失敗事例

事例名称 サウスフォーク・ダム崩壊事故(1889年)
代表図
事例発生日付 1889年05月31日
事例発生地 米国ペンシルバニア州ジョーンズタウン市近郊サウスフォーク・ダム
事例発生場所 ダム
事例概要 1889年5月31日午後4時7分、米国ペンシルバニア州のサウスフォーク・ダム(高さ約22m、長さ約275m)が崩壊し、ジョーンズタウン市にダム水が流れ込み、子供396名を含む2209名もの生命が奪われた。ダム崩壊の直接の原因は雨だが、過去にもダム水漏れや洪水等、数多くのトラブルをかかえていたため、1889年の崩壊事故は起こるべくして起きたとの見方が強い。メンテナンス不足、再建工事の不備、設計ミス等、複合的要因によりサウスフォーク・ダムは崩壊した。
事象 1889年5月31日、米国ペンシルバニア州ジョーンズタウン市近郊のサウスフォーク・ダムが激しい雨のため崩壊し、洪水を起こした。崩壊前にジョーンズタウン市住民に対し、避難勧告が出されたが、住民の反応は鈍く、逃げ送れた者が大多数。2209名の死者、1600世帯の崩壊、280ものビジネス損害、森林などの自然崩壊を含む大惨事となった。
経過 1889年5月31日、朝から激しい雨が降り続けていたため、近くのストニークリーク川は洪水を起こし始め、ダムの水面は10分ごとに2.45cm浮上し、午前中半ばには水面はダムの堤防近くまで上昇していた。この時点でようやくダム崩壊の恐れが懸念され、ダムの堤防を高くしたり、排水口を新たに作ったりしたが、あまり効果はなかった。ジョーンズタウンの住民に避難勧告が出されたが、住民はあまり深刻に受け取らなかった。午後2時30分、ダム水が堤防の頂上に達し、徐々に流れ出した。その後、ダム中央に位置する石が沈み、午後3時10分ダムが崩壊した。2000万トンもの水が時速約64Kmでジョーンズタウン市に流れ出し、1600世帯を襲った(午後4時7分)。洪水にもかかわらず火事も発生し、2000名以上のもの生命が失われた。
原因 1881年に完了したサウスフォーク・ダム再建工事の不備およびメンテナンス不備が1889年のダム崩壊事故につながった。以下は再建工事不備の内容。1.粘土および土を数日間水中に寝かすパドリング作業を省略したため、建設当初(1853年)の強度を保つことができなかった。2.ダム中央部分の強度を支えるサポートを何もしていなかった。3.水がダム頂上まで上昇した場合、堤防部分にある排水口から水が流れる仕組みになっているが、その排水口のサイズが小さすぎるため、水があふれて洪水になってしまう。また、釣り用スクリーン(魚がダムの外に逃げるのを防止するために設置)が排水口の水の流れを妨害している。
対処 ダム崩壊前に、ジョーンズタウン市住民に対して避難勧告が出されたが、多くの住民が勧告を無視。ダムの洪水を防ぐため、ダムの堤防を高くしたり、別の排水口を作るが効果なし。午後4時7分、ジョーンズタウン市に洪水が発生してからは、緊急の遺体安置所および病院が設置され、救助および捜索隊が出動。助かった人々には食料、衣類、医療品、物品、援助金が配られ、米国および他18か国から総計370万米ドル相当の援助および見舞金が収集された。
対策 米政府は、ダムの排水口安全基準の遵守、沈下の監視、設計基準の徹底等を勧告。サウスフォーク・ダムの悲劇から学んだことを忘れないために、また被害者の慰安のためにメモリアル・パークが設立される。
知識化 何かあってからでは遅い。メンテナンスの徹底等、事故を未然に防ぐ努力が必要。
背景 ペンシルバニア運河システムの一貫として1838年に建設が始められたサウスフォーク・ダムは1853年に完成した。が、同時期に鉄道が開通したため、ペンシルバニア運河システムはあまり利用されることがなく、その結果、サウスフォーク・ダムのメンテナンスはおろそかになっていった。1862年、排水部分の石が壊れたため、サウスフォーク・ダムは崩壊した。1879年に着手したダムの再建工事は1881年に完了したが、この時の工事は完璧なものではなかった。
後日談 1889年サウスフォーク・ダム崩壊事件から1年後に、ジョーンズタウン市北東にジョーンズタウン洪水ナショナル・メモリアル・パークが建設された。公園内にはジョーンズタウン洪水博物館もあり、洪水による被害等を展示している。館内では、1989年にドキュメンタリー短編部門でアカデミー賞を受賞した映画「The Johnstown Flood」も公開されている。
よもやま話 ジョーンズタウン洪水は、今でもジョーンズタウンの住民の間で昨日のことのように語り継がれている。被害の大きさだけでなく、ジョーンズタウンは当時、A氏など鉄鋼で財をなした人々の避暑地として、ピッツバーグから多くの財界人が訪れた町として有名。ジョーンズタウンを流れる川の上流には、サウスフォーク・ダムの人工湖があり、その回りには別荘が立ち並んでいた。現在でも、別荘はいくつか残ってる。
データベース登録の
動機
サウスフォーク・ダム崩壊によるジョーンズタウン洪水は映画でアカデミー賞を受賞したほど有名な事例なので選択した。
シナリオ
主シナリオ 企画不良、戦略・企画不良、試験計画不良、調査・検討の不足、事前検討不足、審査・見直し不足、調査・検討の不足、環境調査不足、不注意、注意・用心不足、取り扱い不適、非定常行為、非常時行為、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡
情報源 http://www.geocities.com/CollegePark/Dorm/4093/johnstown.htm
http://usparks.about.com/library/weekly/aa053199a.htm
死者数 2209
負傷者数 1000
物的被害 1600世帯崩壊、280のビジネス損害、自然、サウスフォーク・ダム。
被害金額 1700万米ドル
社会への影響 人工湖の堤防が増水によって流され、橋や鉄橋を押し流し、ジョーンズタウンの中心部まであっと言う間にのみこんでしまった惨事に人々は茫然とした。
備考 負傷者数についてだが、実際は1000人以上とされている。正確な数はわからなかった。
分野 機械
データ作成者 エツタイノ (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)