失敗事例

事例名称 スタビライザー故障によるA航空墜落事故で88名が死亡
代表図
事例発生日付 2000年01月31日
事例発生地 ロサンゼルス国際空港の北西約30Kmの太平洋上
事例発生場所 太平洋上
事例概要 2000年1月31日午後4時36分頃、メキシコのプエルトバリャルタ発サンフランシスコ経由シアトル行きA航空XX便(B型)が、ロサンゼルス国際空港の北西約30Kmの太平洋上に墜落した。 この事故で乗員5名、乗客83名、計88名全員が死亡した。事故機は経由地サンフランシスコに向かう途中であった。墜落直前、スタビライザートリムの故障のため、ロサンゼルス国際空港に緊急着陸を要請していたが、高度17000フィートから急激に高度を下げ、午後4時36分にレーダーアウトした。事故機は1992年の製造後、これまでにスタビライザートリムの故障等の大きな故障はなかったが、ボーイング社製MD80系旅客機すべての緊急点検を米航空会社に要請。 結果、スタビライザー部分に潤滑油不足や金属磨耗などが発見された。
事象 2000年1月31日メキシコのプエルトバリャルタ発サンフランシスコ経由シアトル行きA航空XX便は午後2時30分にプエルトバリャルタを離陸した。離陸後、1時間30分間は気流もよく問題ないように思われた。が、午後4時10分に尾翼の調節が困難という連絡が入り、ロスアンジェルス国際空港へ緊急着陸を要請。管制官や整備員と連絡をとっていたがその後連絡が途絶え、急降下の後、ローリングしながらロサンゼルス国際空港北西約30Kmの太平洋上に墜落(午後4時36分)。
経過 A航空XX便はメキシコのリゾート地プエルト・バラルタを午後2時30分に離陸し、サンフランシスコ経由でシアトルへ到着予定だった。サンフランシスコへ向けて高度31000フィートを飛行中に水平尾翼に問題が発生した。午後4時10分にロスアンジェルス管制官に問題発生を通知し、26000フィートまで降下した。管制官はどのような問題か尋ねたが、パイロットは膠着してしまった尾翼の問題に取り組んでいると答えている。そして20000フィートから25000フィートの間の高度内をブロックしたいと申し出、認められた。4時15分にパイロットは、高度維持が困難でロスアンジェルス国際空港へ緊急着陸を要請した。次にクルーは高度10000フィートまで降下を要求し、管制官は17000フィートまでの降下を許可した。最後の交信は、さらに低高度の許可を得ようとしたものであった。17分に許可が出たが、クルーからの応答はなかった。降下の最中、クルーはA航空の整備員にコンタクトし、問題解決を図ろうとした。問題解決のためにトリムを操作したところ大きな音がし、問題はさらに悪化。機首が下向きとなり、急降下でコントロール不能となり、ローリングしながら海に墜落した(午後4時36分)。
原因 スタビライザートリムの故障。スタビライザーのジャックスクリューが飛行中に外れてしまったため、スタビライザーの調節ができず、飛行コントロールが困難になった。
対処 機体は海中であおむけになっているように見えたが、やがて沈んでいった。墜落現場と見られるカリフォルニア州ベンチュラ郡マグー岬の近くでは、機体の破片や油膜の帯などが発見された。 沿岸警備隊などが、墜落から約4時間半たった時点で計7人の遺体を収容したが、生存者の可能性は少なかった。
対策 事故後、スタビライザーに共通の異常がある可能性が指摘されているB社製のB型系旅客機すべてを緊急点検するよう米航空会社に命じた。
知識化 メンテナンス・チェックに「慎重すぎる」という言葉はない。「事故機は1992年の製造後、これまでにスタビライザートリムの故障等の大きな故障はなかった」というが、8年もたっているのだから金属疲労があってあたりまえ。結局メンテナンス不足がこの事故を引き起こしたのだと言える。
背景 1997年9月に行われたB型のジャックスクリュー・アセンブリの測定は、その部分がちょうどその摩耗限界の許容限界であった。しかし、交換すべきだという整備主任の指令は、更なるテストにより安全であることが決定された後で、他の整備士によって無視された。また、1998年にA航空のスーパバイザが航空機‐保守レコードを偽造したということが分かった。その偽造事実は、直接は1月31日のA航空XX便墜落事故と関係がない。しかし、このような航空会社の整備不備や事実を隠蔽しようという行為に問題があるように思われる。
後日談 米連邦航空局が指示した、A航空機墜落事故に絡む、B型の緊急目視点検で、23機のスタビライザーのジャッキスクリューに潤滑油が不足していたり、金属が摩耗しているなどの異常が見つかった。
データベース登録の
動機
C航空の御巣鷹山墜落事故も尾翼のねじがゆるんでいたために発生した。メンテナンスの重要性を再認識させる事故なので選択した。
シナリオ
主シナリオ 未知、未知の事象発生、不注意、注意・用心不足、保守時の不注意、作業のなれ、非定常行為、無為、使用、運転・使用、不良現象、機械現象、相互運動部、摩擦、破損、破壊・損傷、材料強度不足、破断、破損、大規模破損、墜落
情報源 http://www.airborne.org/flying/forum_fly1.htm#Alaskan%20Airlines
http://www.yozawa.com/flight/disaster/alaska261.htm
http://www2.cc22.ne.jp/~hiro_ko/2-20d-jiko.html
死者数 88
負傷者数 0
物的被害 機体、乗客および乗員の貴金属、持ち物など数々の物品。
社会への影響 A航空は、アラスカからメキシコまでの太平洋海岸沿いに多くの便を就航させている。同社は1971年にも111名全員が死亡する墜落事故を起こしているので信用を失った。
分野 機械
データ作成者 エツタイノ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)