| 事例名称 | ベンチュリー・スクラッバーのエロージョン・コロージョンによる漏洩 | 
  | 代表図 |   | 
  
    | 機器 | 石油精製プラントの連続再生式接触改質装置(ベンチュリー・スクラッバー) | 
  
    | 事例概要 | 触媒再生塔オフガス(N2、CO2、H2O、O2、HCl、Cl2)から苛性水溶液(NaOH:約2%)を用いてHCl、Cl2を除去するベンチュリー・スクラッバーが、運転開始9ケ月後に胴部溶接線近傍にピンホールが発生して、漏洩した。セメント物質による漏洩防止、続いて外面からクランプ取付けによる漏洩防止を行ったが成功せず、1.5ケ月後に運転を停止し、スクラッバーの取替えを行った。 | 
  
    | 事象 | 開放点検、損傷部の諸検査の結果、漏洩はスプレーノズル出口近くの胴部で生じており(図2、図3、図4)、開口部周辺では胴厚(3.2mm)が腐食またはエロージョン・コロージョンによって1.5~2.0mm減少している。開口部から十分離れた位置においても、胴厚が腐食によって0.8~1.0mm減少している。運転データの解析の結果、イニシャル・スタートアップから約5ケ月間、ポンプ系統の不調により苛性の供給が不足気味であったことが確認された。その結果、循環スプレー液に塩化物塩が析出していた可能性が考えられる。 | 
  
    | 経過 | 液滴を伴う本プロセスガス(480℃~45℃)に対するHastelloy B-2の耐食性が不十分であったため、液滴のエロージョン効果のある部位では9ケ月で3.2mmの胴板を貫通する激しい腐食が、エロージョン効果のない部位でも1.0~1.3mm/年と高速の腐食が生じ、ベンチュリー・スクラッバーを使用不能にした。最初の5ケ月間の運転不備により生じた可能性のある循環スプレー液中の析出物の悪効果は、否定はできないが、せいぜい本事故発生時期を早めた程度で、損傷の本質を左右するものではない。 | 
  
    | 原因 | 液滴を伴うプロセスガスに対して、ベンチュリー・スクラッバーの材料であるHastelloy B-2の耐エロージョン・コロージョン性が不十分であった。 | 
  
    | 対策 | Hastelloy B-2の耐塩酸性については多くの実績があるが、これらは還元性雰囲気下のもので、Cu2+、Fe3+などが共存する酸化性雰囲気下ではその耐食性は大きく低下する。本プロセスガスには少量ではあるがO2(0.6~0.8vol%)が含まれており、このために激しい腐食発生となったと判断される。酸化性雰囲気下の塩酸に適したHastelloy C-2000(UNS N06200)でベンチュリー・スクラッバーを再製作して用いたところ、全く損傷はなく、2.8年後までの点検において内面機械加工跡がはっきりと確認できる状態が保たれている。 | 
  
    | 知識化 | 本接触改質プロセスには実に多くの実績があったため、かえってこれが基本設計時にライセンサーが少量O2の存在を軽視する結果に繋がったことも考えられる。 | 
  
    | シナリオ | 
        
          | 主シナリオ | 無知、知識不足、経験不足、調査・検討の不足、環境調査不足、酸化性雰囲気下での材料耐食性、使用、運転・使用、ベンチュリー・スクラッバー、Hastelloy B-2、破損、減肉、エロージョン・コロージョン、漏洩 |  | 
  
    | 情報源 | (1)W.J.Neil, Jr.: Materials Performance, 50(May 2001) (2)非公開資料(私信)
 
 | 
  
    | マルチメディアファイル | 図2.ベンチュリー・スクラッバー | 
    | 図3.ベンチュリー・スクラッバーの構造 | 
    | 図4.漏洩発生部 | 
  
    | 分野 | 材料 | 
  
    | データ作成者 | 篠原 孝順 (元東洋エンジニアリング(株)) 小林 英男 (東京工業大学)
 
 |