失敗事例

事例名称 精製粉末アントラセンの計量ホッパー内での爆発
代表図
事例発生日付 1986年04月02日
事例発生地 千葉県 市川市
事例発生場所 化学工場
事例概要 精製した粉体アントラセンを計量ホッパーから製品ホッパーへ落とす時にホッパーを木槌で叩いた。次の作業で、計量ホッパー上部のクッションホッパーからアントラセン30kgを落下させた。計量ホッパーに浮遊し、爆発範囲に入っていたアントラセン粒子に着火し、爆発が起こった。落下時の静電気発生が着火源と推定された。
危険性の意識が希薄であったと思われる。
事象 精製した粉体のアントラセンの計量作業中に爆発が起こった。計量後の製品を計量ホッパーから製品ホッパーへ落とした。次に計量する分を、クッションホッパーから、計量ホッパーに落下させた。その瞬間に、「ドン」という音を伴い、ホッパーの接続部が焼損し、熱風が噴き出した。アントラセンが粉じん爆発を起こした。
プロセス 製造
単位工程 溜出・取出し
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 アントラセン(anthracene)、図3
事故の種類 爆発
経過 精製アントラセンを計量ホッパーで計量後、製品ホッパーへ抜出す作業をしていた。計量ホッパーから製品ホッパーへの落下時に、計量ホッパーの付着品を落すため、木槌で叩いた。全量を製品ホッパーに移送後、計量ホッパーとその上部のクッションホッパーとの間のカットゲートを開けた。クッションホッパーに有った30kgのアントラセンが落下した1~2秒後に、爆発が起こった。計量ホッパーはアースされていた。
原因 アントラセン粒子は細かいので、計量ホッパー内では浮遊し爆発範囲に入っていた。クッションホッパーから大量のアントラセンを落下させた時に静電気が発生し、浮遊粒子に着火した。
対策 1.アースを完全に取る。計量ホッパーだけだなく、設備全体をアースし、ホッパー内空気を帯電しにくいようにする。
2.ホッパー内の酸素濃度を抑制する。窒素置換などを検討する。
3.浮遊粉塵を減らすよう、移送方法を変更する。
知識化 固体粒子でも細粒は浮遊しやすく、粉塵爆発などの原因にもなる。揮発性の液体と同様の注意が必要である。
背景 危険な状態にあるとの認識がなかった。具体的には、
1.粉体が浮遊して爆発範囲に入る可能性があった。
2.アースが完全でなかった。特に浮遊物のアースは難しい。
よもやま話 よく分からない事故である。事故報告書によれば、事故時の作業方法も通常通りと思われる。事故が起こったときの作業に、何か変わったことがあったのか、それとも常に爆発の危険性を内在した作業であったのか、不明である。木槌で叩いたことが指摘されているが、そのことが浮遊粉じんを増やしたとは書かれていない。
データベース登録の
動機
固体粉末の爆発例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、使用、運転・使用、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、熱流体現象、帯電、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷
情報源 中央労働災害防止協会、災害発生状況の詳細(1986)
中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.644、中央労働災害防止協会ホームページ
死者数 0
負傷者数 1
物的被害 クッションホッパーと計量ホッパーのジョイント部分のキャンバスが焼損
マルチメディアファイル 図3.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)