事例名称 |
合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年12月03日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
合成ゴム製造設備の仕上工程である乾燥設備の排気ダクトに設置されたブロワーの羽根車(インペラー)付近より出火し、排気ダクト及び当該施設を収容する建物の屋根などを焼損した。長年の使用による金属疲労で破損されたインペラーがガイド板に接触し発熱し、ダクト内に付着したゴムが発火した。 |
事象 |
合成ゴム製造装置の仕上げ工程である乾燥設備において、排気ダクト付近での合成ゴム粉などが発火した。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
乾燥 |
物質 |
スチレンブタジエンゴム |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
2000年12月2日11:25 C系列の乾燥設備の連続運転を開始した。 12月3日07:25 連続運転中、装置の異常など無く勤務を交替した。(2交替勤務) 11:47 発災棟1階にいた作業員が異音を感知する。 11:50頃 作業員が発災棟の屋上からの黒煙の発生を確認した。 11:51 重合操作室の押ボタンにより自動火災報知設備を手動で発報させた。 11:53 C系列排気ダクト内の煙感知器(1個)が発報した。 11:56 C系列を緊急停止し、ダクト内自動消火設備を起動する。 この時、ブロワーは連動して停止した。 11:57 自衛消防隊が放水を開始した(屋上消火栓による初期消火)。 11:58 119番通報をした(当該事業所より直線距離で約550m離れた臨港消防署千鳥町出張所では、消防職員が黒煙上昇を確認し司令センターに通報した。一方、同時刻に事業所内保安センターからも通報した)。 |
原因 |
1.排気ファンが回転翼の破損によって回転が不安定となり、ダクト内部のガイド板に接触した。そのため、摩擦が起こり、その摩擦熱で周囲に付着していたゴムが着火し、火災となった。 2.ダクト内にはゴム粉が溜まりやすく、定期的に清掃しているが、清掃後付着したか、取りきれなかったと推測される。 |
対策 |
1.ファンの交換。破損していない同種のファンについても点検する。 2.ゴム等の可燃物の付着は避ける(清掃作業)。 |
知識化 |
1.排気ダクトには同伴する油分や樹脂分などが付着し、思いもかけないときに発災することがある。定期的に清掃することが望ましい。 2.回転機器類はその負荷が小さい、サイズが小さいと言っても回転に伴う各種の応力を受けている。十分に注意することが必要だろう。 |
背景 |
1.排気ファンは設置後30年間経過している。報告書ではどのような保守がされていたか不明である。ただし、同年8月にベアリング交換をしているが、外観上の異常はなかった。また、日常点検は外観点検だけであり、非破壊検査などは実施していない。このような状態で、30年間の停止、起動の繰り返し、タイロッドの調整、溶接時の残留応力などの小さな応力が加わることの繰り返しで疲労破壊したものと思われる。 2.重要機器でもないし、問題を起こしそうもないので、軽視してきたことが基本要因であろう。 |
データベース登録の 動機 |
排気ダクトはガス中の液や固形分が付着することがあり、それが事故につながった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、思い込み、使用、保守・修理、30年間補修せず、破損、破壊・損傷、疲労、不良現象、機械現象、摩擦、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額5千万円
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(2001)
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物的被害 |
排気ダクト、建物の屋根部分約300平方m焼損.建屋内電気、計装機器の水濡れ |
被害金額 |
5100万円(復旧対策費・推定)(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.排気ダクト図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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