| 事例名称 | 付帯装置の完成前に貯蔵開始した屋外タンクの爆発・火災 | 
  | 代表図 |   | 
  
    | 事例発生日付 | 1989年07月10日 | 
  
    | 事例発生地 | 和歌山県 和歌山市 | 
  
    | 事例発生場所 | 油槽所 | 
  
    | 事例概要 | アクリル酸エチルの貯蔵タンクで、アクリル酸エチルが気化して、脱臭配管まで可燃性混合気で満たされた。溶接工事の火花で着火した。本来冷却装置が必要であったが、その完成前に溶剤を入れてしまい、可燃性混合気を発生させたという管理不十分の事故である。タンクに直結した配管の火気使用工事に対しても、タンクとの切り離しや配管の不活性ガスへの置き換えと言った安全維持の基本すら行われてない。 | 
  
    | 事象 | 付帯設備の冷凍装置が未完成な時に溶剤を受入れ、タンク内の有機溶剤が気化漏洩して着火した。 | 
  
    | プロセス | 貯蔵(液体) | 
  
    | 単位工程フロー | 図2.機器等の概要図 | 
  
    | 物質 | アクリル酸エチル(ethyl acrylate)、図3 | 
  
    | 事故の種類 | 爆発・火災 | 
  
    | 経過 | 1. アクリル酸エチルタンク専用の冷却設備の新設と脱臭装置への配管工事を行っていた。 2. 冷却設備の完成前にアクリル酸エチルを船から受入れた。
 3. 受入れから20日後脱臭配管の工事を火気使用で行っていた。
 4. 突如当該タンクが爆発炎上し、アクリル酸エチルが12時間燃え続けた。
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    | 原因 | 1.本来冷却装置が必要であったが、その完成前に溶剤を入れてしまった。そのため、外気温によって溶媒が気化しタンク気相部に可燃性混合気を形成した。 2.別タンクからタンクローリーへの積込みを行い、その時に脱臭塔へフィードするためブロワーを回した。当該タンクからの脱臭塔への配管のバルブの開放または漏れにより、脱臭配管に当該タンク気相部からの蒸気が入った。脱臭関係の蒸気配管は当該タンクを含む複数のタンクに共通である。
 3.脱臭配管末端で、増設工事が火気使用で行われた。
 4.溶接の火で配管内で引火し、タンクへ伝播した。
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    | 対策 | 安全管理の基本を守ることに尽きる。 | 
  
    | 知識化 | 1.安全に対する無関心、管理体制(指揮系統)の不備は事故を起こす最大の原因である。 2.悪臭・刺激性物質の放出事故は近隣住民への影響が大きいので、安全管理に特段の配慮が必要である。
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    | 背景 | 1.危険物タンクの気相部からの配管(脱臭配管)を、タンクと切り離しもパージもしないで、火気使用工事をしている。安全軽視のように見える。 2.安全対策設備が未完成のタンクに溶剤の貯蔵を開始した。本来なら冷却されて、気相部には可燃性混合気は形成されないはずであった。
 3.タンクから脱臭塔への蒸気配管に何ら注意しなかった。タンク内は温度を測定しながら、可燃性混合気が出来ていることに気が付かなかった。
 管理のミスとしか言いようがないであろう。
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    | データベース登録の 動機
 | 物質の火災危険性の認識が欠如していた事故例 | 
  
    | シナリオ | 
        
          | 主シナリオ | 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、無知、知識不足、勉学不足、使用、運転・使用、未完成装置の運転、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、気化・漏洩、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、2名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額9000万円 |  | 
  
    | 情報源 | 高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1990)、p.218-219,222 消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.32、98-99
 
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    | 負傷者数 | 2 | 
  
    | 物的被害 | タンク本体の破損(タンク屋根が飛び上部が熱で変形),アクリル酸エチル焼失. | 
  
    | 被害金額 | 9300万円(危険物に係る事故事例) | 
  
    | 社会への影響 | 燃え残ったアクリル酸エチルの悪臭が広範囲に拡散. | 
  
    | マルチメディアファイル | 図3.化学式 | 
  
    | 備考 | 定常操作 | 
  
    | 分野 | 化学物質・プラント | 
  
    | データ作成者 | 若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所) 田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
 
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