事例名称 |
製薬工場においてビタミン剤を乾燥中に気化したエタノールの排気不全による爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年07月03日 |
事例発生地 |
岐阜県 岐阜市 |
事例発生場所 |
医薬品製造工場 |
事例概要 |
製薬工場でビタミン剤の乾燥中、気化したエタノールが電気火花により爆発した。原因は、乾燥設備に取り付けた排気装置が、スイッチの入れ忘れか電気的トラブルのため稼働しておらず、乾燥設備の電気火花により着火した。日常点検や定期検査がなされておらず、管理のまずさが事故を引き起こした。 |
事象 |
製薬工場でビタミン剤の原料を練り合わせ、製品とするためエタノールを乾燥中、非危険物用の乾燥設備に取り付けた排気装置が稼働しておらず、滞留したエタノールが電気火花により爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
乾燥 |
物質 |
エタノール(ethanol)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1998年7月3日08:40 ビタミン剤を製造するため、各原料を計量した。 09:30 原料を練り合わせた。 10:00 練った原料を押し出し造粒機に入れ、棒状の顆粒とし、網皿17枚に敷き詰めた。 10:10 網皿17枚を専用台車に載せて隣室の乾燥設備に運び入れ、乾燥工程を始めた。 11:14 乾燥室で爆発が生じ、5名が負傷した。 ただちに消火作業を行った。 |
原因 |
使用していた乾燥設備は製品専用の乾燥設備であるが危険物用ではないので、別に排気装置を取り付けていた。しかし、スイッチを入れ忘れたか、あるいは電気的故障のため結果的に稼働していなかった。また、塵埃が溜まっていたため自然排気も有効になされなかった。このため、気化したエタノールが乾燥設備の外へ漏れ、乾燥設備かその操作盤での電気火花により爆発したとみられる。 |
対処 |
消火作業 |
対策 |
1.日常の点検と清掃、定期検査を確実に実施する。 2.電気設備を防爆型とする。 3.危険物乾燥設備には爆発放散口などを設置する。 4.乾燥設備の作業主任者を選任し管理を明確にする。 5.作業標準の作成と、従業員の安全教育を行う。 |
知識化 |
1.製薬工場において、エタノールはなじみの物質と思われるが、常温において可燃性混合気を作る。 2.可燃性物質を含有する物品の乾燥は、通常の乾燥設備で行ってはならない。必ず、爆発放散口などを備えた危険物用の乾燥設備を使用する必要がある。 |
背景 |
以下のことから、安全管理意識の欠落と考えられる。管理責任であろう。 1.乾燥設備と排気装置などの日常点検、清掃、整備がほとんど行われていなかった。 2.定期自主検査を実施していなかった。 3.危険物を取り扱うための安全教育が不十分であった。 4.作業標準はあったが周知されていなかった。 5.異常時の作業標準が作成されていなかった。 |
よもやま話 |
☆ メタノールの燃焼火炎は見にくいので、注意を要する。 |
データベース登録の 動機 |
無知か怠慢か、危険物蒸気の存在が忘れられているような例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、計画・設計、計画不良、操業計画不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、電気故障、断線、二次災害、損壊、漏洩・火災、身体的被害、負傷、5名負傷
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情報源 |
平成10年重大災害の概要、安全年鑑、p.274
産業安全研究所資料(非公開)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
6 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/乾燥 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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