失敗事例

事例名称 構造欠陥と老朽化によるロシア・9階建アパートの崩壊
代表図
事例発生日付 1998年06月03日
事例発生地 ロシア、セントペテルスブルグ
事例発生場所 9階建て公共アパート
事例概要 ロシアのセントペテルスブルグで、老朽化した9階建て公共アパートにて、最上階付近のひび割れから崩壊が始まり、次々と階を襲い、アパートは全壊した。ひび割れ時点に避難警報が出され、多くの住民は避難していたが、1人が死亡、4人負傷の惨事となってしまった。また400人以上の元住民が住む家を失ってしまった。テロによる爆発やガス漏れの疑いもあったが、ソビエト時代に建設されたアパートの基礎構造に何らかの欠陥があり、その老朽化が崩壊の原因とされた。
事象 2002年6月4日、ロシアのセントペテルスブルグで、9階建て公共労働者アパートの上層3階付近から、突然ひび割れが始まった。駆け付けた救助隊の指示により避難警報が出され、上層住民約55人は救助隊に助けられ避難した。しかし、崩壊速度は早く、一時間後には、爆発音と共に上層3階の床が突然崩れ落ち、廻りの構造鉄筋枠と外壁が欠壊、物凄い轟音と凄まじい土煙をあげ、次々と勢いを増しながら階を襲って崩壊していった。崩壊と共に途中数カ所から爆発がおこり、火災と黒煙、瓦礫の轟々たる粉塵が周辺の車や街路樹を襲い付近一帯は凄まじい惨状だった。逃げ遅れた1人が窒息により死亡、4人が窒息や切傷等で負傷。また400人以上の元住民が住む家を失ってしまった。
経過 2002年6月4日夜9時頃、セントペテルスブルグの413人が住居としている9階建ての公共労働者アパートで、最上階から7階付近にかけて、突然ひび割れ始めてきた。ひび割れは、外壁から内壁にかけての大きいものであり、救急隊は崩壊の徴候と判断、避難警報を出した。扉が開かなくなり部屋に閉じ込められた上層階住民約55人は、救助隊に助けられ、無事脱出。約1時間後の10時20分、まず上層3階の床が崩れ落ち、構造部の鉄筋枠が欠壊、凄まじい爆発音と共に巨大な煙りをあげ、凄まじい勢いで次々と崩れ落ちていった。逃げ送れて瓦礫の中に閉じ込められた住民は救助隊によって助けだされたが、窒息によって1人死亡。4人が窒息や切傷等で負傷。元住民400人以上が住む家を失うという惨事になってしまった。テロによる爆発やガス漏れの可能性も追求されたが、ロシアでは、ソビエト時代の公共アパート棟が多く崩壊している現状からみて、アパートの老朽化した基礎構造に原因があるとみている
原因 ロシアではテロによるビルやアパートの爆発が相次いでいるため、爆発装置が仕掛けられたのではないか、朝から行っていた水道パイプ整備の何らかの不手際ではないか、ガス漏れではないか、という憶測がたった。しかし、崩壊が上層階のひび割れから始まり構造枠が欠壊、その重さに耐えられず、次々と階を襲っていった現状から自己崩壊と判断。また、過去にも4つの老朽化アパートがセントペテルスブルグ内で崩壊している現状から判断し、ソビエト時代に建設された公共アパートの基礎構造に何らかの欠陥があり、その老朽化が崩壊の原因とされた。
対処 救急隊は、ひび割れが始まった時点で、素早く現場へ駆け付け、ひび割れはアパート崩壊の徴候と判断し、直ちに住民に避難警報を出している。ドアが開かなくなり閉じ込められた住民をはしご車で助けるなど適切な処置により、上層3階部付近住民約55人を優先に、次々と住民を避難させている。しかし、崩壊は早く、一時間以内にアパートは全壊。逃げ遅れて行方不明となった7人を数時間で救出したが、1人死亡、4人負傷の惨事は防ぐ事ができなかった。ペテルスブルグ市長は、住む家を失った元住民約400人に直ちに新しいアパートを提供することをテレビで公約。それまでは、住民は近くの学校で仮に住む事になった、
対策 ロシアでは、このように老朽化したソビエト時代のビルやアパート棟が数多く崩壊している中、政府はソビエト時代建築の基礎構造に欠陥があるとわかっていながらも、その数の多さから、対処を行えない状態でいた。しかし、始めて犠牲者が出た事で、これをこのまま放置できない事を認識。新しいアパートの建設、また老朽化アパートの修繕にかかる莫大な費用を厳しい予算内から算出する事を今後の対策としている。諸外国からの借り入れも対応中である。
知識化 旧ロシア帝国の都セントペテルスブルグでは、アパートやビルだけではなく、道路、橋梁、また遺産的価値ある建造物も老朽化し、放置された状態である。政府は、この公共建造物の修繕を真剣に考える必要がある。
背景 ロシアには、老朽化により、基礎構造を修繕する必要性のあるソビエト時代のアパートが数多くある。セントペテルスブルグばかりでなくモスクワでも崩壊が相次いでいる。莫大な修繕費が必要であり、その算出が困難と言われているが、豪華なショッピングモールや美しいホテルは次々に建造されている。
後日談 翌5月に、アメリカ、ブッシュ大統領のロシア訪問に備えて、米視察団がセントペテルスブルグを訪れ、道路や建築物の状況を視察。テロ対策、修繕等の指示を行っている。
よもやま話 ロシアでは、テロによるビルやアパートの爆発も多発しており、前日にも他の市でアパートに爆弾装置が発見されたばかりであった。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、組織運営不良、運営の硬直化、品管制度不備、機能不全、ハード不良、機械・装置、性能低下、コンクリートと鉄筋、破損、劣化、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
情報源 http://www.russiajournal.com/news/cnews-article.shtml?nd=8240
http://www.russiajournal.com/news/cnews-article.shtml?nd=8180
http://www.freshspb.ru/history/
http://english.peopledaily.com.cn/200206/04/eng20020604_97131.shtml
http://www.russiajournal.com/print/russia_news_8240.html
死者数 1
負傷者数 4
物的被害 9階建てアパート1棟全壊
分野 機械
データ作成者 マユミビンクス (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)