失敗事例

事例名称 半導体製造工場の排気配管の開放時における蓄積物の爆発
代表図
事例発生日付 1996年08月14日
事例発生地 富山県 魚津市
事例発生場所 半導体製造工場
事例概要 半導体製造工場で、プラズマCVD装置の排気管の通常の清掃作業を行った。お互いに見えない場所に位置して、連絡を取りながら、仕切りフランジの開放などを行ったが、連絡がうまく取れず、作業手順が相前後して、火災爆発を起こした。半導体関係の排気系は危険なものが多いが、そこの工事にしては安易な方法である感じがする。コミニュケーションに問題があったが、より間違いの起こりにくいコミニュケーションの技術を考えるべきと思われる。
事象 プラズマCVD装置の排気配管で定期的に行っている管内蓄積物の清掃作業のため、閉止板(閉止フランジ)を作業員が外した。1~5分後に配管内で爆発が発生した。
プロセス 使用
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 非晶化水素化ケイ素化合物、図3
水素(hydrogen)、図4
事故の種類 爆発
経過 配管清掃のため天井裏に作業員A、B、屋上に作業員Cが配置につき、無線で連絡をとりながら作業を開始した。清掃作業は、排気配管の閉止フランジをAが取り外して、そこから空気を吸入し、フランジ付近に堆積している粉体を約44m先にあるスクラバーにおくって処理する作業である。Cが作業基準どおりに除害装置バイパスラインのバルブを開き、除害装置出入り口のバルブを閉止して、除害装置をラインから切り離す作業を開始した。Aより「開けて良いか?」との無線連絡があったので、Cは「まだです」と返答した。そしてCが、ダンパーの開閉作業を行っている頃背圧アラームが鳴った。続いて除害装置のバイパスバルブを開き始めた頃爆発が発生した。正しい手順は、除害設備がバイパスされてから、末端の閉止フランジを開放する。図2参照
原因 以下のように推定された。
1.排気管内には、副生成物として形成された微粉状のSiOxNyHz(非晶化水素化窒化ケイ素化合物)が蓄積していた。
2.バルブ操作のミスによりこの粉が除害装置へ吹き飛ばされ、そこで水と反応して水素を発生した。
3.この水素が除害装置内のヒーターの熱が着火源となり小爆発を起こした。
4.この爆風により、排気管内の上記微粉が、粉塵爆発を起こした。
対策 1.副生成物の危険有害性を調査する。
2.設備等の改善を行う。
3.作業計画の作成と周知を行う。
4.作業手順を定め、的確な作業を実施する。
5.引火性・可燃性の物質を取り扱う作業については、把握した情報に基づいて安全な作業手順を定める。
6.安全衛生教育を徹底する。
知識化 グループ作業の時には、全員が作業内容を十分に理解し、よくコミニュケーションをとることがで重要である。
背景 バルブ操作のミスというヒューマンエラーではある。しかし、危険性を考慮したら、手順ミスが起きないように、設備管理側に何らかの工夫が必要だった。
データベース登録の
動機
今後、増加が予想される半導体製造における事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、手順の不遵守、連絡不足、確認不足、計画・設計、計画不良、工事計画不良、誤対応行為、連絡不備、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡
情報源 中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.100167、中央労働災害防止協会ホームページ
爆発死亡事故調査委員、爆発事故原因調査報告書(1996)
死者数 1
負傷者数 0
物的被害 フランジ開口部付近に軽微な被害
マルチメディアファイル 図3.化学式
図4.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)