事例名称 |
信号見落としで急行列車と貨物列車衝突、約170人死傷 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1997年09月19日 |
事例発生地 |
イギリス、ロンドン西、サウスホール駅付近 |
事例発生場所 |
鉄道駅付近、変更路線区域 |
事例概要 |
1997年9月19日、満員の乗客を乗せたパディントン行きA急行列車は、終着パディントン駅手前サウスホール駅を通過すると、下車の準備を始め出した気の早い乗客達で更にごった返していた。列車は、運転手の不注意にて、赤信号を見落とし、変更路線区域に突入。その際、自動警告装置、自動防護装置、どちらも作動せず、数秒後、A急行列車の先を横切るような形で通常走行してきた貨物列車の空車両の側面に激突。衝突は凄まじく、脱線、大破、火災発生。消防隊と救助隊の適切な消火と救出により、衝突で瓦礫と化した車両の中から、負傷者は助け出されたが、7人死亡、160人重軽傷の大惨事となった。過去イギリス9年間において最悪の列車衝突事故とされた。 |
事象 |
1997年9月19日、スワンセア駅から出発したロンドン、パディントン駅行き急行列車は、出発時から満員で、多くの乗客が通路や車両の連結部分等に立っているような状態だった。列車は、パディントン駅よりひと駅手前のサウスホール駅を時速125マイルで通過。終着パディントン駅が近いとあって、480人の乗客のうち、気の早い人達は自分達の荷物を棚から降ろし始めていた。それらの乗客達が席を立ち上がりだしたので、当初から混雑していた車内は更にごった返していた。急行列車の運転手も乗客と同じように、終着駅が近いとあって浮き足立っていた。最高速度で列車を運転しているにも関らず、降りる際の自分の荷物を片付け始め、下を向いた瞬間、列車は赤信号を通過していた。その際、自動緊急警報装置は作動しなかったため、運転手は自分の信号無視に気が付かずに走行。数秒後、A急行列車の行く手を横切るような形で通常走行してきた空の8両貨物列車の側面に衝突。衝撃は凄まじく、4貨物車両が脱線、客室車はそれらの車両内へ激突。客室車の先頭2車両は、まるで銀紙のようにぼろぼろによじれ、火災が発生。7人死亡、160人重軽傷の大惨事となった。 |
経過 |
1997年9月19日午前10:32、スワンセア駅からロンドン、パディントン駅へ出発したA急行列車は、出発当初から多くの乗客が通路や車両の連結部分等にに立っているような状態で、車内は満員だった。急行列車は、終着パディントン駅より約10分、ひと駅手前のサウスホール駅を時速125マイルで通過。480人の乗客のうち、気の早い何人かは、早々と自分達の荷物を棚から取り出し始めていた、その乗客達の何人かは席を立ち上がりだし、当初から混雑していた車内は更にごった返していた状態だった。運転手も乗客と同様、終着駅が近いとあって浮き足だっていた。乗客が降りる際の自分の荷物を片付け始めようと下を向いた瞬間、列車は赤信号を通過していた。列車は自動警報装置を付けていたにも関らず、運転手は信号無視に気が付かず走行。また、列車は赤信号を無視した際に自動的にブレーキをかけるシステムである自動防護装置を付けていたにも関らず、作動していない。その数秒後、通常運転で貨物置場に車両を取りに向かう、8空車両を乗せた貨物列車が、急行列車の目の前を横切るような形で通過。ブレーキは間に合わず、時速約90マイルの速度で、貨物列車車両の側面に激突。衝撃は凄まじく、4車両が脱線、客室車はそれらの車両内へ激突。客室車の先頭2車両は銀紙のようにぼろぼろによじれ、ブレーキ油圧液の漏れによって火災が発生。消防隊、救助隊の適切な消火と救出活動により、生存者は素早く救助され病院に運ばれた。また、自力で脱出できた乗客も大勢いたが、7人死亡、160人重軽傷の大惨事となってしまった。 |
原因 |
急行列車の運転手が、勤務中にも関らず、早く仕事を終わらせたいがために、自分の個人的な荷物に目が向き、責任ある運転への注意を怠り、赤信号を見落とした事が、この惨事を引き起こした最大の原因である。運転手は、何故信号を見落としたのか、うたた寝していたのではとの疑問にも説明する事ができないでいるため運転手の過失責任は大きい。また、列車は、赤信号を無視し通過した際、運転手にブザーにて警告する筈である自動警告装置、また運転手がそれに気が付かない時や停止する事ができない時に自動的に列車にブレーキをかける自動防護装置、どちらも装着していたにも関らず、事故は起こっている。壊れていたのか、それとも運転手がスイッチを入れていなかったかの理由によって、実際は作動しなかった。運転手は、警告ブザーが鳴らなかったと証言しているため自動警告装置は欠陥だった疑いがある。また、自動防護装置は、運転手が教育を受けていないため、使い方がわからず、スイッチを入れていなかった事が明らかになった。後に、運転手は、会社が教育をしていなかったため、自動警告装置なしで、列車が走る事がどんなに危険な事かという知識がなかったと言う。これらの件から、不適格な運転手教育、また欠陥のある自動列車防護装置を付けていて気が付かなかった会社への安全管理の怠慢とし、列車の運用会社と信号・線路の保安会社にも多大な責任があるとした。 |
対処 |
事故の衝撃は凄まじく、客室車両の先頭2車両は、まるで銀紙が潰れたようなくしゃくしゃの状態だった。それに加え、ブレーキ油圧液の漏れから火災が発生していた。緊急時とあって救助隊は最大数が動員。全救助隊が30分以内に駆け付け、救助にあたった。また、発生した火災も消防隊の消火によって、素早く消し止められた。脱線車両内の負傷者の救助を最優先に行い、よじれたメタルに挟まれた乗客を装備を切断して救出。適切で素早い救助作業であったが、破壊された残骸車両に救助を阻まれ、最後の生存者が残骸から救出されたのは2時間30分後であった。自力で脱出した多くの生存者は、危険な電気ケーブルや死体を避けながらの命がけの脱出であった。事故後、付近の病因は直ちに緊急体制に入り、輸血用血液を手早く準備するなど、万全の状態で、負傷者150人の手当てに全力を尽した。過去イギリス9年間において最悪の列車衝突事故とされた惨事であったため、事故後、異例の早さで事故原因調査を開始した。 |
