失敗事例

事例名称 想定外物質の混入による廃液タンクの中和処理中の爆発
代表図
事例発生日付 1999年09月16日
事例発生地 千葉県 市川市
事例発生場所 化学工場
事例概要 半導体用感光剤製造装置の廃液処理タンクで爆発が起こった。中和処理に使った水酸化ナトリウムが、他装置の洗浄に使用したものの再使用であったため引火性物質であるジブチルエーテルの液を含んでいた。そのため、可燃性蒸気が発生し、そこに静電気火花により引火した。再使用物質の使用には十分な配慮が必要である。
事象 半導体用感光剤の製造装置の廃液タンクで爆発が起こった。第2種自己反応性物資である商品名NAC-5の廃液タンクに、ベンゼンを主体とする溶媒の水分解部で排出される酸性廃液(非危険物)2,400Lを受け入れた。中和処理用の液体水酸化ナトリウム350Lを同タンクに受け入れた。タンク内液を循環、攪拌するためポンプの起動を行い、循環用配管のバルブを開放した瞬間、タンクが爆発炎上した。1名が軽傷を負った。
プロセス 製造
単位工程 廃水・廃油処理
物質 ジブチルエーテル(dibutyl ether)、図2
水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、図3
事故の種類 爆発・火災
経過 1999年9月16日12:22頃 爆発発生
12:43 鎮火
原因 酸性廃液を中和処理するために使用した液体水酸化ナトリウムは、他装置で生じた第2石油類(ジブチルエーテル)の洗浄に使用した液の再使用品であった。そのためジブチルエーテルの液(推定100L)が混入しており、酸性廃液タンクの気相部にジブチルエーテルの可燃性混合気を形成した。中和処理を促進するための循環攪拌用ポンプを起動し、循環用配管のバルブを開放するまでの間に、ポンプ及び配管内滞液が流動摩擦により帯電状態となり、バルブの開放により滞液がタンク気相部に放出された時点で放電し、可燃性混合気に着火、爆発したものと推定される。
対処 手動による装置の緊急停止、粉末消火器による初期消火
対策 1. 廃液タンクへの引火性液体混入防止対策
2. FRP製タンク、テフロンライニング配管の接地対策
3. 再使用水酸化ナトリウムの安全管理運用
知識化 廃液処理用薬品に再使用品を用い、不純物混入に注意を払わなかったために爆発炎上事故となった。廃液処理といえども混入物は重大な事故の危険性を有するので注意が必要。
背景 引火性物質を含む再使用の水酸化ナトリウム溶液を安易に用いたことが最大の要因であろう。廃水・廃液はプロセスで使用している間に接触した物質が溶解したり、完全な分離が出来ずに各種の物質が共存しているという特質がある。作業者も管理者も、その危険性を意識していない。プロセス廃液に対する基本的認識のミスであろう。
データベース登録の
動機
想定外物質混入による廃液タンクの爆発例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、化学現象、発熱・発火、二次災害、損壊、爆発・火災、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、損害額1600万円
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例‐平成11年(2000)、p.62-64
死者数 0
負傷者数 1
物的被害 廃液タンク(V-209A)1基焼損.周辺のスクラバー及びブロワー1台焼損.配管(テフロンライニング管)、ポンプ及び乾燥設備用配電盤等焼損.
被害金額 約1,600万円(消防庁による)
マルチメディアファイル 図2.化学式
図3.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)