を探知したという報告もある。翌日水深108mの海底で発見されたが、悪天候、脱出用ハッチの破損などのため救出作業が難航し、16日になって他国の援助を受け入れた。21日には後部脱出用ハッチが開かれたが、潜水艦内全域に浸水が及んでいて、生存者がいないことが発見された。その後ノルウェーが周辺の海水を分析しているが、放射能漏れはなしと報告されている。 |
原因 |
ロシア側は、前方部分が破損しているため、他国の潜水艦または大型戦艦等との衝突説をあげているが、証拠はなし。その反面、魚雷発射セクション内部での爆発が発生し、浸水した可能性も認めている。また、第二次世界大戦時に敷設された浮遊機雷にふれた可能性も述べている。さらに、他の潜水艦もしくは戦艦などと衝突した後、海底に激突し、爆発が起こったという説もあがっている。アメリカやイギリスは魚雷室で爆発が生じた可能性が高いと見ており、それぞれ自国の潜水艦がクルスクと接触した可能性は無いとしている。また、発射実験の海域にまぎれ込んで撃沈されたのではないかという説もでている。2002年3月のBBCの記事によると、ロシアの調査団は、魚雷の爆発が事故の原因であると発表している。 |
対処 |
事故当初は、ロシア側は他国からの救済援助は必要なしとしていたが、悪天候などにより作業が難航し、16日にプーチン大統領は当時の米国大統領であったクリントン氏との会話の後、他国からの援助を受け入れるよう命令を下した。19日にイギリスからの救援隊が到着し、21日にノルウェーとイギリスの合同作業で後部脱出用ハッチを開くことができた。 |
知識化 |
自分の都合で事故の情報を偽って報告したり、正しい対策や事故原因がつかめなくなり、また偽りはいずれ浮上する。また、事故が起きた時点ですぐに最善の救助を行わなければ、被害が大きくなる。 |
背景 |
原因がはっきりと断定されていないので不明 |
後日談 |
ロシアとアメリカの企業のノルウェー支社Halliburtonが契約費用580万ドルで合同で引き上げ作業に取り掛かることになり、作業は10月20日から始まった。船体に8つの穴を開けてそこからダイバーが中に入るという計画であったが、内部の破壊度がひどいことや悪天候など危険が多すぎるため、11月7日にこの作業は打ち切られた。12人の遺体、被害者が書いた手記が引き上げられた。 |
よもやま話 |
この事故が起きた当日、プーチン大統領は黒海のソチで休暇をとっており、その後CIS諸国非公式首脳会議に出席のためウクライナのヤルタに行き、その後休暇を続け、救助作業が難航しているにもかかわらず他国の援助を拒否したり、すぐにモスクワに戻らなかったため、強い批判を受けた。 |
当事者ヒアリング |
遺体と一緒に見つかった手記には、「この場所には23名いるが、火災からの二酸化炭素が充満して気分がわるい。脱出するにも減圧に耐えられない。」などが書かれていた。8月12日の1時頃書かれたものらしい。 |
データベース登録の 動機 |
この事故の発生後、テレビカメラが救命作業の実況中継を行い、世界中の人々がテレビの前で中の人々が救われるのを願っていたという、印象の強いニュースであったため。 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、企画不良、戦略・企画不良、発火、爆発、衝撃、破断、塩水浸入
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情報源 |
http://www.museum.navy.ru/kursk-e.htm
http://news.bbc.co.uk/hi/english/static/in_depth/europe/2000 /russian_sub/inside.stm
http://www.digitalfact.co.jp/missile/missile-info/kursk/mi013.htm
http://cnn.co.jp/interactive/world/0107/kursk/content.html
http://news.bbc.co.uk/hi/english/in_depth/europe/2000 /russian_sub/default.stm
http://www.cnn.com/SPECIALS/2000/submarine/
http://www.guardian.co.uk/graphic/0,5812,355564,00.html
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死者数 |
118 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
原子力潜水艦1基 |
被害金額 |
被害者の家族に対して、各家族120回分の給与、扶養家族一名につき25回分の給与、更に諸費用などとして222万ルーブルが各家族に支払われる。 |
全経済損失 |
引き上げ作業の契約金580万ドル他 |
社会への影響 |
放射能もれが非常に心配され、人々を脅かしている。 |
分野 |
機械
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データ作成者 |
タカミハマダニ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
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