失敗事例

事例名称 信号見落としで列車が急行列車に衝突し、31人死亡、259人負傷
代表図
事例発生日付 1999年10月05日
事例発生地 イギリス、ロンドン西に位置するパディントン駅付近のラッドブロークグローブ
事例発生場所 パディントン駅付近、上下線が交差する複雑な変更路線区域、信号109と信号120間の第3路線内
事例概要 1999年10月5日朝、ロンドン、パディントン駅東、上下線が交差する複雑な変更路線区域内。パディントン発下りB列車は、運転手の信号109地点での赤信号の見落としにより、走行中のパディントン駅へ向かう上りA急行列車に向かって突入。信号監視員がこの緊急事態に気付き、A列車を止めようと信号機120を赤に変えるが、信号監視員の不手際もあり、間に合わず、2つの列車は大衝突。31人死亡、259人負傷の大惨事となった。車両から火災が発生し、最初100人以上の死亡が危ぶまれたが、救助隊の素早い救出で、数日後最終的に31人の死亡が確認された。
事象 1999年10月5日朝、パディントン駅を出発した下りB列車が、上下線が交差する複雑な変更路線区域内において、4番線から3番線に入る地点の信号109が赤信号だったにも関らず、経験不足の運転手の見落としにより3番線に突入。下り列車は通常、3番、2番、1番と下がるのが鉄道関係者内の常識である、また4番に戻る回避路線もあったが、事態に気が付かず真直ぐ3番線を走行。3番線には、パディントン駅へ向かう上り急行列車A列車が2番線から上がってくるところであった。上り線は2番線3番線と上がってくるのが通常なため事態には気が付かず通常の速度で進行。信号監視員がこの緊急事態に気付き、2番線から3番線に上る合流地点の信号SN120を赤に変え、A列車を止めようとするが、信号監視員の不手際もあり、間に合わず、8:11分、2つの列車は正面から信号機109を越した先700メートル地点で時速130マイルの速度で大衝突。運転手2人を含む31人が死亡、259人が負傷の大惨事となった。
経過 1999年10月5日午前8:11に、パディントン駅を出発しベッドウィンへ向かう下りB列車の運転手は、4番線から3番線に入る合流地点の信号109が赤であることを見落とし、3番線に突入。更にスピードを上げている。この付近の変更路線区域内では、下り列車は通常、3番、2番、1番と路線を下がるのが鉄道関係者内の常識である、また4番に戻る回避路線もあったが、事態に気が付かず、真直ぐ3番線を走行。3番線には、午前6:03チェルテンハムを出発した上り急行列車、A列車が、パディントン駅へ向かって、2番線から上がってくるところだった。上り線は2番線3番線と上がってくるのが通常なため事態には気が付かず通常の速度で進行。信号監視員は、B列車が、重要地点である信号109を赤信号を無視し危険路線に入って来るのを見ていながら、25秒も何も対処しなかった、慌てて2番線から3番線に上る合流地点の信号SN120を緊急に赤に変え、A列車を止めようとするが、列車は青信号ですでに突破、事態に気が付いた両運転手はブレーキをかけるが、間に合わず、2つの列車は正面から信号機109を越して700メートル地点で時速130マイルの速度で大衝突。運転手2人を含む31人が死亡、259人負傷の大惨事となった。
原因 B列車の運転手が、信号109が赤だったのを見落とし3番線に突入した事が直接の原因である。この際、列車は赤信号を通過すると運転手に警告するという安全装置を着けていたが、運転手は気が付いていない。回避路線もあったが、運転手の認識不足のため、気が付かず真直ぐ上り線A列車に向かって走行した事。信号監視員は、B列車が赤信号を無視し危険路線に反対方向から突入して来るのを見ていながら、25秒も何も対処しなかった事等、経験不足による不手際が、朝の通勤混雑の時間帯だった事も伴い、31人の死者259人の負傷を招く大惨事を引き起こした。後に、運転手が経験不足であるのにも関らず、正式な路線図は渡されてなく、手書きの路線図に頼って運転していた事、信号機109後の3番線は、1998年2月に信号ミスによって衝突事故未遂をおこした信号後の危険路線とされていたが、会社側から何の対策も注意も施されていなかった事が発覚。B列車社の不適格な管理と教育の怠慢。また、以前の事故や事故未遂の時から、見落としやすい信号機の原因追求勧告を受けていて、その勧告を無視していた鉄道ネットワークを操作するC社の怠慢が原因とされている。
対処 不足であるのにも関らず、正式な路線図は渡されてなく、手書きの路線図に頼って運転していた事、信号機109後の3番線は、1998年2月に信号ミスによって衝突事故未遂をおこした信号後の危険路線とされていたが、会社側から何の対策も注意も施されていなかった事が発覚。B列車社の不適格な管理と教育の怠慢。また、以前の事故や事故未遂の時から、見落としやすい信号機の原因追求勧告を受けていて、その勧告を無視していた鉄道ネットワークを操作するC社の怠慢が原因とされている。
