事例名称 |
コークス炉ガス精製装置の脱硫再生塔の清掃作業中のコークス炉ガスの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年05月27日 |
事例発生地 |
茨城県 鹿嶋市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
コークス炉ガスの処理塔の開放作業中に爆発事故が起こった。詳細は不明であるが,原因が隣接する吸収塔からのコークス炉ガスの逆流であるとしたら,直径1mの電動の閉止バルブが完全に閉止する前提での作業方法が問題である。バルブの内漏れはある程度考える必要がある。また、非防爆型の電気器具の使用が着火源とされており、その点も問題であろう。 |
事象 |
コークス炉ガス精製製造所の脱硫再生塔で、塔底部に溜まった硫黄やアンモニアを含むスラッジをバキューム車で取り除いていたところ爆発した。 コークス炉ガス精製製造所: コークス炉ガスをガス精製工程で精製し、粗ベンゼンなどを分離精製し、残分を燃料ガスとして精製する装置である。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
コークス炉ガス(coke_oven_gas) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1998年5月11日 脱硫再生塔を停止し、塔底部の清掃作業を開始した。 5月27日09:40 塔底部から硫黄とアンモニアが混入したスラッジをバキューム車で取り出す作業中に突然塔底部で爆発が起こった。 |
原因 |
再生塔内のスラッジ除去に当たり,コークス炉ガスラインの液封およびバルブ閉止が原則であるが,これが不完全であった。 再生塔と直結する吸収塔にはコークス炉ガスを残している。再生塔から吸収塔へは直径1mの液の主配管が行き、それから分岐した直径150mmの枝管が再生塔へ戻っている。主配管の電動弁を閉めて主配管の吸収塔側に液を溜めて枝管にも液ヘッドを立てて、液シールで吸収塔と再生塔を縁切りしていた。事故原因が特定されていないが,情報源にある危険物施設安全推進講演会テキストの再現テストが正しいとすると、電動弁が完全に閉まらず微開だったため液が洩れて枝管側の液シールが切れて、コークス炉ガスが再生塔に流入した。そのため、コークス炉ガスが再生塔に流入し,再生塔内で使用していた投光器のプラグまたは電球の接点のスパークにより引火したと考えられる。 |
対処 |
屋外消火栓にて塔内,塔外を冷却放水を行い、その後窒素封入を実施した。 |
知識化 |
予想可能な危険は排除すべきである。 |
背景 |
この工事の安全確保は、直径1mの配管のバルブが完全に漏れない前提であった。もしも、バルブが洩れれば、水封が破れて可燃性ガスの流入が考えられる。現実問題としてある程度は漏れることを前提にしなければならない。まして直径が1mもあれば洩れることは考えに入れる必要がある。設備の過信が判断を甘くした。大気開放で作業している機器と可燃性ガスの残っている機器をバルブ一つで常に縁切りできるとは考えにくい。 |
よもやま話 |
☆ バルブは洩れることがある、逆止弁は逆流することがあると考えて安全対策をするのが、基本だが、しばしば忘れられることがある。 |
データベース登録の 動機 |
危険を予想することを行っていたかどうか考えさせられる例。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、無知、知識不足、思い込み、計画・設計、計画不良、停止計画不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、熱流体現象、逆流、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、5名負傷、組織の損失、経済的損失、損害額2,000万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成10年(1999)、p.44-45
石山寛義、危険物施設安全推進講演会テキスト(1999)、p.17-44
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
6 |
物的被害 |
周辺建屋の外壁,窓ガラス一部損傷. |
被害金額 |
約1,800万円(消防庁による). |
備考 |
爆発は工場内にとどまったので環境への放出はコークス炉ガス、アンモニアガスにとどまったと考えられる。どちらも環境影響はないと考えられる。 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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