失敗事例

事例名称 函渠の支保工倒壊事故
代表図
事例発生日付 2000年01月
事例発生地 大分県
事例発生場所 インターチェンジ改良工事現場
事例概要 函渠の拡幅工事において、函渠頂版を支えていた左右中央の型枠支保工のうち中央部が生コンクリート打設中に倒壊し、生コンクリートや型枠鋼材等が車道に落下した。
事象 現道上における函渠コンクリート打設中に、函渠頂版を支えていた中央部の型枠支保工(H=6,500mm)が上部からの生コンクリート等の荷重に押しつぶされ倒壊し、生コンクリートや型枠鋼材等が車道上に落下した。そのため、車道が12時間通行止めとなった。人災・物損事故等は発生しなかった。
経過 ・当初計画では、中央部の支保工の支柱幅は900mmであった。
・現況道路幅の制約から中央部の支保工の支柱幅を700mmに変更した。
・下請会社が支保工の部材数量の拾い出しを間違えた。(水平部材と鉛直ブレースの部材数量が不足していた)
・間違えた数量の支保工部材を搬入した。
・下請会社は図面を確認せずに水平部材と鉛直ブレースが不足した支保工を組んだ。(設計では水平部材が9本、鉛直ブレースが8つの面に取付けられるものが、現地では部材間隔を広くし、水平部材が4本、鉛直ブレースが4つの面にしか取付けられなかった)
・生コンクリート打設中に上載荷重が中央部の支保工支柱や鉛直ブレースの保有している強度を超過し、中央部の支保工が座屈し倒壊した。
原因 ・下請会社が支保工の部材数量の拾い出しを間違えた。
・下請会社は間違えた部材を現場に搬入し、図面との確認を行わずに組み立てた。
・下請会社の型枠支保工の組立等作業主任者は、組立完了後、図面との照合を行わなかった。
・元請会社は、支保工の組立前(図面、部材確認)、組立中及び組立後の段階において、点検チェックを実施しなかった。
対処 ・発注者は、事故調査委員会を設置した。
・事故発生翌日、防災ドクター(学識経験者)を交えて現地調査を行った。その後、事故原因究明会議を7回実施し、事故調査委員会より支保工倒壊事故について記者発表を行った。
・発注者側では、以下の事項について文書通知を行い、安全対策の強化を図った。
  ・工事現場の安全点検について。
  ・現道通行を確保しながらの上下空間等の工事に係る安全確認。
  ・公衆災害が発生する危険性のある工事について。
  ・建設工事の安全対策並びに監督、検査体制の強化等について。
  ・建設工事の安全対策に向けた取り組み強化について。
  ・工事事故撲滅運動に関する取り組み。
  ・仮設を伴う工事の監督等について。
知識化 ・図面と施工の照合を確実に行う。
・元請、下請による必要な点検を徹底する。
背景 ・元請会社の社員は図面作成、関係機関との協議資料の作成に追われていた。
・元請会社は支保工の支柱幅を900mmから700mmに変更したことを労働基準監督署に報告していなかった。
後日談 ・元請会社に対して、2ヶ月間の指名停止措置が取られた。
当事者ヒアリング ・下請会社は、組立後、搬入部材が余ったにもかかわらず、よくあることと気にしなかった様子。
データベース登録の
動機
この事故は、元請会社、下請会社の関係者による仮設構造物に対するチェック機能が働かなかったことにより発生した。この事故の教訓から、簡単な作業、慣れた作業であっても、チェックすることの重要性を知ってもらいたい。
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不足、手順の不遵守、手順無視、点検・手順無視、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、計画・設計、計画不良、設計不良、誤対応行為、連絡不備、点検不十分、破損、変形、座屈、社会の被害、社会機能不全、インフラ機能不全、組織の損失、社会的損失、信用失墜
死者数 0
負傷者数 0
物的被害 なし
分野 建設
データ作成者 溝口 宏樹 (国土交通省国土技術政策総合研究所)