失敗事例

事例名称 危険作業での安全措置不備で、運転手がセメント輸送タンクカーから転落
代表図
事例発生日付 1996年08月07日
事例発生地 米国ミズーリ州ジェファーソン郡フェスタス
事例発生場所 A社のセルマ・プラント
事例概要 セメント輸送に携わるトラック運転手が、タンカーの上に登っての作業中に12フィート下のコンクリート地面に転落した。この運転手は事故の翌日に死亡。
事象 事故のあったタンクカーは1997年製のB社製B型で、タンクの上には滑り止め素材でできた通路と、等間隔で3つのハッチカバー、タンクの左側に登り降り用のはしごが装備されている。当運転手は地上から12フィートの高さにあるタンクの上に登り、ハッチについて何らかの作業、あるいは点検をしている最中に、手袋に付着した油で滑って転落したものと見られる。この運転手はMSHA(鉱山保安衛生局)が義務付けている安全ベルトを着用せずにタンクカーの上に登って作業をしていた。
経過 商業トラック会社C社の従業員B氏(55)は、午前3時41分に事故現場となるA会社のセルマ工場に到着し、午前4時に搬送部門のゲートが開くのを待っていた。A氏はトラックから降りてタンクの上に登り、ハッチの蓋を調べていたが、ゲートが開いてもタンクカーを門内に乗り入れる様子がないので警備員が調べたところ、頭をタンク側に、足はタンクから離れる格好で倒れており、意識がなかった。警備員は即座に工場管理室に無線連絡し、管理室から911に連絡、すぐに救急車が到着し病院に運び込んだが、事故の翌日死亡した。
原因 事故の犠牲者はシートベルト、安全ベルト、命綱の着用を定めるMSHAの規定に従わずに、危険作業に従事していた。米国鉱山保安衛生局は鉱山従業規則の第104項で、危険を伴う作業従事者の安全ベルト、命綱の装着、さらに危険性の高い場所では命綱を監督する人間の必要性を定めている。A氏の雇用会社であるC社はトラック運転手らに、吊り紐付安全ベルトを支給していなかった。事故のあった工場では、通常トラックの運転手が到着した時点で、吊りひも付きの安全ベルトを支給していたが、A氏はこれも着用していなかった。
対処 事故の第一発見者である警備員が即座に救急連絡をとり、救急隊員が犠牲者の応急手当を実行した。
対策 MSHAは雇用会社C社に対し、基準56項15005に対する規則違反であり、許されない事故であるとして、第104(d)節(1);重症あるいは死亡事故に対する違法通告を発布した。
知識化 危険を伴う作業に従事する者に対して、十分な訓練と、適切な安全措置を講じる事は、管理者、雇用者の責任であり、それを怠ることは、死亡事故を招く大きな原因となる。
背景 当時この犠牲者A氏は、C社の従業員として30年、トラック運転手としては合計35年の経験を持ち、そのうち18年はセメントの運搬作業に携わっていたが、鉱山保安衛生局の定める30 CFR Part48(鉱員訓練と再訓練条項)に基づいたトレーニングを受けていなかった。
後日談 C社に発布された通告書は、1996年10月に全ての従業員に対し、荷積みエリアでの安全ベルト、命綱の支給・装着を義務付けるよう通達を出した時点で取り下げられた。
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、教育・訓練不足、組織運営不良、管理不良、手順の不遵守、手順無視、操作手順無視、定常操作、手順不遵守、身体的被害、死亡、組織の損失、社会的損失
情報源 http://www.msha.gov/FATALS/1996/FTL96M33.HTM
死者数 1
負傷者数 0
備考 物的被害などについては詳細記述がないため不明。
分野 機械
データ作成者 タカコホール (SYDROSE LP)
中尾政之 (東京大学工学部附属総合試験所総合研究プロジェクト・連携工学プロジェクト)