失敗事例

事例名称 濃霧の夜サバーン橋にタンカーが衝突し炎上
代表図
事例発生日付 1956年10月24日
事例発生地 イギリス,シャープネス
事例発生場所 鉄橋
事例概要 イギリスで,2隻のタンカーが,サバーン川航海中,サバーン鉄道鉄橋のたもとへ激突。橋の支柱が損壊し,橋桁の2スパンがタンカーに落下。積み荷であるガソリンに引火し,タンカーは炎上。視界の悪い霧の夜で,橋に近寄り過ぎたところ,突然の高波にさらわれた事による衝突だったが,5人の犠牲者をだす大惨事となってしまった。この惨事は,サバーン川の橋の歴史と共に人々の間で語り継がれている。
事象 1960年,イギリス,2隻のタンカーが,霧の深い悪天候の中,サバーン川を航海中,ライドネイとシャープネスを結ぶサバーン鉄道鉄橋下を通り抜けようとした際,ちょうど強いうねりを受け,波にさらわれるかのようにタンカーは,橋のたもとへ激突。衝撃は激しく,橋の支柱を倒し,タンカーは破損,積荷のガソリンが流出。鉄橋は,橋の支柱が倒れたため橋桁2スパンが落下。タンカーを直撃した。落下の衝撃の際,漏れていたガソリンに引火,爆発炎上。流出したガソリンは,一晩中,真っ赤に燃え続け,5人の犠牲者をだす大惨事となってしまった。
経過 1960年10月25日,濃い霧の夜,A株式会社所有の二隻のタンカー,ウエストデイルとアーカンデイルは,サバーン川を上流に向かって航海中,ライドネイとシャープネスを結ぶサバーン列車鉄橋を通過する際,突然,高波のようなうねりに押し寄せられ,橋のたもとに激突。衝撃は激しく,橋の支柱を倒し,橋桁2スパンが落下。積荷のガソリンが流出しているタンカーを直撃した。落下の衝撃で,流出していたガソリンに引火。2隻のタンカーは橋を巻き込み,爆発炎上。満タンに積載されていたガソリンが川に広がったため,一晩中,川は真っ赤に燃え広がり,まさしく火の海だった。タンカー乗組員の5人が死亡した。
原因 濃い霧の為,視界が悪かった事で,橋のたもとに近付き過ぎた,タンカー操縦士の運転ミスが直接の原因といえる。また,当時では最先端のサバーン列車鉄橋だが,現在の橋梁技術から比べると,橋を支える橋桁が多く,その間隔の狭い橋であるため,大きなタンカーが視界が悪く,うねりの高い中,その橋のたもと間を通り抜けるのは危険だという事を事前に察知し,待機する等の措置をとるべきだった。その判断ミスがこの惨事を招いた原因だと思う。
対処 タンカーに満タンにガソリンが積載していたため,その爆発と流出したガソリンの火災とで,サバーン川はまさに火の海だった。霧の為,視界が悪い上,悪天候の中の救出作業は困難をきたした。その惨事の中,5人が命を落としたが,大部分のタンカー乗組員は脱出,救助されている。幸い,巻き込まれた列車等はなかった。
対策 川を通過する全ての船舶へ,悪天候時の待機指示や通り抜ける際の注意事項を告知。また,橋梁設計者達は,船舶サイズが大きくなっていく時代をな認知し,長い鉄骨スパンを使い,高くて,橋桁間隔の広い,頑強な橋の技術開発に乗り出した。
知識化 過信は禁物である。波が高い上,視界の悪い夜の航海で,大きなタンカーが,狭い橋のたもと間を通過する事がどんなに危険か察知するべきだった。
背景 1875年に建設開始,1879年に完成したサバーン列車鉄橋は,何十もの支柱により橋桁を支える構造で,空気力学デッキを最初に使用した画期的な橋であるが,現在の橋梁から比べるとその橋桁の間隔は非常に狭いものである。
後日談 橋は修繕されず,長い間放置されていたが,1967年遂に解体された。2隻のタンカーは,人々がこの惨事を忘れないようにと,歴史館としてサバーン川に停留してある。
よもやま話 標高2,000フィートのウェールズから海まで220マイル流れるサバーン川には,現在100の橋が架かっている。その歴史は長く,13世紀半ばから建設され始め,18世紀産業革命時に多くの鉄橋が建設された。現在も新たに建設中である。
シナリオ
主シナリオ 誤判断、状況に対する誤判断、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、使用、運転・使用、手順、使用、輸送・貯蔵、ガソリン、環境変化への対応不良、使用環境変化、自然的条件変化、霧、非定常動作、状況変化時動作、破損、大規模破損、衝突、不良現象、化学現象、引火、破損、大規模破損、全焼
情報源 http://www.severnbore.ndirect.co.uk/bridges3.htm
http://www.severnbore.ndirect.co.uk/tunnel.htm
http://www.hse.gov.uk/press/2002/c02018.htm
http://www.wsws.org/articles/2001/sep2001/toul-s25.shtml
死者数 5
物的被害 鉄橋,タンカー2隻
分野 機械
データ作成者 マユミビンクス (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)