対策 |
運転手の職務怠慢による不注意によって赤信号を見落とし、更にその後列車を自動的に止める事が出来た筈の自動防護装置のスイッチを入れてなかったとあって。運転手の職務の重要性と危険に関する認識の欠陥がこのこのような惨事を起こした。二度とこのような惨事を繰返さないため、原因を徹底的に調査、分析。その結果、会社の運転手教育の怠慢がクローズアップ。A社とB社に対し、運転手教育の徹底と自動警告装置や自動防護装置等の安全防護システムの見直しに焦点をあてた93項目に渡る対策案を勧告。先ずは、運転手教育の徹底。運転手の適応能力や適性検査を行うなど運転手の質の向上。運転手やその他重要ポイントにモニターをつける等作業状況の監視。自動警告装置の装備と点検の確認義務。全列車への自動防護装置の設置勧告。新安全装置の設置への勧め。信号操作員の配備。信号機の操作の確認と点検義務。また、積極的により安全な防護システム設置を推進しするよう勧告した。 |
知識化 |
実際に乗客の生命を預かる重責を担う運転手教育の徹底。起こりうる危険性とその対処を含む安全教育の徹底。今回の事故によって、今後は運転手の適応能力や適正調査も必要性にも焦点があてられた。更に、信号無視をした際の安全対処の徹底。自動警告システム装着の徹底とそのメンテナンス。また、自動防護装置に関しては、運転手への操作指導と共に100%衝突事故を防ぐ新システムの導入が今後の課題となるだろう。 |
背景 |
急行列車は、出発当初から、乗客達が通路や車両の連結部分等にに立っているような状態で、満員だった。また、事故の起きたサウスホール駅辺りでは、気の早い乗客達が荷物を降ろし始めるため席を立ちだしたので、車内は特にごった返していた。身動きのとれない混雑時に突然起きた衝突事故なため、大惨事になってしまった。しかし、衝突された貨物列車は、貨物置場へ荷を取りに行く途中だったので、脱線、大破した4車両は空だった。そのため犠牲者がでなかったのは幸いだった。赤信号を見落とした運転手は、サウスホール駅を越した地点で、列車が最高速度の時速125マイルで走っているにも関らず、終着駅での下車に備え自分の荷物を片付け始め、運転への注意が散漫していた。その際、赤信号を通過している。A急行列車は、赤信号通過した際、運転手にブザーにて警告する筈である自動警告装置、また運転手がそれに気が付かない時や停止する事ができない時に自動的に列車にブレーキをかける自動防護装置、どちらも装着していたにも関らず、実際は作動ていない。運転手は、警告ブザーが鳴らなかったと証言しているため自動警告装置は欠陥だった疑いがある。また、自動防護装置は、運転手が教育を受けていないため、使い方がわからず、スイッチを入れていなかった事が明らかになった。後に、運転手は、会社が教育をしていなかったため、自動警告装置なしで列車が走る事がどんなに危険な事かという知識がなかったと言う。 |
後日談 |
事故調査は敏速に、そしてその原因追求は徹底的に行われた。その結果、運転手への過失責任については、事故後精神を冒されており責任能力なし、そして、その教育管理と安全管理を問われていたA列車に対しては、遺族や負傷者へ150万ポンドの賠償責任という異例の厳しい判決を下した。 |
よもやま話 |
激しい衝突により列車は脱線。特に急行列車の先頭2車両は壊滅状態だったにも関らず、両列車の運転手は奇跡的に二人とも助かっている。後の事故原因追求調査に大きく貢献している。 |
シナリオ |
主シナリオ
|
組織運営不良、管理不良、組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、無知、知識不足、教育・訓練不足、誤対応行為、自己保身、非定常行為、無為、認識ミス、破損、大規模破損、衝突、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
|
|
情報源 |
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/405104.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/465475.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/655723.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/655606.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/656013.stm
http://danger-ahead.railfan.net/features/southall.htm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/384011.stm
|
死者数 |
7 |
負傷者数 |
160 |
物的被害 |
2列車と線路の破壊 |
被害金額 |
記述無し |
全経済損失 |
記述無し |
社会への影響 |
列車の安全性と自動警告装置と自動防護装置への不信感がひろがった |
分野 |
機械
|
データ作成者 |
マユミビンクス (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)
|