失敗事例

事例名称 自動車の塗装ロボットが故障のため緊急停止し、再立ち上げ時に火災
代表図
事例発生日付 1989年04月13日
事例発生地 神奈川県 座間市
事例発生場所 自動車工場
事例概要 1989年4月13日 自動車工場の吹付け塗装ラインが高電圧の異常で停止した。確認作業が不十分なまま塗装ブース内の高電圧異常を解除し、塗装作業を再稼働した時に発火した。
塗装作業がトルエン他の軽質炭化水素を使用する非常に発火しやすい環境であることに、関心が低かったと思われる。
事象 塗装作業中、自動車の塗装ラインが高電圧の異常により停止した。そのまま制御盤にて異常を解除し、再度ラインが作動したと同時に第3ブース、第1ステージボディ左側自動塗装ロボットの吹き付ガンから小炎が発生し、第3ブース、第4ブース及び混合ポンプ室等に延焼した。
プロセス 使用
物質 ラッカーシンナー
事故の種類 火災
経過 1989年4月13日00:00頃 火災が発生した。
 工場内の塗装ブースという特殊構造のため、特に濃煙熱気が強く、接近確認しがたく、また、ブース内等に塗料が付着していたため、立体的に燃焼拡大し、死角等も多く、消火活動は困難を極めた。
03:40 鎮火した。
原因 1.出火場所となった塗装ラインは、ボディ中塗り上塗り塗装と乾燥ラインである。作業中、ラインが停止したと同時に警報音が鳴り、上塗り静電塗装装置制御盤に高電圧異常ランプが点灯、その後解除ボタンを押したところボディ左側の塗装ロボット吹き付ガンから小炎が出ているのを作業員が目撃した。
2.ラインが停止した原因の確認が不十分な状況で再起動したことが原因であろう。着火原因は静電気火花と推定される。
対処 装置の緊急停止実施
対策 1.機械的異常が発生した場合、原因の究明及び処置を必ず行う。
2.初期消火活動(消火設備の有効利用)の訓練、教育を行う。
知識化 異常発生時には異常原因の確認、対策が済むまで、自動遮断装置の解除を行ってはならない。
背景 危険物を取り扱っているという認識が少なく、状況確認をしないで再稼働したと考えられる。危険物取扱いに関する管理者側の認識不足と作業員に対する教育の不足が真の要因と推定される。
データベース登録の
動機
塗装ブース内の高電圧異常による火災事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.3億円
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.31、262-263
物的被害 塗装ブース混合室付帯設備約2200平方m焼失(上塗りブース,上塗りオーブン,コンベアー,自動塗装機,塗料混合室,ラッカーシンナー,ラッカー,メラミンアルキド被害).
被害金額 1億3000万円(危険物に係る事故事例)
マルチメディアファイル 図2.機器概要図
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)