対策 C社に見落としやすい信号機の原因追求勧告をだしているにも関らず、無視し、今回同様の事故を引き起こした責任は大きいとし、スコットランド最高裁は二度とこのような惨事を繰返させないため、安全改善、乗客のための情報、信号機の取替え、列車と信号操作員のスムーズな情報伝達、運転手と信号操作員の教育の向上、高速列車の衝突耐久性の向上、情報システムのコンピューター化、死傷者と生存者の措置について等の89項目をC社に勧告。当時のC社長は事故責任を認め辞任。保険安全行政は、列車と駅構内操作会社との複雑な関係も要因、そして営利と安全との間で起こる問題点が緊張を生み出した可能性もあるとし、レイルウェイ調査にこの分野の操作管理局となる権限を与え、更に安全管理の経験ある調査員の増員、10%の人員増員等によって安全管理強化の徹底を指示。また、全ての列車は赤信号を通過するとドライバーに警告する安全装置を着けていたが、この装置は不適格で時代遅れとされ、政府は2003年末までに、新装置、赤信号を通過した際には自動的にブレーキの引き金を引く警告システム装置の装着を鉄道ネットワーク全体に導入する事を公約した。
知識化 まずは、運転手教育の向上や信号機を取り替える等、信号の見落としを防ぐ措置。次に、列車と信号操作員とのスムーズな情報伝達などの向上によって事前に事故を防ぐ措置、新自動警告システム導入により自動的にブレーキが掛かり衝突を防ぐ措置というように、人為的ミスを二重三重の方法で回避する措置をとり、二度とこのような惨事を繰返さない安全対策方法を推進している。
背景 信号109後の3番線線は、1998年2月はD急行列車とA列車が、同じ地点でほんの150ヤードで急停止し危うく事故を免れているという前例がある。信号109は、跨線橋下に他に5つの信号と同列に並ぶ信号で、朝の光だと見にくい危険な信号であった。しかし、C社は見落としやすい信号機の原因追求勧告を受けているにも関らず無視していた、また、パディントン駅の安全改善提案を約5年間も無視していた。B列車会社は、7百50万ポンドを株主達への配当としているが、5百26万ポンドの列車安全防護システム導入を拒否していた。また、事故の原因とされるB列車運転手は初心者であったにも関らず、正式な路線計画図は渡されてなく、手書きの路線計画図に頼って運転していた。また、信号監視員は、列車が赤信号を無視し危険地帯に入っているのを見ていながら、25秒も何も対処しなかった。鉄道安全監視員は、事故が起こる前、働き過ぎで疲れていたため信号機に関しての注意を怠っていた。生存者が脱出する際、緊急指示サインが少なく困難だった事、閉じ込められた乗客が脱出する際の緊急用ハンマーがなかった等、列車内の安全対策にも欠けていた。
後日談 後に、運転手が経験不足であるのにも関らず、正式な路線図は渡されてなく、手書きの路線図に頼って運転していた事、信号機109後のこの地点は、1998年2月に列車同士がほんの150ヤード地点で急停車した衝突事故未遂を起こし、注意勧告を受けているにも関らず、会社は何の注意も運転手に指示していなかった事が発覚。B列車の不適格な管理と教育の怠慢、また、以前の事故や事故未遂から、見落としやすい信号機の原因追求勧告を受けているにも関らず、その勧告を無視し安全対策を怠っていたC社の怠慢を批判。スコットランド最高裁は、89項目に及ぶ安全注意勧告を提出。運転手の信号無視によって引き起こされ事故だが、信号機が見えにくい事、そして例え運転手が赤信号を見落としたとしても、鉄道安全管理が適切に感知していれば、大惨事は未然に防げたとして、鉄道ネットワーク操作と安全管理のC社の責任とした。当時のC社長はその事故責任を認め辞任した。
よもやま話 当時のC社C社長は、1998年にパディントン駅は世界中で最も安全管理の徹底されている駅と豪語していたと言う。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、組織運営不良、管理不良、組織運営不良、運営の硬直化、報告制度不備、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、手順の不遵守、手順無視、操作手順無視、使用、運転・使用、誤対応行為、連絡不備、破損、大規模破損、衝突、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
情報源 http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/717149.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/467919.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/469038.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/946408.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/1395158.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/1396414.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/471490.stm
死者数 31
負傷者数 259
被害金額 記述無し
全経済損失 記述無し
社会への影響 列車の安全と安全防護システム装置への不信感がひろがった。
分野 機械
データ作成者 マユミビンクス (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)