事例名称 |
液体窒素で周辺空気の酸素が液化しベンゼンが爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年01月17日 |
事例発生地 |
岐阜県 揖斐川町 |
事例発生場所 |
電子部品工場 |
事例概要 |
液体窒素の冷熱を利用してセラミックスとベンゼン等の溶剤を凍結乾燥していた。液体窒素温度(-196℃)で酸素が液化し、凍結体中のベンゼンなどと爆発的に反応した。液体窒素の使用による液体酸素と可燃物の混合発火事故は以前より発生していたが、事故を学習していなかったため防止策がとられていなかった。 |
事象 |
セラミックス基板製造所で新規セラミックスの試験製造を行っていた。セラミックスを顆粒化する工程でセラミックスの粉末と溶剤ベンゼンを撹拌混合し、さらに-196℃の液体窒素を吹き付け、凍結乾燥してセラミックス粒子を得た。そのセラミックス粒子をステンレス製シャベルで容器からバットに移し換え、そのまま乾燥機に入れている時、爆発が起こった。 |
プロセス |
使用 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
ベンゼン(benzene)、図3 |
窒化アルミニウム(aluminium_nitride)、図4 |
窒素(nitrogen)、図5 |
アクリル樹脂系接着剤(acrylic_resin_adhesives) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. セラミックス粉末とベンゼン1トンを混合した後液体窒素で凍結した(-196℃)。 2. ついで凍結体をスコップで別の容器に移す作業を開始した。 3. 1991年1月17日14時15分に突然爆発が起こった |
原因 |
液体窒素温度(-196℃)で空気中の酸素(沸点 -183℃)が凝縮し、凍結体中のベンゼンと液体酸素爆薬を形成し爆発的に反応したものと推定された。先行する事故例もある。高濃度のベンゼン蒸気が作業室内に充満していたが、それが事故原因かははっきりしない。発火原因は移し替え時の摩擦、衝撃と推定されている。 |
対処 |
負傷者を急送 |
対策 |
1.液体窒素を使用する冷却工程では可燃性溶剤を使用しない。 2.液体窒素温度の表面を空気から遮断する。 3.着火源を排除する(機械的刺激や静電気など)。 |
知識化 |
液体窒素を使用する工程では空気中の酸素が部分的に凝縮し、有機物と混合すると爆発する危険性がある。 |
背景 |
液体窒素温度では空気中の酸素が凝縮して可燃物と爆発性混合物を生成する危険性が認識されていなかった。試験製造のため、十分な調査、研究がなされていなかった可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
危険性があまり知られていない液体窒素による事故 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、調査・検討の不足、事前検討不足、作業環境の検討不足、使用、運転・使用、液体窒素の使用、不良現象、化学現象、凍結、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、2名死亡、身体的被害、負傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成3年(1992)、p.306-309
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成4年版(1992)、p.246、252
松井英憲、安全工学、No.172、p.47-53(1993)
駒宮功額、安全工学、No263、p.122-127(1998)
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死者数 |
2 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
一般取扱所内の各設備全て(ボールミル混合機,移送ポンプ,攪拌槽等)破損(消防庁による)。 隣接工場も大破(高圧ガス保安協会による)。 乾燥機、鉄板屋根破壊(中日新聞による)。 |
被害金額 |
700万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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図5.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/混合 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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