事例名称 |
塩化メチレン回収ドラムの運搬中の破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年07月03日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
屋外駐車場 |
事例概要 |
駐車中のトラック荷台に積載されていた200Lのドラム缶が破裂した。内容物の廃塩化メチレンで1名が化学熱傷を生った。 塩素系溶剤がアルミニウムと共存すると、発熱的に反応しやすいことを認識していなかった。 |
事象 |
駐車中のトラック荷台に積載されていた200Lのドラム缶が破裂した。内容物は廃塩化メチレンで、1名が化学熱傷を負った。 |
プロセス |
廃棄 |
物質 |
塩化メチレン(methylene chloride)、図2 |
事故の種類 |
破裂 |
経過 |
機械部品の洗浄に用いた廃塩化メチレン200Lのドラム缶をトラックの荷台に積載し夜間放置した。深夜このドラム缶が突然破裂し、偶然トラックのそばにいた人が薬症を負った。 |
原因 |
この塩化メチレンはアルミニウムの切削に繰り返し使用されたもので、塩素を含む強酸になっていた。さらにアルミニウムの切り子が存在したため発熱反応を伴って水素が発生した。塩化メチレンの製造メーカの見解は、塩化メチレンは、定常状態で微量の塩化水素を発生するので、安定剤を加えてある。しかし、何年も交換洗浄などを怠った場合、添加された安定剤だけでは塩化水素の発生を抑えることができなくなる。 |
対策 |
1.部品などの洗浄に使った有機溶剤は、アルミニウムなど切り子や錆と混在させないために濾過除去を行う。 2.ガスが発生した場合安全な場所に放出する。 |
知識化 |
アルミニウムと塩素系有機物は発熱反応を起こすことが多い。廃棄物処理では混合による事故が起こりやすい。 |
背景 |
塩素系溶剤がアルミニウムと共存すると、反応しやすい(場合によっては発熱的に反応する)ことを認識していなかった。塩化メチレン製造者は、塩化メチレン取り扱いの技術資料を配布し、指導している。また、クロロカーボン衛生協会では、金属洗浄分野での塩化メチレンの適正使用に関して詳細なマニュアルを作成してある。さらに、塩化メチレンを含む廃棄物の処理は、関係法令を遵守するよう定められている。これらの法規制や指導が十分に理解されていなかった可能性がある。 |
よもやま話 |
使用で起こった事故で、やはり使う側に化学薬品の取扱いの知識が欠けていた。使用者も危険性を理解する必要がある。この事故以前にも同様の事故が発生しているとのことである。法律の規制を守る、業界団体や生産者の指導を受け入れる、といった基本的なことを末端まで徹底させることの難しさを示す事故なのかもしれない。 |
データベース登録の 動機 |
危険性物質の生成を予測できなかったことによる典型的な事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、情報連絡不足、使用、廃棄、内容確認せず、計画・設計、計画不良、廃棄物処理計画不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、第三者1名が薬傷
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(2000)
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
3tトラック1台破損。吹き飛んだドラム缶上蓋が民家2軒の屋根を破損。 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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備考 |
定常作業 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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