失敗事例

事例名称 爆薬圧填工室での爆発
代表図
事例発生日付 1996年04月16日
事例発生地 広島県 江田島町
事例発生場所 火薬工場
事例概要 火薬工場の圧填工室でPBX圧填による信管の製造作業、廃薬および不良品の処理準備作業が行なわれていた時に、当該工室に存置されていた火薬類が爆発し、当該工室で作業していた3名が死亡した。廃薬および不良品の処理準備作業で鋭感な火薬類が軽微な衝撃、静電気等で発火・爆発し、付近に存置されていた火薬類に爆発が伝播し大爆発に至ったと推定されている。
 PBX: plastic bonded explosive の略で爆薬の一種
事象 火薬工場の圧填工室に存置されていた火薬類が爆発し、当該工室で作業していた3名が死亡した。図2参照
プロセス 製造
単位工程 その他
物質 火薬(explosive)
爆薬(high explosive)
事故の種類 爆発
経過 1. 当該工室でどのような作業が実施されていたかは、工室にいた作業員が全て死亡しているので、確定はできない。PBX圧填による信管の製造作業あるいは廃薬および不良品の処理準備作業が行なわれていたと推定される。
2. 被災した作業員は1996年4月16日08:15に火薬課事務所を退出し、08:20頃圧填工室に到着して作業を開始した。08:35に爆発が起こった。
3. 近くにいた従業員の証言によると爆発は3回起こり、1回目の爆発音で白煙が上がり炎が見られた。2回目の爆発音で炎がさらに大きくなり、3回目の爆発で炎が工室の高さの1.5倍程度まで上がった。
原因 1.当該工室内の作業員が全て死亡していること、および爆発によって工室および工室内のものがほとんど飛び散ったため、原因の特定は困難である。存置されていた廃薬および不良品の処理準備作業で鋭感な火薬類が軽微な衝撃、静電気等で発火・爆発し、付近に存置されていた火薬類に次々爆発が伝播していき、大爆発に至ったと推定されている。
2.工室内に当日行なわれる製造作業に無関係な廃薬や不良品など多量の火薬類が存置されていたことが被害を大きくした。
対策 1.衝撃、静電気に鋭感な火薬類に対する安全対策の強化
2.製造保安管理マニュアルの整備
3.火薬類製造保安責任者による作業マニュアルの点検、現場作業の保安点検など保安確保の強化
4.保安教育の強化
知識化 火薬類の製造あるいは取扱工室に存置する火薬類は、当該作業に必要な最小限の量とする。特に鋭感な火薬類を製造あるいは取り扱う場合は、爆発しても被害を最小限に抑えられる量にするか、防護対策を講じる。
背景 1.当該事業所の火薬類に対する管理体制に日常の慣れがあった。
2.事業所の管理者が現場作業を十分把握していないことが常態化していた。
データベース登録の
動機
事業所の保安担当の幹部職員が現場の作業を十分チェックしていなかったと思われる事例
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、使用、輸送・貯蔵、貯蔵、不良行為、規則違反、法規違反、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、3名死亡、組織の損失、経済的損失、建物類15棟破損
情報源 平成8年重大災害の概要、安全年鑑、PAGE244
C化薬(株)E工場爆薬圧てん工室事故調査委員会、C化薬(株)E工場第4爆薬圧填工室で発生した事故に関する調査報告書(1997)
死者数 3
物的被害 当該工室全壊.その他周辺15の工室で屋根や窓等破損.油圧プレス,移動式エアプレス,移動式ニューマロックプレス,薬注自動圧さく機,作業台等損壊.火薬約1.9kg,爆薬約2.8kg飛散.
マルチメディアファイル 図2.被害状況写真
分野 化学物質・プラント
データ作成者 小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)