失敗事例

事例名称 首都高タンクローリー衝突炎上
代表図
事例発生日付 2008年08月03日
事例発生地 東京都板橋区熊野町
事例発生場所 首都高速5号線下り線と中央環状線が合流する熊野町ジャンクション付近
事例概要 ガソリンと軽油を積んだタンクローリー車が、右カーブにさしかかったところ運転を誤り横転した。この衝撃で積み荷のガソリンと軽油が発火し車両もろとも炎上した。その炎により高速道路の側壁や天井部がダメージを受け、使用不能になった。タンクローリー運転手は、腰の骨を折る重傷を負った。
横転時の激しい衝撃でタンクが破損しガソリンと軽油が漏洩し引火したため大事故になった。タンクローリーの横転は、車速が大であったか、運転手のハンドル操作の誤り(急ハンドル)によるものと考えられる。
事象 ガソリンと軽油を積んだタンクローリー車が、右カーブにさしかかったところ運転を誤り横転した。この衝撃で積み荷のガソリンと軽油が発火し車両もろとも炎上した。その炎により高速道路の側壁や天井部がダメージを受け、使用不能になった。
経過 事故を起こしたタンクローリー車は、ガソリンと軽油計約20キロリットルを積み、同日午前6時頃首都高速5号線下り車線を走行していたところ、事故現場付近のほぼ右に直角に曲がる急カーブでハンドル操作を誤り横転した。
この衝撃で積み荷のガソリンと軽油が発火し車両もろとも炎上した。炎はその後3時間半にわたり燃え続け、高速道路の側壁や天井部を焼き、使用不能になるほどのダメージを与えたほか、隣接するマンションの外壁も一部が剥がれ落ちた。
タンクローリー運転手は、腰の骨を折る重傷を負った。
原因 横転時の激しい衝撃でタンクが破損しガソリンと軽油が漏洩し引火したため大惨事になった。
タンクローリーの横転は、車速が大であったか、運転手のハンドル操作の誤り(急ハンドル)によるものと考えられる。
対処 東京消防庁は、化学消防車など計81台を出動し、約3時間半後に消し止めた。
首都高速5号線の北池袋-板橋ジャンクション間の上下線と中央環状線の一部区間が通行止めとなり、付近の道路も渋滞が増したことから、警視庁は40カ所の信号時間の調整を行った。
完全復旧までほぼ2ヶ月を要した。
対策 ・円滑な交通確保
信号機の調整(3色信号点灯時間)、国道・都道の路上工事規制、一般道路パトロールの強化
・交通情報の提供
迂回路案内看板・横断幕の設置、道路情報板・VICS・ラジオ等での情報発信、ホームページからの情報発信、交通関連協会への協力要請、マイカー利用の自粛要請
知識化 運転が難しく危険物を運ぶタンクローリー車の運転には、より一層の熟練と慎重さが必要である。ひるがえって、タンクローリー車には横転性やタンク内容物の漏洩防止を初めとした、より一層の安全性の向上が期待される。
注目すべきことは、同じところで何回も事故が起こっていることである。道路側にも事故多発地点や危険な場所であることを明快にドライバーに知らせる工夫が必要である。また、道路の階層構造の見直しや迂回路の整備など、被害の拡大防止を考慮した道路ネットワーク整備を図る必要がある。
背景 顧客への朝一番の配送の必要性から、深夜及び早朝勤務は当たり前であり、また運送会社の立場は弱荷主の出荷時間の遅れによる納品遅れは自社の責任で回避せざるを得ないため、運転手の負荷が高い。また、タンクローリー車は、積載物の重心が高くかつ流動するため、急ハンドル操作により横転の危険があり、運転に熟練と慎重さがより必要な車種である。事故現場は、高速道路にしては急カーブであったことも横転の一因と考えられる。
さらに事故現場は、首都高速道路の5号線と環状線との2階建て構造のため、いっぺんに両線が通行止めとなり、交通の大動脈が途切れ、渋滞を初めとした社会的被害拡大につながった。
よもやま話 首都高速道路会社は、復旧工事費約20億円に加え、通行止めや渋滞などから発生したと推測される25億4000万円の減収分の合計の約45億円を事故を起こした運送会社に請求するという。運送会社は、保険で支払えればよいが、ここまで多額の保険をかけているとは思われない。一つの事故で会社の命運もつきてしまうかもしれない。
シナリオ
主シナリオ 不注意、注意・用心不足、定常動作、危険動作、破損、大規模破損、社会の被害、社会機能不全
情報源 国土交通省関東地方整備局と首都高速道路(株)によるパンフレット「首都高速5号池袋線 タンクローリー事故とその影響」
死者数 0
負傷者数 1
物的被害 ・高速道路橋脚、鋼主桁、コンクリート床版及び路面などが、全長40mにわたり損傷し、取り替え工事が必要となった。
・隣接するマンションの外壁も一部が剥がれ落ちた。
被害金額 道路の復旧工事費は約20億円。
全経済損失 1日3億円以上で2ヶ月続いたとして、合計で180億円。
社会への影響 事故現場の通行止めに伴い、川越街道や周辺の幹線道路で深刻な渋滞が生じた。中央道から常磐道へ至る所用時間は、61分から131分へと70分も増した。さらに燃料代もかさむようになった。
また、事故や災害に強い道路ネットワークの整備・管理の必要性が再認識させられた。
備考 事例ID:CZ0200908
分野 その他
データ作成者 大久保 俊彦 (リバーベル株式会社)
畑村 洋太郎 (工学院大学)