失敗事例

事例名称 廃油再生工場で軽質油が蒸発し爆発・火災
代表図
事例発生日付 1975年08月30日
事例発生地 愛媛県 東予市
事例発生場所 廃油処理工場
事例概要 おもにタンカーからの廃油を再生する工場で、終業時に爆発が起こった。室内タンクからの可燃性ガスの発生が通常より多かったが、従業員は気にしなかったようである。そのガスが、何らかの火源で爆発したもので、被害が非常に大きくなった。危険物を取り扱っている意識が感じられない設備、運転法であり、管理者、経営者の責任であろう。
事象 タンカーの廃油を再生する工場で、いつもと同じように運転し、いつもと同じように終業作業を始めた。そのときに爆発事故が起こった。タンカーからの水、油混じりの廃液を水油分離装置を経て屋内の上部開放型のタンクへ移送する。加熱・洗浄等の通常の作業を行い、回収油タンクへ再生油を送っていた。終業のため電源スイッチを切った時に爆発火災が起こった。さらに屋外設置の1,000kL受入タンクと1,500kLの回収タンクが火災、爆発を起こした。なお、水油分離装置で発生するガスは高さ30mの排ガス塔から放散されるが、建物内の加熱槽他から発生する可燃性ガスを換気する設備は情報源資料には記録がない。
プロセス 製造
単位工程 廃油回収
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 廃油(waste_oil)
事故の種類 爆発・火災
経過 1. 一日平常通りの運転であった。
2. 終業のため、電気機器の電源を切断したところ、突然爆発が起こった。
原因 1.当日処理していた油は軽質分が多かった。それを通常通りに開放型の加熱槽で70℃まで加熱した。そのため、加熱槽あるいはその後の工程で、可燃性ガスが大量に発生し、室内に可燃性ガスが充満した。昼間だけの作業であり、終業するため電気機器の電源切断等のスパークで引火した。大量の可燃性ガスの発生があったが、従業員は気にしていなかったと思われる。ただし、作業に従事していた者が死亡しているので、詳細は不明である。
2.可燃性ガスの管理と非防爆の電気設備が直接原因であろう。
対処 自衛消防隊及び公設消防隊による消火活動
対策 取り扱う廃油の性状に応じた安全な設備と安全な取扱い法を確立する。
1.受入廃油の性状把握を行い、性状に応じた処理法を定める。
2.加熱槽以下を密閉系にして、生成ガスの安全な放散設備を作る。
3.電気設備を防爆性能を有するものにする。
知識化 1.廃油は、色々なものが混じり合っているため、危険性が高い。
2.従業員は気にせず、作業をしていたが、従業員の危険性への意識教育が重要である。
背景 上部開放型の加熱槽や回収油タンクでは、軽質ガスはタンク外に放散されやすい。受入廃油に軽質分が多ければ軽質ガスの放散量も多い。タンクが室内にあったので、濃度が上がることは当然であろう。従業員は、慣れのためか気にしていなかった。この様な設備と運転を放置していた管理者、経営者の責任は大きいと思われる。
よもやま話 ☆ 通行人も巻き込む大事故になった。廃油処理を含む産業廃棄物の事故は、この後も増加傾向にある。
☆ 日本の産業構造の二重化が生んだ事故に見えてならない。中小あるいは零細な化学工場の安全技術や意識の向上が必要な実例だが、どうしたらいいのだろうか。
データベース登録の
動機
廃油中に軽質分があることを放置して作業を継続し、事故が起こった典型的な危険性軽視の例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、爆発・火災、身体的被害、死亡、8名死亡、身体的被害、負傷、5名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額5000万円
情報源 消防庁、危険物製造所等の事故事例集-昭和50年(1976)、p.356-357
労働省、NM(廃油処理業者)における爆発災害概要、(1975)
労働省安全衛生部安全課、新版 労働災害の事例と対策、中央労働災害防止協会(1984)、p.214-215
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.92-94
死者数 8
負傷者数 5
物的被害 清浄機室164.9平方m、鉄骨スレート造全壊全焼。ボイラ室203.2平方m全壊。回収タンク1500立方m天井一部炸裂。周囲建屋約10棟窓等一部損傷(労働省による)。
清浄機室147平方m、ボイラ室200平方m、計347平方m全焼。タンク3機上部炎上、一部破損(消防庁による)。
被害金額 推定5,000万円(消防庁による)
備考 未燃焼の廃油が海洋を汚染した可能性はある。
分野 化学物質・プラント
データ作成者 古積 博 (独立行政法人消防研究所)
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)