失敗事例

事例名称 タワー式クローラクレーン(150トン)が荷下ろし中に倒壊した
代表図
事例発生日付 1998年06月01日
事例発生地 北海道小樽市
事例発生場所 総合体育館建設現場
事例概要 ・仮設部材(コラムステージ約30キログラム )の荷下げ作業中、タワークレーンのマストブームが根元で挫屈するように倒れた。
・倒壊したタワーブーム及びジブは隣接している他のJV企業の建設工区内まで及んだ。
・倒壊時に隣接工区内で作業をしていた作業員(とび工)2名が当該機に仕込まれているワイヤーに接触し負傷した。
経過 1998.6.1PM1:50頃、北海道小樽市の総合体育館建設現場でタワー式クローラクレーンにて荷下ろし中にブーム及びジブが後方へ反転し、地上へ降下し倒壊した。
原因 ・交換要員したオペレータへの引継ぎが不十分であった。
・事故を起こしたオペレータの経験不足(ラフテレーンクレーン等の経験は十分であったがタワー式クローラクレーンの運転期間は短かった。)
・オペレータの誤操作によるマストを巻き上げ過ぎた。
・バックステーに仕様と異なるコマを挿入してあったために、設計寸法より長くなり、極限モーメントリミッターより先に荷重がかかった。
・マストブームの根元に極限モーメントリミッターが取り付けられているために回転変位が小さく調整しにくかった。
・タワーバックストップスプリングが密着状態で、更にタワーブームを巻き上げたため、バックストップが挫屈し後方へ転倒したがバックストップスプリングの長さ調整用スペーサが標準品でなかった。
対策 ・ラッフィング(マストの起伏)は微速で行い、複合操作は絶対に禁止する。
・経験が少ないオペレータや、交換要員には、操作方法、安全装置等について十分な実地教育をした後に乗車させる。
・組立時、始業点検時に安全装置の点検結果を報告させて、異常のないことを確認する。
・重要な調整、部品の交換等については報告させ、メーカと協議の上で問題の有無の検討・確認をする。
・新規に作業現場に入場する時は、資格証、安全衛生教育修了証およびオペレータの当該機械に対する運転経験も確認する。
知識化 ・切るな!切らすな!安全装置
・部品交換は安全交換
・基本に勝る安全なし!
背景 ・安全装置の点検不足(難解であり点検項目が多すぎる)
・安全装置に対する過信(コンピュータ万能過信)
・安全装置解除行為の習慣化(現場もオペも機種の大小に関係なく)
・安全装置に対する知識不足(機能、取扱い、点検等)
・難解な安全装置
・建設現場での傾斜タワー仕様の増加(狭い現場での作業)
・安全装置の変遷(用語、装置が各社バラバラ)
後日談 (1)(社)日本クレーン協会に「移動式クレーンの運転能力向上検討委員会」を設置し、タワー式クレーンの事故防止を検討しその結果は
・教育用テキストを作成
・教育用ビデオを作成
した。
(2)メーカ加盟の(社)日本建設機械工業会の「クローラクレーン分科会」においてタワー式クローラクレーンの安全装置の向上・統一化を検討
・2001年1月以降発売の機種に付いては各種安全装置を2重安全装置にするなど大幅な改善が行われた。
当事者ヒアリング (オペレータの証言)ブーム角度85°、ジブ角度65°からジブを降下側へ操作後、ガキンという異音が運転席後方から発し、ブームがわずか前方に傾き、ブームが反転し始めた。この間の所要時間は2秒程度の瞬間的な出来事で何も対応することができなかった。
データベース登録の
動機
重大災害が増加傾向にあり物的人的被害が大きいため
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、材料手配不備、定常操作、誤操作、安全措置への過信、定常操作、誤操作、過巻き、破損、変形、座屈、破損、大規模破損、倒壊、身体的被害、負傷
情報源 タワー式クローラクレーン従事者に対する安全教育用事例
負傷者数 2
物的被害 ブーム
被害金額 約5千万円
社会への影響 人的災害が伴うとメディアの的になり社会問題となる
分野 建設
データ作成者 荻島 直志 (社団法人 全国クレーン建設業協会)
國島 正彦 (東京大学)