事例名称 |
還流パイプ詰まりに起因する温度上昇によるo‐ニトロクロロベンゼン溶解槽の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1986年10月15日 |
事例発生地 |
山口県 小野田市 |
事例発生場所 |
医薬品工場 |
事例概要 |
1986年10月15日、山口県の医薬品工場棟で、1-ヒドロキシベンゼゾトリアゾールの製造中、原料のo-ニトロクロロベンゼンを溶解釜に仕込み、120℃まで加熱して水和ヒドラジンを滴下した。124℃で滴下は中止したが、生成したo-ニトロフェニルヒドラジンが110℃付近から発熱分解し1-ヒドロキシベンゼゾトリアゾールに変化し、160℃付近から爆発的に分解を開始した。その黒色タール状反応液約1.5立方mが工場外50~60mに噴出、飛散した。 |
事象 |
温度上昇による反応器内での爆発 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
その他 |
化学反応式 |
図3.化学反応式1
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物質 |
o-ニトロクロロベンゼン(o-nitrochlorobenzene) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
医薬品中間体のヒドロキシベンゾトリアゾール製造工場で,大きな爆発音とともに溶解釜が爆発し,工場周辺の建物が破損した。工場は外壁及び屋根が全壊し,溶解釜は撹拌機とともに現場から約70m離れた海中に没していた。爆発に至る間には溶解釜の温度上昇が確認されていた。また、溶解釜と液量計の間の還流パイプに、原料のo‐ニトロクロロベンゼンの黄色結晶が目詰まりし,還流パイプを閉塞していた。さらに採取した試料中には,通常の反応工程では生成することのないo‐クロロヒドラゾベンゼンやそのヒドラジン置換体が検出された。 |
原因 |
o-ニトロクロロベンゼンが冷却器で過冷却のため、溶解釜と液量計との間の還流パイプ内で黄色結晶化して目詰まりを発生した。正常な還流ができなくなり、溶解釜内温度が上昇したため、溶解槽を用い反応させ生成したo-ニトロフェニルヒドラジンが発熱分解し1-ヒドロキシベンゾトリアゾールに変化して高速で分解し、爆発したものと推定された。 |
対策 |
1.設備面の対策 少なくとも蒸発釜の圧力、温度上昇を検知し、警報をだす設備が必要である。また何らかの事情で缶内温度が上がった場合に、熱源を停止するとか、全量を冷却媒体を満たした槽に放出するとかの安全手段を取ることが考えられる。 2.使用する用役の対策 冷媒温度を常に凝固点以上に確保する。 |
知識化 |
絶対に冷却しすぎてはならない系では、冷媒温度の下限を決めて、それ以下の温度では運転しないように設備、運転法とも考えるのが絶対安全に近づく方法の一つであろう。 |
背景 |
1.過冷却により還流パイプが目詰まりし還流ができなくなった。 2.なぜ過冷却を起こしたか。冷却水の温度と流量の管理が不十分であったのではないかと推測できる。 3.設計時の配慮不足が考えられる。凝固温度以下になるような冷却媒体を使った。 |
よもやま話 |
還流をかけて作業している溶解槽や反応槽の温度が上がる理由はおもに2点が考えられる。 ☆ 凝縮器や塔頂蒸気配管の詰まり等で圧力が上がること ☆ 還流がかからなくなり塔底物組成が重質化すること。 起こった事象がどちらかははっきりしないが、還流がかからなかった可能性が大きい。 |
データベース登録の 動機 |
還流パイプ詰まりの影響例 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、理解不足、凝固点と凝縮器が結びついていない、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、計画・設計、計画不良、凝固点以下になる熱交を設計、非定常行為、非常時行為、温度異常上昇時に行動できない、不良現象、機械現象、閉塞、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.131
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
工場外壁、屋根全壊。溶解釜と攪拌機は約70m離れた海中に水没。 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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