失敗事例

事例名称 緊急地方道路整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないもの
代表図
事例発生日付 1991年
事例発生地 岩手県稗貫郡大迫町
事例発生場所 工事現場
事例概要  道路を改良する際、モルタル吹付工の施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工で施工した法面には多数の亀裂が発生した。したがって、この工事はその目的を達成しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,110,400円が不当と認められた。
事象  この事業におけるモルタル吹付工921.9m2は、設計図書などによると、法面を清掃した後、次のように施工することとしていた。
(ア)モルタル吹付層を補強するため、法面の全面に菱形金網(網目5センチ×5センチ)を布設する。金網は、吹き付けたモルタルの層のほぼ中央に位置するよう、100m2当たり180箇所で、アンカーピン及びスペーサを使用して支持・固定する。
(イ)モルタルは、法面に直角に設置した検測ピンで吹付け厚さを確認しながら、圧縮空気を使用して厚さ10センチに吹き付ける。ただし、検査基準上許容される最小吹付け厚さ(以下「許容値」という。)は8センチ、平均吹付け厚さは10センチ以上とする。
(ウ)吹付箇所に付着しないで周囲に飛び散ったはね返り材等は、モルタルの付着を害さないよう取り除く。
 しかし、モルタル吹付工で施工した法面を検査したところ、多数の亀裂が発生していた。法面921.9m2について計113箇所削孔して調査したところ、72箇所590.4m2については次のような状況となっていた。
(ア)モルタルの吹付け厚さが許容値の8センチ未満となっている箇所が52箇所(平均吹付け厚さ6.0センチ)あり、なかには3.6センチと著しく不足している箇所もあった。
(イ)地山とモルタル吹付層との間にはね返り材等が残存していて、モルタルが地山に密着していないものが21箇所あった。
(ウ)金網が地山に直接張り付いているものが36箇所あった。
経過 ・道路を改良するため、土工、路盤工、モルタル吹付工などを実施する補助事業を工事費34,108,450円(国庫補助金20,465,070円)で実施した。
・モルタル吹付工の施工に当たって、吹付け厚さの確認が十分でなかったり、はね返り材などを十分取り除かったり、モルタル吹付け時に地山に張り付いていた金網を所定の位置に戻さずに吹き付けたりしていたなど、施工が粗雑であった。
・モルタル吹付工で施工した法面には多数の亀裂が発生した。
・この工事はその目的を達成しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,110,400円が不当と認められた。
原因  以下の3つの原因が考えられる。第一に、モルタルの吹付け厚さが著しく不足しているところから推測するに、現場の施工者の技術力不足があげられる。次に、施工者自身の気の緩みが原因で、単純なミスを犯している。最後に、現場における管理の緩みにより、こうしたミスを見つけることが出来なかったのも、この事象が発生した要因のひとつであると考えられる。
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、構成員不良、作業員資質不足、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、不良行為、倫理道徳違反、インチキ、破損、破壊・損傷、亀裂
情報源 平成4年度決算検査報告(会計検査院)
被害金額 不当と認められる国庫補助金交付額 3,110,400円
マルチメディアファイル 図2.施工概念図
分野 建設
データ作成者 宮木 裕也 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)