事例名称 |
塩化ビニルモノマー製造装置の配管の落雷で火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年09月11日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
二塩化エタンから塩化ビニルモノマーを製造する装置のポンプ吐出配管が落雷時に破損し、火災事故になった。経年劣化による配管腐食、バルブの絞りによる乱流によるエロージョンに起因する局部的減肉があった。そこに、製造施設近くへの落雷の衝撃が加わり配管が折損した。経年劣化の原因は腐食性雰囲気にもかかわらずメンテナンスが不足していたとされた。定期的な保守点検を行うことが必要である。 |
事象 |
平常運転中の二塩化エタンから塩化ビニルモノマーと塩化水素を製造するプラントで平常運転をしていた。二塩化エタン分解炉出口にある急冷塔循環ポンプ吐出配管から、塩化ビニルモノマーと塩化水素が噴出し、火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
分解 |
物質 |
塩化ビニル(vinyl chloride)、図3 |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
定期修理工事から運転を再開し11日目午後、豪雨となった。落雷の衝撃と同時に急冷塔流量異常アラームが鳴る。ほぼ同時に火災が発生し、2度の爆発音の後、突然プラント全体が炎に包まれた。 |
原因 |
経年劣化による配管腐食、および、流量調節のため行っていた循環ポンプ出口弁の絞りによるエロージョンにより循環ポンプ出口配管は局部的に著しく減肉していた。さらに当該製造施設近くに落雷があり、これに伴って発生した振動が装置、配管類に伝わった。この振動が引き金となって、運転圧力と相まって、配管腐食を折損した。図2参照 |
対処 |
装置の緊急停止 |
対策 |
落雷対策と、落雷があっても配管折損がない様なまともな設備管理体制の確保 |
知識化 |
有害物の取り扱いでは漏洩に対する危険個所の抽出や、最悪シナリオを想定した安全対策を立てる。 |
背景 |
腐食性液体の配管にも関わらずメンテナンスが不足していた。報告書では、ポンプ吐出での流量調節をしていた弁はスルースバルブとの記述だけで、形式は明確ではないが、エロージョンを生ずる程の大きな乱流を作っていたようだ。腐食性液体に対し乱流を作るのは腐食を加速すると同じである。他のプロセスでも実例はある。乱流を作る箇所の材質選定と流量制御について正しい選択をしたのか疑問が残る。 |
データベース登録の 動機 |
プラントでの保守点検の重要性を認識させる事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、理解不足、リスク認識不足、使用、保守・修理、点検不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、熱流体現象、乱流によるエロージョン、破損、減肉、腐食、二次災害、損壊、爆発・火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額1400万円
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1988)、p.104-105、113
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1988)
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物的被害 |
急冷塔2基、急冷塔循環ポンプ及び周囲機器配管、電気配線等焼損.塩化ビニルモノマー、二塩化エタン等、約7t焼失 |
被害金額 |
1373万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.FTA図
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図3.化学式
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備考 |
定常作業 WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/移送 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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