注:本記述は2007年以前の分析で得られた情報を元にしており, それ以降に判明した事実や新たな知見は反映されておりません.
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事例ID
CZ0200907

事例名称
東京ビッグサイトエスカレータ逆走

事例発生日付
2008-08-03

事例発生地
東京都江東区有明

事例発生場所
東京国際展示場(東京ビッグサイト)

事例概要
東京ビッグサイトのエスカレーターにおいて、定員以上の乗客が乗り込んだため、ガクッという音とショックの後エスカレーターは停止し逆走した。客達は、エスカレーターの乗り口付近で仰向けに折り重なるようにして倒れ、10人がエスカレーターの段差に体をぶつけ足首を切ったり、軽い打撲のけがをした。
エスカレーターは、荷重オーバーで自動停止しさらにブレーキも効かず逆走・降下した。ただ、荷重オーバーによる停止を超えて、ブレーキ能力に限界があり逆走が発生したので、エスカレーターの機構にも問題がある可能性も考えられる。
また、エスカレーターの逆走により、極めて高い密度で皆後ろ向きで乗り口付近で折り重なるように倒れたことから、「群集雪崩」が発生したとも考えられる。

事象
東京ビッグサイトのエスカレーターにおいて、定員以上の乗客が乗り込んだため、ガクッという音とショックの後エスカレーターは停止しさらには逆走・降下した。客達は、エスカレーターの乗り口付近で仰向けに折り重なるようにして倒れ、10人がエスカレーターの段差に体をぶつけ足首を切ったり、軽い打撲のけがをした。

経過
東京ビッグサイト4階で開催されるアニメのフィギュアの展示・即売会場に直結するエスカレーターにおいて、開場にあたり警備員1人が先頭に立ち誘導し多くの客がエスカレーターに乗り始めた。客達は先を争うようにエスカレーターに乗り込んだが、先頭は警備員が規制していたため、エスカレーターの1段に3~4人が乗るほどのすし詰め状態となった。
先頭が全長35mの7~8割ほどまで上がったところで、ガクッという音とショックを受けエスカレーターは停止し、その後下りエスカレーターよりも速い速度で逆走・降下しはじめた。客達は、エスカレーターの乗り口付近で仰向けに折り重なるようにして倒れた。10人が、エスカレーターの段差に体をぶつけ足首を切ったり、軽い打撲のけがをした。
周囲の人々が、倒れた人を引き起こしたり、移動させるなどの救助に協力した。関係者が異常に気付き緊急停止ボタンを押したり、逆走により乗員が減ったことからブレーキが効き始め、逆走は停止した。

原因
このエスカレーターは、荷重制限が約7.5t、逆送防止用ブレーキ能力の限界が約9.3tであったのに対し、事故当時は約120人が乗車したことから、逆送防止用ブレーキ能力の限界荷重をもオーバーし自動停止しさらにブレーキも効かず逆走・降下した。ただ、荷重制限とブレーキ能力の限界までには、(9.3-7.5=)1.8tの余裕があるはずなのに、停止してすぐ逆走したことから、エスカレーターの機構にも問題がある可能性もある。
また、1段あたり3~4人乗車しており、「人口密度」は8.6人/平方メートルにも達している。さらに皆後ろ向きで乗り口付近で折り重なるように倒れ人口密度は増大し、「群集雪崩」が発生したことがけが人発生の原因である。周囲の人々の救助が功を奏したのと被害者は若者が殆どだったので、軽傷程度のけがですんだ。

対処
事故を起こしたエスカレーターは閉鎖された。
警視庁は、モーターなどを押収し、電気系統のトラブルについても調べるとともに、事故当時エスカレーターに何人乗せていたのか関係者から聴取した。

対策
国土交通省は、都道府県と業界団体「日本エレベータ協会」に対し、集客施設に設置されたエスカレーターに対し、
(1)運営実態を把握し、設計以上の積載荷重にならない
(2)特にイベントなどで第三者に利用させる場合、適正な管理を確保させる
などを求める通知を出した。

知識化
エスカレーターに定員があることすら知らない人が多いため、定員表示や過搭乗防止PRを徹底する必要がある。
一方エスカレーターとしても、逆走防止のブレーキ能力を上げ、荷重オーバー時の停止から逆走に至る間の余裕を拡大させるなどのより安全サイドに立った構造にすることも必要である。

背景
エスカレーターのかけ上がりによる事故防止ばかりに目を取られ、警備員が乗員の先頭に立ち、エスカレーターへの乗り込みは規制しなかったため、エスカレーターの定員オーバーを誘発したこと。
警備員にも、エスカレーターの定員に関する知識が欠如していたと考えられる。

情報源
http://www.youtube.com/watch?v=SWVDRvdOkaw

死者数
0

負傷者数
10

分野
その他

データ作成者1
大久保 俊彦 (リバーベル株式会社)

データ作成者2
畑村 洋太郎 (工学院大学)